第2ステージ オタクは場違い!?⑤

 楽しかった。


「その漫画読んでんだ。面白いよなー」

「今週のアニメ見た? 神回だったよ」

「小説貸してくれてサンキュー。面白かった。え、これ今度アニメ化するの!? まじかよ」


 分かち合えるのが嬉しかった。


「今週のヨンデーの表紙が唯奈さまなんだよ! 保存版、保存版、保存版の3冊買った」

「こないださ、バイトで貯めた金でライブ行ってさ」

「最高だったんだよ。ライブDVD貸そうか?」


 一人で楽しむものだ。それでも誰かと何かを分かち合って、時には言い合って反発して、熱くなれるのが青春だったんだ。


「今期の見てないんだ。そうだよな、俺ら受験期だよな……」

「へー、彼女できたんだ。よかったじゃん!」

「大学デビューか、頑張れよ!」


 気づいたら皆、オタクをやめていった。

 アニメの話をしなくなっていった。声優の話をしなくなっていった。

 受験が終わるまでの我慢じゃない。

 彼らは、そこまで必要としていなかったんだ。


「ハレ、無理すんなよ」


 無理なんかしてない。無理しているのはお前らだ。

 好きなものを全力で好きで何が悪い。

 勉強が大事なのはわかる。恋人が大事なのはわかる。これからが大事なのはわかる。

 ……わかるけど、それでもこの『好き』は今でしか味わえないものなんだ。


「そういうキャラしなくて、もういいよ」

「だってお前の好きは、普通とは違うじゃん」

「本気なの? 否定しないけどさ」


 同じ時は二度とやってこない。

 俺は一度だって間違えたくない。


 気づいたら、俺は一人だった。


 友達はいるし、話せる人はいるし、学食にいく奴もいる。

 でも、一人だった。


 誰も俺と同じ想いを持っていなかった。

 一人ぼっち。


 俺は、場違いな人間だったんだ。

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