人を殺してしまうかもしれない


「せんぱい、せんぱい」


おう。後輩。

いつもより深刻そうだな。

どした?


「私、人を殺してしまうかも、

 知れないっス」


おいおい。流石にヤベーな。

そんなに俺を憎悪してんのか?


「いやいや、せんぱいに、

 そんなことするんなんて、

 在り得ないっス」


そうか、安心したぞ。

何だかんだ信頼して__


「そこまで深く、

 せんぱいに情を寄せたりしないっス」


このヤロウ。

それは、それで失礼だな。

で、本題は?


「えと……世間だと、男の人が30まで……

 その___」


ああ、言いにくいだろうから、

その先は言わんでいい。

男は30まで童貞だと、

魔法使いになるって奴だな。


「そうっス」


そんなもんに振り回されてんのか?


「違うっスよ。でも、もしっスよ?

 もし、それが本当で、

 それが女だったら、どうなるんっスか?」


確か妖精か__。


「そうなんスよ。

 セイレーンになるッス」


え、いや、

妖精っていっても沢山__


「私、歌美味いッスから、

 それで人を殺めてしまうかも、

 知れないっス」


なるほど。

どっからツッコんでいいかわからんが、

そうなると、

やっぱり、真っ先に死ぬの俺だろ。


「いや、せんぱいは魔法使いだから、

 大丈夫っス」


うん?

俺は戦士で武道家だぞ?

(戦士、武道家。意味=非童貞)


「マジっスか?」


マジっス。

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