第18話 兄と弟と妹の約束

『さて…と。』




近藤さんが私たちの様子を伺うようにぐるりと見回す。

誰も喋らないし、動かない。

五分ほど経っただろうか。



『…悪かったな。』



声を出したのは歳さんだった。



『お前の姉ちゃん…怒鳴っちまった。』



すまねぇな、あんなんでもお前の姉ちゃんなのに、と眉を下げて兄上を見やる。



兄上に目を向けるとさっぱりとした笑顔で『いえ、嬉しかったですよ。歳さんがあんなふうに言ってくれて。』とにこにことして『ありがとうございます。』とお礼を言った。



吹っ切れたような笑みの兄上は、そのまま山南さんにも目を向けて。



『僕も…いや、僕たちも、山南さんのこと兄上だと思っていますよ。』




ねぇ、おせい。と私の方を向く兄上は、いつも優しい笑みをさらに深めていて。




照れたように笑って『兄上、なんて呼ぶのはよしてくださいね』と言う山南さんも、それを見つめる歳さんも、近藤さんも、源さんも、みんな優しくって。



改めて、試衛館の絆の深さを実感した。



兄上はそのまま私を抱きしめて、『ほら、もう泣かないの。大丈夫だから。』と私の背を撫でると、『僕はこんな素敵な家族に恵まれて、幸せものです。』と笑った。





そして、その日、私と兄上と山南さんは約束をした。



遠慮をしないこと。




困ったら必ず助けを求めること。




それは、"兄妹3人"の初めての約束だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

月夜の白牡丹 梅花あさぎ @asagi_ri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ