美少女アリスの航海日記

ルブブ

第1話

私はアリス。この、小さな村に住んでいる。だが不思議なことに私には1年以上前の記憶がない。家族も居ず、迷っていた時この村を見つけて家を借りた所からしか記憶がない。

 そんな時、見つけた微かな希望が村の図書館だった。決して大きなものでも無く、最新の本もない。だが代わりにすごく古い古文書などが1000冊近く置いてあった。

 暇人だった私は毎日図書館に通っていた。私はいつもの通り図書館に行って本を漁った。そんな時私は躓いて本棚に当たってしまった。

「ギギギギ」と音が聞こえると共に本棚がぐるっと回って今まで気付かなかった〈隠し部屋〉が現れた。

 恐る恐る入ってみると暗い空間の中に一つの机があり、その上に埃を被った一冊の本が置いてあった。手に取って埃を払うと、表紙に植物図鑑と書いてあった。図鑑と言うと一冊、100枚金貨があっても足りない。そんな高価な本がこの図書館にあるとは思ってもいなかった。

ページを開くと、毒草やら食べれる植物、回復のポーションに使う植物などが1000近く細かく載っていた。

 その図鑑の最後のページにあったのが《記照》と言う植物だった。なんでも忘れた、奪われた記憶を取り戻す事ができるらしく、それは『世界の果て』と言うところにあるらしい。


『もしかしたら私の記憶を取り戻す事ができるかも』


 私の記憶がどのようにして無くなったかはよくわからないがそれを知る手がかりにもなりそうだ。続きを読み進めるとこの植物は10000年に1度のみ咲き、その花が必要らしい。だがそのことを読むと、とてつもない〔運〕が必要という事が分かった。


「それにしてもコレしか手がかりが無いとなー」


 私は本を持って隠し部屋から出た。やはり何度見ても外からじゃ気付かない。不思議。

なんにせよこの村でこのまま暮らすのは色んな意味で難しい。

だがこの《記照》とやらに消えた記憶を取り戻す事ができる可能性が少しでもあるのなら試してみる価値はある。


「記照、、、か。どっか無いかなー」


 私は他に記照について書かれている本が無いか隠し部屋から出て本棚を漁る。

だが植物図鑑など高価な物が他にあるはずも無く、最後に手に取った本を本棚に戻そうとした。

その時だった。一冊の本が自分の足元に落ちる。


「、、、、、航海日記?。」


 本の表紙には航海日記と書いてある。

日記、そういえば昔、、、、書いてたような、、、、。昔の事を思い出そうとした瞬間、頭に頭痛が走る。ッッッツ。この記憶を思い出そうとした時の頭痛、やめてほしいなーー。

と頭を押さえて頭痛が治まるのを待ってからページを開いて声に出して読み進める。


「一日目、天気晴れ、異常なし。二日目、悪天候により1人死亡、船内は昨日の明るさがまるでない。三日目、予定の港に着かず、海を遭難、、、、」


 どうやらこの日記、航海の毎日を記録した物らしい。

それにしても、二日目で1人死亡って事はこの先、六日後ぐらいには、、、。

と考え、再びページをめくる。


「六日目、悪天候の際、海獣アイギス?と思われる魔獣の襲撃によって船員の半数が死亡、その他も重傷。八日目、とある島に流れ着き、命は助かった。だがそこに生える植物、「記照」によって結界が張られ上陸困難になった、、、」


 記照がほんとうにあったって事!?それにしても魔獣、、、か。実際見たこともなくこの図書館の作り話にたまに出てくる物だ。なんでも前読んだ本によると、私の何倍も大きくて、魔法と言う不思議な力で襲ってくるらしい。信じてはないけれどいたら、どんなふうなんだろう。

と想像を膨らませた。

ふぅ、と息を吐き図鑑以外の本を本棚に戻してドアの取っ手に手をかけた。

その時だった。


「ウァアアアーー」「キッッッ、キャー」

「や、、、やめろ」


 ドアを開けた瞬間見えたのは、火の海、泣き叫び逃げる人々。肌に熱風が当たる。

逃げる人々の後ろには大きな生き物。〈魔物〉だ。

逃げる人々に飛びかかり歯と爪で食い殺す。


「魔物、、、嘘、、、、、や、、めて」


私は無意識に歩きながら言葉を漏らす。

幾つもの死体、もう逃げる人々はこの世には居なかった。

血で染められた牙をこっちに向け少しずつ近づいてくる。


「いやだ、、、、いや、、、」


私は魔物に背を向け必死になって走る。

諦めたのか魔物は追って来ない。よかった。と安心した時だった。


「いやいや、まーだ生き残ってたのか」


私の目の前に突如現れたのは魔物ではなかった。

黒いマントを羽織り、黒い髪を靡かせる女それは目で見てわかるほどの[差]だった。


「名乗るのを忘れていたな、私は3大魔女、魔物使いのリーリヤ。この村を壊したのは訳あっての事だ。何、要が有るのはその植物図鑑、ただ一つだ」


魔女?。初めて聞いた単語に驚く。

だが植物図鑑なんてお金さえあればどこでも、、、。


「図鑑?この図鑑が欲しいの?だったらあげるけどなんで、なんでこの村の図鑑なの?」


私は魔女を睨みつけ、ぎゅっと本を胸に抱き寄せる。


「その図鑑はね、この世に一つしかない物なの。その図鑑に有る一つの植物が目当てなんだ。大人しく渡してくれたら痛くないように私の魔物で殺してあげる」


どちらにせよ殺すなんて許せない。けど魔物を操る魔女に抗うなんて無理だ。

もうこっちに抗う手立てはない。逃げてもすぐ追い付かれるだろう。でも、この本を渡してはいけないと本能的に分かった。


「これは、、この本は渡さない。命なら好きにすれば良い。どうせ渡しても殺すんだったら少しでも抗った方が百倍マシ」


私は右拳を握りしめて魔女の顔を目掛けて殴りかかる。

だが拳は相手に届く事なくその前に魔女のナイフで刺され膝をついて横に倒れる。


「何か魔法で来ると期待したのに、、、残念、お別れね」


腹から血が滲み出て服が赤く染まる。魔女は手に握った赤いナイフをヒュっと振り血を払って構えた。


「まだ、、、まだ、、だ」


私は力を振り絞り立ち上がって言った。


「まだ立ち上がる気力が有るのか、、、ならその生への執着心を尊重して特別ナイフで殺してあげよう。魔物にじんわりやられるよりずっと長く生を感じられる。感謝しろ」


視界がぼやける。ナイフがギラッと光を反射させもう一度腹に刺さった。もう、だめ、、、か。

視界がゆりかごの様に揺れ、頭が真っ白になって言った。


「遅かれ早かれもう君は死ぬ。本は貰って行くよ。じゃあ、せいぜい生のありがたみを感じながら死ね」


誰が死ぬ、、か。私は手を上げようとしたが、手はまるで人形の様に動かなくなっていた。





明日更新!?

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