第14話 各々の道




 のんびりと牢獄生活を過ごしていたノン達。 いきなり激しい爆発音に地面が揺れる。


「な、何だ!? アルカ―ナ軍か?」


 あまりの音にニルスが立ち上がった。


 地面が激しく揺れる。


「近いな……」


 グロスは床で仰向けに寝たまま平然としていた。



「艦長! どうするんですか?」


 皆は慌てふためいていた。 艦長もまた、グロスと同じで平然としていた。 まるでこうなる事がわかっていたかのように



「皆落ち着け。 とにかく、怪我の無いように耐えるんだ」


「耐えるったって、アナタね」


 ニルスは足もおぼつかないような状況に困惑を隠せない。 当然、地面が揺れてしまえば、人は身動きなど取れない。



 突然、天井が崩れ出した。 


「うわぁぁぁぁぁぁあっぁぁ」



「死んじゃいますぅー」



 そこからはぽっかりと穴が開き、外が見えた。



「見つけた!」




「ど、どういう事だ……」


 ニルスたちが呆気を取られて見上げる上空にはサーゲンレーゼの姿があった。



「艦長! ご無事ですか?!」



「すまない。 助かった」


「今引き上げます。 こちらへ」



 サーゲンレーゼからロープのようなものが垂らされる



「な、何だ……!?」



 ライルの上からはロボットが顔を出した。


「プリーマ? 誰が乗っているんだ!? スカットマンか?」



「えぇ。隊長。私です。 今向かいますよ」



「助かったのか…… 俺たちは」


 ニルス達はいまだにこの急展開に、ついて行けていなかった。



 ブリッジに上がった、ノンはすぐさまサーゲンレーゼ内から交信を求めた。



 急な交信に応じたマイロは、どういう事だと、問い掛けてきた。



「それは、こちらのセリフです。 そちらはアルカ―ナと結託されていたのではないですか? 現に我々の艦を落とそうとした。 そうですね?」



 大臣は事態が呑み込めていないとして、もう一度、直接の話し合いの場を提示したが、ノン達は、前回の仕打ちからそれを拒否した。



 疎通を期す中、大臣は滞在している、シーキュウナの兵たちを天秤に、ノンとグロスが官僚党へと赴く事となった。 


 勿論、ノン達シーキュウナ隊も何かあった際、いつでも攻撃できるように臨戦態勢を取っていた。




「どういう事ですか? 大臣! そちら側の要求はお伺いしましたが、それに対してこちらまだ何の返答も返していないと言うのに、この仕打ち」



「我々が攻撃をした訳ではない。 なにかの間違いではないのか?」


 マイロはただ否定するのみだった。


「では何故? お伺いしていた停泊場所を突然変更されたのですか? 」



「変更された?どういう事です? 我々は艦の停泊場所を変更などしていませんよ? 

 誰か変更した者がいるか?」



 マイロは集まる大臣達に伺ったが誰一人として名乗り出る者はいなかった。


 そのうちの一人の迷彩服を着た男が、敬礼をして発言を申した。



「発言を失礼いたします。 我々中等兵隊は急な変更により、宇宙より来られたシーキュウナ艦隊の皆様を、彼らの指摘された通りの場所までお迎えに上がっております。


 現時点で彼らの発言に間違いは無いと思われます」



 静まり返っていた会議室は、まるで、人混みのようにざわつく。 


「どういう事だ。?! 確か、彼らの到着を指示していたのはコノヤマ大臣だったな」


 この会議により、コノヤマと言う男がアルカ―ナ軍のギエンと交渉をしており、シーキュウナ隊の壊滅を結託していた事を自供したのだった。 


「コノヤマ大臣は多国語に長けた、交渉をも担っていたお人だ。同かこの場は私に免じて許していただけないだろうか」


 マイロは誤解があった事、また、地球の犯した非礼をお詫びした。 


「ただし、そうであったとしても、このままあなた方を宇宙へ上げる事は出来ない。 それは承諾してもらえますね?」


 マイロとしては地球を守る為、両方がいなくなってもらわなければならない。これをモニターで確認していた、宇宙政府は、技術の共有を条件にシーキュウナ隊に残党の迎撃命令を下した。




――サーゲンレーゼ艦内


「どういう事なんですか! 艦長! こんなことしていたら、サギン大将はこの間にも。

上は何を考えているんですか!? 全く現場が見えていないのか? 本当にこの戦いに勝つ気があるんですか?!」



「落ち着け。 ニルス。 きっと何か考えがあるのだろう。 私としてもこの命令には不服だ。だが、我々は軍人だ。 軍人である以上、長官の命令には逆らえん」



 ニルスは黙って拳を握る。 


「世知辛い世の中よな、ほんとによ」


 そんな会話にグロスはただ呟くのだった。


 ノンはライルに近寄ると、手を差し伸べた。


「今までありがとう。 君のおかげで我々は幾度と助けられた」


「そんな、俺は何もしていませんよ」


 ライルにとってはいい迷惑でしかなかった。 そう思っていたから、どんな態度で接したらいいか困っていた。 


「なんだか寂しくなるな……。 仲良くなれそうだったのにね」


 サフィがそう話しかけると。 艦内からも別れを惜しむ隊員たちがいた。


「我々はこれから、ギエン隊を追って殲滅したら、宇宙≪そら≫へ上がるよ。 その、どうだろう。 君がもしよければ、我々と一緒に戦ってくれないか?」


 ライルだけではない、他のクルーにもこの声は響いていた。


「艦長!!何を考えられているんです?! 彼はまだ子供ですよ」


 最初に声を上げたのはニルスだった。


「艦長。 私も、彼を我々の戦争に巻き込むのはどうかと思います」


 シノも遠回しに撤回の意を表した。


「そうか。 私は彼に可能性を感じたんだが。 どうも聞けば、ここではあまり良い暮らしはさせてもらえていないようじゃないか。 そうなのだろう?」


 ライルはただ黙っていた。 ノンの言う通り、穏やかな日々を送れていると言う訳では無いから。


「我々と来れば、もっと穏やな生活を提供できる。 この惑星にいる事が君の幸せという事でなければの事だが」


 ライルはノンの瞳をじっと見た。 


「俺はいきません。 別に、豊かな暮らしとか俺は要りませんから。 それに、戦争なんて、……」


「分かった、 君がそう言うなら仕方がない。 すまない。 我々も、人手は欲しいものでな」


「艦長!!」


 シノが忠告をする。


「悪かった。 単純に私が君と一緒に行きたかっただけだ。 それじゃあ、君の場所まで送らせてもらおう。 住処はどこなんだ?」


ライルは外を見た。


「いいえ、その必要はありません。 ここで下ろしてください。 迎えが来てますので」



 ライルとノンは深い握手を交すと別れた。 各々が行く道。それがハッキリと別れた今。 彼らは、彼らの道を歩んでいく。



 ライルがサーゲンレーゼから降りてくると、走って抱き着くクレイドがいた。 


「良かった。 ライル。 私、てっきり、ライルが」


「バカ、そんなことないさ。 それよりクレイドこそ。 心配したんだぞ」


「ごめんね。 あの後、顔しわくちゃのおっさんに掴まっちゃって」


「あぁ、その男なら、艦長が、叩きのめしてくれてたよ」


「??」



 クレイドが首をかしげる中、ジープに乗って迎えに来る、ロデルとイワンと共に、ライルはファクトリーへと帰って行くのだった。



「イワン。 次のジンクスバトルはいつだ?」


「お? 確か、近々にでっかいのがあったよな?」


「良し。それに向けて、改良だ」


「ホント好きだね。ファイト」







「シーキュウナ隊! 残存するギエン隊の殲滅のち、いち早く宇宙へ上がる。 こんなしょうもない事はさっさと終わらせる。 急速前進。 目標、残存勢力!!」



 サーゲンレーゼ隊は地球の彼方へと消えていった。





 惑星エレク。 この惑星には沢山の人が暮らしていた。 様々な人種、国の密集帯だ。ここに宇宙国際連合の本拠点がある。 この星はもともと人は住んではいなかった。 また、ライル達のいる地球よりも幾分か小さい。 それにしても、地球よりも緑に満ち、綺麗な水が滴り、とても空気の良い環境の整った惑星が実現している。しかし地球程万能ではない。 それ故、人々は多大な知識を重ね、今の住みやすいエレクができた。


 惑星エレクの周りには。この惑星にある各国が保有するアークシップが展開している。 


 現在あるのが16のアークシップであり、人々はここで暮らす事ができるようになっている。元々人はここから始まった。とされている。


 アークシップの内部こそ地球と変わらない。 沢山の市町村や区が存在している。 しかし今やそこは、線分けがされており、今でこそ、昔のように、色んな国民が住むアークシップも残っているが、ほとんどは、同国人種の住む、「国分け」が行われている。



 エレクが出来てからは、人々は惑星の暮らしを求める者も多かった。 これと対をなして、今各国間で問題になっているのが、人口惑星ルナドナである。 この所有権をかけてもまた争いは絶えないのである。



 そんな惑星エレク内で慌て逃げ行く男がいた。彼はL.S.S.E.Dの男達に追われていた。 

必死に逃げようにも、乗っていた車は重火器で粉々になれ、命かながな、全速力で走った。


 相手は車だ。逃げ切れるはずもなく、彼は引き殺されそうになった時だった。



 二機のADが彼を救うように現れると、L.S.S.E.Dの車を全て吹き飛ばした。


 男はそのおかげで姿を暗ます事に成功し、アジトで通信をつなぐのだった。


「元帥、失礼します。 例の件完了しました。 後は空港で我々の発送部隊に渡せば完了です」


「よくやった。 でかした。 これでこの哀れな戦いも終わらせようぞ。 ニストルのようなぬるいやり方では終わらんからな」


「して、元帥がADの支援を送ってくださったのですか?」


「支援? わしは何もしておらん。 何か不快な事があったのか?」


「いえ、ただの偶然でしょうか? チャインシ―の軍がい合わせたので」


「同族争いでも始めておるのか?」


「その可能性もあるのでしょうが。 彼らも意味なく行動するとは思えませんが」


「匂うな。 とにかく気を付けて、それを頼む。 それが何よりものカギだ」


「分かっていますよ。 元帥」


 深夜。彼は、身形を整え、都市のあるバーに足を寄せていた。


 「ハーイ。 コンニチワ!」


 横にはチャイナドレスを着た女客が座った。


 彼女は慶弔に話しかけてくる。しかし彼も、一流のスパイ。 大体の事は見抜く。そう簡単に口は分らない。ましてや人種の違う種族には特に警戒心は強い。


 彼女はおごりでお酒をさし出してくると、口がゆるむ。 


「あんたみたいな美しい女性がどうしてこんなところに?」


「私はただ、飲みたくなったから来ただけ。 お兄さんこそ、ただ者じゃないでしょ? 私はマリ・マナ あなた、お名前は?」



 とろんとした話し方が、ザレンと言う男の快楽を刺激した。 彼女はそっと、彼の手に触れると、テーブルに自らの身分証を示すデータを開示してきた。 この店は、とても人気があるのか、客足が多い。 彼の横の席もたった今埋まり。満杯と言ってもいい。 15人は入れるだろうか。 彼がその身分証を見て驚いた。  どうやら本音で話したいという事をザギンは理解した。



「俺の名はザレン・ギンだ。 お前みたいなのが、俺に何の用だ?」


「別に、私、用って訳じゃないけど、おにぃさん一目見て寄っちゃったから、」


「そんな事聞いてるんじゃない。 軍人が何でこんなところに居るんだ」


「あら、素性を外にバラすなんて酷い人。だから私、アナタだけにこっそり見せたのに、スパイさん」


「ここはチャインシ―の領域でもない。下手な事をしたら、捕まっちまうぞ!」


 男の顔が苛立ちを覚えていた。男は声を小さく落とした。


「あの時のAD。俺を助けたのもお前らか?」


「あら? バレちゃった? やっぱりすごいのね。アナタ」


「色仕掛けは要らねぇ。でも何でだ? お前らチャインシ―に何の得がある」


「ちょっと何言っているかわかりませんけど、 アナタ、何を持っていたの?いや、盗んだのかしら?」


 男は息を飲んだ。


「フン、そんな事も知らないで、俺に接触してきたって言うのか? 変わり者だなアンタ」


 男はマスターを呼ぶと、金を払って店を後にしようとした。 マリ・マナは男の腕をつかんで止める。


「待ってよ。まだ、話したいな。 アナタと」


「生憎と、俺は同種の女にしか興味がなくてね」


「……H.EP」


 彼女の言葉がぼそっと出た時、彼は微動だにもしなかった。


「過去の遺物だろ。 そんなもんは手に入らねぇ。 あれは違法だ。手を出せば、終わるぞ。 と言ってももう政府が全て廃棄しちまったんだ。 手に入れるすべなんざねぇがな。 みんな忘れちまってると思っていたが」


「ねぇ、もしそれが手に入るって知ったら、アナタどうする?」


「さぁな、そんなもん、怖くて、持ってたくもねぇ。 政府に渡すよ」


 ザレンは一度女の元へ戻ると小さく警告した。


「そんな話をあんたがしない方がいいぜ」


 ザレンは女が何か訳アリなんだろうと察した。が彼にも彼の仕事柄がある。


 ザレンが丁度店を出ようとした時、L.S.S.E.Dの兵隊が来て彼は掴まった。


「な? どういう事だ? なぜ見つかった!? 放せ!? 止めろぉ――」




「ミッションコンプリート、ネ!」


「何がコンプリートだ。まだだよ。気はってろ」


「えー釣れない事言うネ」


「まだ、手に入れないといけないモノがあるだろ」


「そうネ」


 マリ・マナと言う女はザレンのもう脇に座った男と酒を交わしていた。


 男は耳を抑えて話す。


「ユン! そこで間違いない。行け」


「了解!」


 マリ・マナは楽しそうに男を観察する。


「ふふーん。 あるといいネ!」


「何が言いたい……」


 男は怒り気味に食い掛ると、マナの手に、きらり光る鍵を見る。


「はぁ、すまない、ユン。 撤収しろ。 そこにはない。 俺たちが向かう」


「……了解」



 マリ・マナは悠々とお酒を飲み干すと、『さ、行こうネ!』と言って男と店を出ていった。








 地球ではノン達がギエン隊を追っていた。ギエン達は長距離を飛べなくなってしまったサイジロスを隠しながら、地球の民家に止めてくれる一つの家を見つけてそこに匿ってもらっていた。その為、ノン達は、ギエン隊を見つけられずにいたが、ライル達はその家に訪れると、食料を配って去って行った。 ギエン隊は息をひそめて隠れていたがバレずに済んでホットしていた。



 それからギエンはスラッグ隊と交信、待ち合わせ場所を決めると、これ以上迷惑を掛けられないとそこを去った。 


 ギエンが、言葉を交わせた民家はそこが初めてだった。 ギエンの使う言葉は少し特殊な言葉な為、通訳者がつくことが多い。 その中でもニストルと言う男は彼の言葉でも話せる為、お互いの信頼は厚かった。 そして勤勉化のマレーもまたその一人だ。完璧に話せるわけではないが、会話はできる。





 ギエン達は何とか鞭打って、サイジロスを待ち合わせ場へと走らせる途中で地球側の兵隊に見つかり、進路を変え到着に時間が掛かった。


「少尉…… 彼らは来てくれるのでしょうか」


「あぁ、来るさ、必ず」


「だけどよぉ、少尉、もう結構たっちまってるけど、一向に姿を見せないくないか?」


 ニギューの言う通りで向かっている気配も、音すらも感じられない。 



「どうするよ、このままじゃ、もう見つかっちまうよ」



 大きな船体は森で隠してはいるが、地球の歩兵隊も探索している。 時間を要した。



「見つけたぞ!! 宇宙人の船だ」


 地球の歩兵隊に見つかってしまった。  彼らは仕方なく白兵戦に持ち込まれたのだった。 


 負傷したサイジロスを起動させてしまえれば、こんな場面は簡単に一掃でき、逃げる事が出着る。 だが、今、起動させてしまえば、サーゲンレーゼのレーダーの餌食になるのは間違いない。


 そして何よりも、ここが待ち合わせ中継地点。 ここを離れる訳にはいかなかった。 



「隊長! 敵の攻撃が激しい」


「少尉、こちらに乗り上げてくる兵もいます」



 ギエン達は、その地球軍の数に圧倒的に押されていた。 もうおしまいか……。

 そう思った矢先、 辺りに沢山の爆発音と共に、一掃される。 


 サーゲンレーゼの艦隊が来たか。 見上げたギエンの目に留まったのはオレンジの色を光らせた友軍艦の姿だった。 




「待たせたな、ギエン少尉」



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