第9話 破られた交渉



 ライルはしばらく空を見上げ、遠くを見つめていた。 どれぐらいここに座っていただろうか。ただ静かに横に座るクレイド。 二人が話すことはなくただ時間だけが流れて行った。

 


「なぁ、クレイド……」


「ん? どうしたの?」


「俺は誰も殺したくないし、誰も失いたくない。 だからこうして、大切な人達の為に食糧を配ってる。 だけどそれは、他の奴らもそうだ。 結局自分のテリトリの奴らしか守れないから、争いになる。 この考えは間違いなのかな?」


「哲学的な質問だね。 わたし、難しい事は分からないけど、誰かを守りたいって気持ちは間違いじゃないと思うな」


「俺は大事な仲間を失った。同じ想いをした、数少ない良い奴。 あいつも、また誰かを守る為に、だけど……俺は、俺のせいで、アイツを」


 ライルはケイの最後を思い出す。 自分の不甲斐なさがケイを殺してしまったと思うと、涙が出て仕方がない。 この場で泣くつもりなどなかった。 だけど、話せば必然的に感情が混み上がってしまう。 だから、誰とも口を開けなかった。


 「ライル聞いて。 私達はあなたのおかげで、こうして、生きていけてるんだよ。

ライルも同じでしょ? だから、ライルは何も悪い事はしてないよ。 少なくとも私達には、そんな風には映ってない」


 クレイドは自分の胸にライルを抱き寄せた。


「きっとその人も、そうする事を選んだんじゃないのかな? だからその結果があってライルは残った。 なら私達がやらないといけない事は、こうして、嘆き悲しむこと? その人の分まで願いを叶える事じゃないのかな? 私だったらそうして欲しいな。 そりゃ、ライルに会えなくなるのは嫌だよ、だけど、折角守ったのに、苦しんでるライルの姿を見る事になるのは嫌だな」


 ライルはただ、クレイドの胸で泣き続けた。 


「うん。いっぱい泣きなさい」


 ただクレイドは何を言うでもなく、黙って胸を貸して優しくライルを受け入れた。



「ありがとうクレイド。 もう大丈夫だ。迷惑かけまくった」


 クレイドはただ笑っていた。


「良し、そろそろ配給再開だ、もう少し残ってるからな」


「そう、元気になってよかった」


 二人はまた、次の街を目指した。



 ロデルとイワンはけっして口を割こうとはしなかった。 だから、彼らはロープで縛られ自由を奪われていた。 顔にはいくつもの殴られた痣があり、血を流す。


「てめぇら、まだ言わないつもりか!一大事なんだ 早く居場所を履け! どこにかくまった。 ……そうか、言わないならこいつの足を切り落とす」


 イワンはテーブルの上に載せられ、その太ももの上に、肉切り包丁が添えられた。



 最後の街でライル刃は残りの食料を配り終えた。


「あれにぃちゃん、顔赤いよ。 さては大泣きしたな」


「うるさいガキぃ」


 ライルをいつもからかう少年が、またかまをかける。


「こら、この子は。お兄さんはいつも寝ないで、私達の為に頑張ってくれてんだよ。 ありゃ酷い寝不足だよ」


 母親は子供もしかりつけて、ライルに謝らせていた。


 ライルがファクトリーに近づいた時。


「ライル! なんかおかしい。 なに? あの車の数。 装甲車も来てるわ」


「なんだよ、どうなってるんだ?」



 ライルは急いでファクトリへと戻った。 


「リーター! ライル=ハレミ―とその横にいた女を捉えました」


「見つかったか! 早く連れてこい」


「いってぇえ! 急に何しやがるんだ。 離せ」


「大人しくしてろ!」 そう言われて、ボコボコになったロデルと体中が切り刻まれたイワンの前に突き出された。


「ロデル、それに……イワン。 なんだよこれ、お前らイワンたちに何をした」


「こいつらが口を割らないからだ。 こちとら緊急を要している。 このまま同行してもらうぞ! ライル=ハレミー」


 まるで犯罪者のような扱いを受け、腕には手錠をして、ライルとクレイドが連中に連れていかれた。



 連れていかれたのは経済都市の内部。 ライル達は車の中でその違いの差に驚かされた。 皆が住居を一人ずつ持ち、機械製品が充実している。 外ではジンクスより綺麗に塗装されたミニチュアなロボットが歩いて居たり、枠がないモニターが、空間上にいくつもの映像を映しだしていた。 


「大臣、連れてきました」


 ライルはとても貫禄のある人が机を囲んでいる中心に突き出された。手錠はいまだしたままである。


「お前! 一体何をした! あれはどう言う事だ、説明しろ」


 顔のしわくちゃな男が怒りをあらわにする。 


「お前はなんだ、どこかのスパイか? それとも、テロリストなのか? 」


「何を企ててる! 早く吐け!」


 凄まじい圧が左右から幾度もライルを攻撃する。 ライルは何故この場に立たせれているのか、どうして怒鳴られているのか見当もつかない。


「皆さん。 少し静かに。 彼の話を聞こう。 それで無ければ話が進まん」


 堂々とした姿でライルの真正面に座る男が、その場を取り仕切った


「さて、我々も時間がないのだ。 単刀直入に聴くよ。 君は、宇宙人か?」


 このおじさんは何を言っているのか? どこからどう見ても地球生まれの地球人である。どこをどう見てそのような質問に至ったのか、ライルは何の疑いを掛けられているのか? とにかく、事を荒立てないように、質問にだけ答えてた。


「いいえ、俺は地球で生まれました。 宇宙人ではありませんしその宇宙とやらを俺は知りません」


「大臣! こんなやつの言葉を信じるのですか!」


「少し黙って居なさい」


 周りから少数の野次が飛ぶ中、大臣は静かに質問を続けた。


「君は昨日の事件を知っているか? あれは何だね」


 大体の話しは見えてきた。 あぁ、なるほどそう言う事かと、ライルは真実を語る。


「知りません。俺はジンクスファイトに出ていて、そのまま収集がかかり、地球を守るために戦ってほしいと言われたので、交戦しましたが、相手が何なのかは知りません」


「君が乗っていた機体はなんだ? あれは地球のモノではない。 ましてや君のモノでもないだろう。 どうやって手に入れた? 」


「空から落ちてきたんだ。 俺も知らない。 だけど、それに乗ればジンクスファイトに戻れると思ったんだ。 だから乗った。 それだけだ」


 辺りがざわつき出す。


 ある一人の中年男性が質問をした。


「君は古代文と言う古代文字を知っているかね」


「知りません」


 ライルは言った。 そんなものは聞いたことも、見たことも生まれて一度もない。 


「彼らはあの機体を返せとこちらにメッセージを送ってきた。 機体と言うのは君の乗っていたものの事だろう。 我々はあれを返そうと思っている。 君のモノでも、何か必要な事でもないと言うのならこの被害を回避するために、返しても問題は無いな?」


「好きにしたらいい。 俺には関係のない機体だ。 だけど、あれは戦争を止めると言っていた。

宇宙で何が起こっているのかは知らないけど。 渡してしまっていいんですか?」


 ライルには何故かあの機体にとても意味があって作られているような気がした。 


「それと同時にそのパイロットの身柄も渡せとの事だ。 本当に関りがないと言えるのか」


 ライルは目を見開いた。 機体はともかくなんの関係もないライル自身がそこに行く意味は無いはず。 なぜ自分の身柄まで要求されるのか……考えられるのは、たった一つ。 あの時の事件。 ライルが、彼らの仲間を一人殺してしまった事への復讐。

 それであるならば身柄の要求も理解ができる。


「これでも奴らと関係がないと言い切れるのか!」


「お前の身柄を要求するという事は、やはり何かつながりがあるのだろう。 言え! あいつらはなんだ」


 また周りの男たちは騒ぎだした。 ライルはただ否定もせず黙り続けた。


「この件についてはあまり口外するつもりはない。 君、例の映像を」


 大臣と呼ばれる男が、そう言うと中央モニターに大きな映像が映った。 そこには男が一人映って、何やら訳の分からない言葉を話しかけていた。


「船にはこのようなエンブレムがついていた。 そしてこの映像の男がしている者と一緒だ。 見たところこれはどこかの軍隊だと我々は見ている。 しかしこれはこの地球上にあるどこの国の者でもない。 だが、映っているのはどう見ても、人間だ。 我々と全く同じ。 これが宇宙人だとでもいうのか? 」


 画面に映った男はだ肌の色も、眼の位置も、手の数も、指の数も、骨格も、何もかも地球人と同じ姿をしている。 ただ違うの兵器の発達の違いのみ。


「君はこの男に見覚えは?」


 ライルは目の前が真っ暗になった。 どう見てもあれは人間。自分たちと同じ人。耳が尖がてる訳でも、鋭い牙があるわけでもない。 そしてあの時殺ってしまったのが人間だとわかった時、ライルは何も考えられなくなっていた。



「そうか。 もういい。大体の事は分かった。 拘束しろ」


 ライルは、無理矢理引っ張られていく。


「大臣どうするのです?」


「話を聞いて見て、彼の反応を見て大体わかった、あの映像を見た彼の反応はあからさま、何かつながりがあったのだろう。 これから彼らの要件を飲み、あの機体を引き渡す」


 大人たちは一斉に立ち上がり、急ぎ去って行った。


 ライルは牢屋に連れてこられ、監禁された。 隣には先にいれられていたクレイドが座っていた。それはとても冷たい場所だった。


「ライル!」


「クレイド!大丈夫か?」


「あたしは何も。 それよりこれは何なの?」


「分からない」


 ライルは自分にあった事をクレイドに話した。


「それじゃあライルが連れて行かれちゃうって事なの?」


「そうらしいな。 だがそうすれば、地球は助かるらしい。 被害も出ないと」


「そんなの駄目よ! ライル!」


「クレイド。 お前は俺に言ってくれたじゃないか。 誰かを守る事は悪い事じゃ無いと。 今度は俺に回ってきただけだ。 だから守らせてくれ。 お前たちを。 俺はこうする事に公開は無いんだ。 お前たちを守れるなら」


 クレイドは言葉を失った。 そんなつもりで言ったんじゃない。そうじゃないのに。と。


「ライル=ハレミ―! 来い!」


 ライルはまた無理矢理引っ張らて連れていかれた。


「ちょっと、止めて。ライルに乱暴しないで! あなた達こんなことして」


「クレイド! いいんだ、これで」


 ライルは引っ張て来る男どもに、クレイドには危害を加えるなと言って部屋を出て行った。


「ライル……違うの。 私……そんな意味で言ったわけじゃないのに……」


 彼女は牢獄で泣き崩れた。



「ギエン隊長! 地球側から連絡が来ました」



「そうか。早い対応だな」


「内容文は交渉に応じるだそうです」


「ほう。 賢明な判断だ。 ただの好戦的な民族でもないという事か。それとも力の差を思い知らされたのか?」


 ニギューが語る。


「流石隊長だぜ。あいつらの言語を聞いたことがあるなんて、最初はびっくりしたが、俺たちの星でも使ってるやつらがいるなんてな。 どういう事なんだ?」


「知るか、そんな事。 どうでも良いと言えばどうでもいいが、そうなると、連合軍や、我々との繋がりがあった事を否定できなくなる」


「こちらの訴えを飲んだのも、隊長の出した、地上攻撃が功をなしたのでしょう」


 ギエンはただ考えに浸っていた。


「何か臭いな。 ジトー! クワイガン軍督に回線をつなげ。 報告をする」



 その後、地球とのやり取りで待ち合わせ座標と時刻が決められ、その時がやって来た。



 場所には、政府用ネクストが10機。 ネクストのNo.1とNo.3がそろった。対するギエン隊は一隻の戦艦と二体のアームズドールが姿を現す。



「新型のアームズドールを確認」


「ちゃんといるな! 受け渡し時間まではもう少しあるか」



地球軍側――――


「来たぞ!」


 周りの兵士たちが、その威圧感に圧倒される。



 その中でプライべート通信で話すネクストが2機いた。とても落ち着いた声の話し合いだった。


「あれが宇宙から来たって言う艦隊か」


「俺たちの敵かは分からないがな」


「何言ってんだNo.2もやられたんだろあれに」


 ネクストのNo.1,No.3が今か今かと待ち望んでいた。


 ライルはただ黙って中央に置かれたニフティーに乗ってその時を待っていた。



 その時だった。突如ととして、オレンジ色の艦がもう一隻降りてきたのである。


「がははははははははっ ギエン隊の反応を追って来てみれば、何だ緊迫した状況じゃないか!

 数的には……負けてるなギエンの奴」


「少尉! 中央に新型と思われる機体があります」


「ほう。あれが今回の迎撃目標の。 この状況はなんだ? 両者睨み合いか」



「ギエン隊長。あれは、スクレイ隊です」


「何故あいつらがここに来ている!? どういう事だ」


 ギエンは酷く驚いた。 彼らがここに来るのは何かの間違えではないのか、それに今この状況下で来られるのはまずかった。 ギエンはすぐさまスクレイ艦に回線をつなぐように命じた。


「何だギエンじゃないか。 久しぶりだな。 何をてこず手っているのかと見に来てやってみれば、ヤバそうな状況だな」


「スクレイ、今すぐ艦を引き返せ。 この策戦にお前の参加は無いだろう」


「硬い事を言うなよ。 てめぇだけひとり手柄をとろってかぁ。 そりゃ仲間としてよ、もっと分かち合うべきだろ」


「あのくそ野郎」


 ジトーは怒りのこもった声で聞こえないようボソッと吐いた。


「これは我々に命じられた迎撃作戦だ。 手は出さないでいただきたい」


「おいおい、酷い良いようじゃないか。 まるで俺が邪魔しに来たみたいによ。 俺たちはただ苦戦してるお前に加勢しに来てやっただけだぜ。 感謝しろよ」



「スクレイ!止めろ、何をしている」


 ギエンは何とかスクレイがしようとしていることを止めようと話しかけた。


「ざっと12~3機と言ったところか、ここの惑星の戦闘機と言うのは。 ふんじゃ、お手並み拝見と行こうじゃねぇか。 こんなところで時間を食うのは勿体ねぇ。 獲物は中心にあるんだろ」


「止めろ、スクレイ!我々の邪魔をするな! 聞いているのかスクレイ」


「回線を切れ。うるさい。 エター隊出撃しておけ、大型フォトン砲、全弾集中砲火、目標新型! 撃てぇ」



 それは一瞬にして、約束事が違えた瞬間だった。


 ニフティーに向けてレーザー砲が発射された。



「大臣! 敵が敵が発砲してきました。 話が違います! 交渉決裂でしょうか! 

 艦隊が、もう一隻闇夜より現れました」


「な、何だと!?」


 物静かな声でネクストのパイロット両名が会話する。 それは両者とても落ちついた声で。


「No.3、見たか。 あれが敵のやり方だそうだ。 余程武力を見せつけたいらしい。」


「そうだな。 俺はあぁ言うのは許せない。 いつでも相手になってやるよ」


「死ぬなよNo.3」


 砂煙が立ち込める中、エター2機が政府軍の戦車両を破壊していく。 ネクストはどんどんと、大爆発を起こして大破していった。



「がははははははははっ! こんなものか! こんな簡単な事にギエン隊は何をてこずっていたんだ。 俺もひとっ走り暴れて来るか! ソルスティツィオを出せ」




「やってくれたな、スクレイ」


「ギエン隊長どうしますか?」


「これで地球のお偉いさんもかんかんだろう。 我々への認識は最悪なものとなった。 ニギューいつでも交戦になる準備はしておけ」



地球政府指令室。


「バカな、あいつらは受け取るだけで何もしないと言っていたではないか」


「やはり我々を騙す作戦だったのでは」


「こ、これは宇宙からの侵略だ」


 そこへ、現地からの無線が入る。 


「こちら、防衛軍大将。我々のネクスト部隊全滅。 前線は壊滅状態です。 このままでは全滅します」


 大臣たちは大慌てで、急ぎ防衛するように促す。 


「No.1、No.3任務だ。 奴らを叩け、 容赦は要らない。 奴らに鉄槌をお見舞いしてやれ」


 女性のオペレーターが傭兵ネクストに命令を下す。 2機はすぐさま参戦した。



「これじゃあもう、戦場だ」


 ジトーは母艦から下の状況を見ていた。


「スクレイ隊が来るところはどこも戦場になる」


 そう言って、ギエンは黙ってその戦場を眺めていた。





 敵のエターは高速移動でどんどんと地球軍の車両を破壊していった。 まるで強者が、弱者をいたぶるように。 しかしその動きを止められる。 No.1のネクストがエターを実弾ライフルで叩き落した。


「な、何だこいつ。 この雑魚が!」


 落とされた、エターは怒り狂ったようにNo.1ネクストに襲い掛かる。


「これじゃあ効かないのか、反則だな。 なら、」


 ネクストはさらに加速力を上げたが、少しずつ、エターに距離を詰められていく。


「スピードも向こうの方が上か」


 No.1ネクストは急に停止する。 猛スピードで飛んでいたエターはネクストと入れ替わるようにして、後ろを取られる。


「落ちろ」


 No.1ネクストのサブ武装であるロケットランチャーとミサイルが一斉に火を噴いた。


「うわぁぁぁ」


「一機落としたか」


 No.3はエターとの戦いに少してこずりを見せていたがNo.3が押していた。 No.1は構わず母艦を目指す。


「少尉、少尉! こいつら、他のと違う、や、やられる」


「ガタガタほざくな。 今行ってやるよ」


 No.1の横を紫色のでかい斧を持った機体が通り抜けていった。その後ろを追うエター2機がNo.1に立ちはだかる。 



 ギエン隊にも空軍により飛行機がミサイル攻撃を行っていた。 


「ニギュー来るぞ。撃ち落せ」





「来てやったぞ、グラッチェ。 さっさと引け」


「しょ、少尉」

 

「敵に背を向けたら終わりだ」


 静かな声で語るNo.3ネクストは、その隙を逃さなかった。 肩につけた、レーザーガンがボロボロになったエターを貫き、動力部に引火してエターが爆発した。


「あぁ、あのバカが、戦場で背を向けて逃げてくるやつがあるかよ。 だから死ぬんだよ。 まぁそんな雑魚は俺の部隊には要らないがな」


 紫のアームズドールは背中に背負った斧の持ち手を伸ばし、ハルバードのような形に展開させた。 その刀身は非常いでかく、黄色く光っている。 そのパワーは一瞬だった。


 お互いが向き合って衝突すると、あれも無残にNo.3の機体は真っ二つにされた。


「一丁上がりっと」


 No.1のネクストも色の違うエターに翻弄され、苦戦していた。



「こいつらの力は、強すぎる フン。これならNo.2が落とされる理由もわかる」


 ライフルでコックピットを撃たれたNo.1のネクサスは地上へと落下していった。撃たれた場所はその先が見えるほどきれいな丸い穴が開いていた。



「少尉、こちらも終わりました」



「マレーか。でかした。 な、簡単だろ。これだけの事じゃないか。 制圧完了だ。 見てるかギエン? 作戦ってのはなこうやって迅速に完遂するモノなんだよ」


 誇らしげな表情でギエンを嘲笑うスクレイは、月光も混ざって、誰がどう見ても悪党面に映っていた。



地球連合政府、経済都市 国議会場本部――――


「そ、そんな、われわれの部隊が全滅だと……

 各国の経済都市に要請した援軍はまだか?!」


「援軍のほとんどが、壊滅させられているとの事です」


「大臣!この国が終わります」


 大臣は険悪な表情で両手を握りしめていた。非常にまずい状態だ。 戦う戦力が無いという事は、この国をいかようにもできてしまうという事なのだから。 実質、彼ら、宇宙人の侵略が完了したようなものである。 もう、どうしたらいいのかすら誰もわからない。ただ指令を待つのみ 皆の頼みは大臣の言葉にゆだねられた。


 その大臣は沢山の冷や汗をかいて固まっていた。


「どうするのですか、大臣!!」

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