ゆめ

 きみは目をつむりながら、ぼくの肩に身をあずけていた。

「ぼくがきみにしあわせのひとかけらでもあげることができたなら」

 きみは目を開ける。

「起きていたの?」

「うん」


「やっぱりハルのほうがあたたかくて好きだな」

 確かに、この間のような寒さは感じないのだった。

「フユは寒くてきらい。ずっとハルでいいと思わない?」


 たしかにこっちの方が寒くはないけど。

 なんとなく、まっしろなせかいこそがぼくに合っている気がしたんだ。

 それに、まっしろなせかいにきみだけが色づいているように見えて、ぼくは案外好きだったよ。


「よくわかんない」


 わからなくていいんだよ。



 いつの間にかきみは隣に居なくて、いつものように音が聞こえる。

 ぼくは虚しさにおそわれるだけだ。


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