ボカロやEveの歌詞やメロディから男性アマ小説家の僕が男性の立場から男女間のドラマ等を創作してみました

憮然野郎

YOASOB

第1話 ハルカを聴いて書いてみました。

高校2年生の男子生徒 アキラ

彼は度々学校を早退する。

だけど、それはなにも授業中だけに限った話では無かった。


体育祭や文化祭の練習などクラスメートみんなで協力して準備する行事のときでも、

彼は私が気が付かない間に早退していることが多かった。


実のところ、アキラの早退を快く思わないクラスメートも一部いて、

やんちゃな男子生徒 剛志もそのうちの一人だ。



ある日の放課後の教室。

それは終業のチャイムが鳴るとほぼ同事におこった。

痺れを切らした態度の剛志がアキラの席へと詰め寄ってきたのだった。


バン!!


アキラてめぇーな!

マジでふざくんな!」



剛志の怒りはアキラの机の上を激しく叩くだけでは収まりそうにない。


さて、ここは私の出番かな。



「聞いてんのか、アキラ!?

お前が体育祭の練習にほとんど参加しないせいでな、

俺達の班やクラスだけが練習遅れてるんだぞ!

大会に向けて部活の練習とかしないと行けないやつらもいるのによー!

お前のせいで、お前のせいで、コノヤロー!」


「まあまあ、剛志くん、落ち着きなよ。

アキラくん怯えてるよ。

やめてあげて」


「ほんとごめん!

剛志くん、明香理さん。 それにクラスのみんな。

僕の母さん、最近具合が悪いから早く帰らないといけないんだ」


「貴様っー!!」


「剛志くん、お願いだから!」


「うるせえ!

これは男と男の話し合いなんだよ。

女はすっこんでろ!」


「……」


「おい、アキラ

なあ?

てめぇよ。俺を本気で怒らせたらどういうことになるか、わらないなんて言わせないよな?」


剛志はそう言ってアキラの胸ぐらを掴むと、そのまま一気に距離を詰めた。

しかし……。



「剛志くん、止めなさい!」


声のする方向にいたのは担任の先生だった。

アキラと剛志、二人が口論になる前にと私が先手を打って先生を職員室に呼びに行っていたのだ。


「先生は暴力ゆるさないよ。

剛志くん?

アキラくんを今すぐ離してあげなさい」


「は……、はい」


「剛志くん。君だってもう高校生なんだしわかるよね?

アキラくんにちゃんと謝りなさい」


「え〜?

先生聞いてくださいよ!

俺だって、それにクラスの奴らだってみんな、こいつのせいで迷惑を被ってる被害者なんですよ?」


「君が暴力を振るおうとしたのは間違いないだろ?

いいから早く!」


アキラごめん……」

ペッ!!


「ちょっと、剛志くん!?」


「先生、これでいいんでしょ?」



「大丈夫かいアキラくん?」


「はい、先生。

僕は大丈夫です。ありがとうございます」


「剛志くん。アキラくんには家の事情があるんだよ。

個人の家庭の事情だから、アキラくんの保護者の同意無しに君に詳しく話すわけにはいかないんだけど、

事情は察してあげてくれ」


フン!


その場は先生がアキラと剛志、

二人の間に入ってくれたおかげで何事も無かった。


しかし、次の日からアキラはクラスメート達のほとんどから"マザコン"と呼ばれるうになった。


「俺被害者なのに何で悪者にされるわけ?

冗談じゃねえぞ!」

逆上して手をつけられなくなった剛志はクラスメート達を焚き付け、アキラを標的にしてあからさまな虐めをするようになった。


また、クラスの他の女子達も、

ほとんどがアキラに対して直接あからさまな嫌がらせはしないにしても、遠回しに仲間はずしに加担していた。


本人であるアキラ以外、

クラスに一人だけだった。

アキラへのクラスメート達の接し方を疑問に思っていたのは。

剛志にも臆することなく疑問をぶつけられる女子生徒、つまり私しかいなかったのだ。



ある平日の夕方。

アキラが放課後校舎裏で一人で泣いているところを私は偶然通りかかってしまった。


「ねえ、アキラくん?

今日は野球部は顧問が休みみたいだから

剛志もう帰ったよ。

だから今なら嫌がらせされる心配ないよ。

さ、帰ろ?」


「いい!

僕のことはほっといて!!」


アキラ……くん?

ごめんなさい。

実は私、アキラくんにこの前のこと謝りたくて」


「……ごめん。

僕は大丈夫だから。

今は誰とも話したくないんだ。

余計な心配しないで」


「う、うん。

わかった」


私は掃除当番をアキラ一人だけに任せて帰るという剛志の決定には当然反対をした。

しかし、クラス全員の多数決という数の正義には逆らえず結局従ってしまったことに私は本心で罪悪感を感じていた。



それから月日は流れ、

これは 3ヶ月後のある日の出来事。

私の祖父が肝臓の病気で入院するこになった。

そして、そのお見舞い先の病院のロビーで偶然、

母親のお見舞いに通っているアキラと出会ってしまった。


「あ!

明香理さん?」


アキラ……くん?

なんで?」


「き、奇遇だね……」


「そうだね」


「あの、明香理さん?」


「な、何?」


「この前はさ、ごめん……」


「この前って?」


「放課後、君が僕を心配してくれたのに僕が君に酷い事言っちゃたこと」


「なんだ、そんなこと?

大丈夫大丈夫。

私全然気にしてないから。

私こそアキラくんに掃除当番押し付けちゃって。

それに……、君のお母さんの事情、

あの後先生に話したの実は私なの。

怒るよね?」


「ううん、全然。大丈夫。

むしろ今となってはありがたいよ。

君が先生に詳しい事情を話してくれたおかげで、僕が欠席した日に先生がクラス会議をしてくれて、みんな僕の家の事情を理解してくれて仲間はずれもされなくなったし。

元々は最初にみんなにしっかり事情を話さなかった僕がまいた種だし。

剛志やクラスメート達に申し訳無いよ」


「大丈夫、自信を持って堂々としていいんだよ!

お母さんを大切にするアキラくんがとってきた行動はぜぇぇぇぇんぜん、

間違ってなんかいないよ!!」


「どうしたの。明香理さん?」


「ごめん、つい声が大きくなっちゃった。

恥ずかしい」



私とアキラ

二人は病院のお見舞いで顔を合わせる度に話をする機会が増えた。


それは、家や学校では話したくても話せなかった二人がいつも我慢してたこと。

そう、愚痴というやつだ。

後向きかもしれないけど、

二人だけの秘密の共有は楽しい。


学校でのクラスメートのこと。

お互いの家族のこと。

将来の夢、好きな本や漫画、映画の話とか。

そうやっているうちに、

私はアキラに自然と惹かれるようになっていった。



それから季節が移り変わり私の誕生日が近づいた頃、

遂に私はアキラと付き合うことになった。



小さな偶然が起こった。

私の誕生日とアキラとの初デートの日程の一致だ。


「奇跡だね!」


「うん……」



しかし。


今日は朝から天気がいいはずなのに、

何か変。

私には寝覚めからずっと妙な胸騒ぎがしていた。


プルプル、プルプル!!


「あ、アキラから電話だ」


もしも〜し♪


もしもし!!!


「おはようアキラくん。

どうしたの朝から?」


「朝早くごめん」


「いいよいいよ。

ところで、待ち合わせは11時じゃなかったっけ?

まだ朝の7時だから

4時間くらいはあるし」


「実はさ、昨日の夜中に病院から母さんの病状が急変したって連絡があったんだ。

だから、今日は一日病院にいなくちゃいけなくて、だから会えなくなったんだ。

せっかくデートの約束してたのに。

本当にごめん」


「え?な、何?

どうして謝るの?」


「せっかくの明香理ちゃんの誕生日なのに」



「あのね、私思うんだけど

恋人にとって記念日に会うことってそんなに大事?

世の中の私以外の女性がみんなどう考えてるかは私わからないけど、

少なくとも私は全然気にしてない。

人生いつ何がおこるかわからないし、

止む終えない用事が入ったりするのって仕方が無いんじゃない?」


「仕方が無い……そうかな?」


「うん、仕方が無いよ。

でもね、だからこそこういう時は電話が嬉しかったりするの。

アキラくんの気が動転して心にも時間にも余裕が無いときに私に電話くれたんでしょ?」


「あ、うん」


「私は、そういうところに自分が大切にされてるって思う方だから」


「ありがとう」


「実際に記念日に会えるかどうかより、お互いがどんな気持ちのタイミングで会えるかの方が私にとっては重要かな。

だって、私は私、アキラアキラ

そうじゃない?」


「そうだね。

今日は僕のせいで会えなくなっちゃったけど理解してくれてありがとう」


「あたりまえだよ。

そこは相手の立場に立って融通きかせるところ」


「当たり前……なんだね」


「そうだよ、

アキラくん」


「ねえ、明香理ちゃん?

ところでもう一つだけいい?」


「ストレートに言ってよ?

遠慮とかもったいぶるとかそういうの○ャイアン様大っきらいだからね」


「君が自称○ャイアンなのかどうかのツッコミは置いといて」


「こらー、置いとくなぁ〜!」


「いつも自分のことみたいに僕の為に親身になってくれて、

一緒にいないときでもきみの大切な時間を僕のために使ってくれてありがとね、

明香理ちゃん♪」


「何!?何?

急に柄でもないこと言って」


「え、そっかな?

だって、明香理ちゃんいつか僕に言ってたでしょ?

家庭が片親だから幼い弟さんの子守やお母さんの店の片付けを手伝ったりして夜寝る時間が遅くなる日が多いんだって。

だから休日の朝の早起きは苦手だって」


「そう。

へぇ〜!

あのときの話、アキラくん

まだちゃんと覚えてくれたんだぁー!」


「うん」


グスン。


「え、明香理ちゃん、どうしたの?

今声の調子変だけど風邪引いてるんじゃない?」


「いいえ、いい。

私鼻炎持ちだからたまになるの」


「ホント?」


「うん。

ところでアキラくんは時間大丈夫?

デートはいつでもできるわけだし。

何をやってるの?

君のお母さん今具合悪いんでしょ?

そんないつまでも私と取り留めのない話していないで、

早くお母さんに元気な顔みせに行って安心させてあげたら?」


「ありがとう」


「ところで、アキラくん?

何か私に言うこと忘れてない?」


「え?何だろう?」


「ハピバースデートゥーユ〜♪」


「あ!」


「最低。

男の子ってほんと鈍いんだから」


「明香理さん!!」



「明香理、

誕生日おめでとう♪」


「う〜ん、50点かな。

よろしい♪」


「採点、厳しくない?」


「ありがとう、グスン、アキラ♪」


「鼻声、ホント大丈夫、明香理?」



ずかしくて正直に100点とは言えない。

恥ずかしくて言える訳がない。

電話口の私が今嬉しくて嬉しくてたまらないことを。

涙で化粧のとれた顔を真っ赤にして泣いている姿を。


せっかくいつもより何倍も早起きしてアキラに褒めてもらえるよう魅力的なヘアースタイルやメイクが出来るまで頑張ったはずなのに。


せっかくいつもより何倍も早起きしてアキラに褒めてもらえるよう素敵な衣装合わせを頑張ったずなのに。


せっかくいつもより何倍も早起きしてアキラが喜んでくれるようなお弁当を試行錯誤して作ったはずなのに。


それらの努力が今日は全部無駄になってしまった。


こんにゃろ〜、女の敵ー!!♪

と心の中でアキラを愚痴ってみた。


だけど、不思議とアキラだけは憎めない。

この不思議な感覚はいったい何なのかな?

私が毎日やってきた目立たない努力のうちのほんの一部だけど、

君はちゃんとそれをわかってくれた。

そして、私に感謝やねぎらいの言葉をかけてくれた。

そういう男に今まであまり馴染みがなかったからなのかな?


早起きして作った自分好みの味付けでは無いお弁当を食べながら、

アキラに対する自分の今の心の充足感と、自分の今の醜態をアキラに知られずに済んだことに安堵する私だった。





あなた、また私をほったらかして。

今度は何?


ごめん、明香理。


知ってる。

あなたって本当におひとよしなんだから。

"僕は君のようにいつも頑張ってる人の心を大切にしたいんだ"

でしょ?

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