現実と小説の関係性


「せんぱい…………」


どうした後輩。


「私って可愛いじゃないですか」


う、うん。

そうだな魅力的だよな。

(否定も肯定もしずれぇなぁオイ)


「その上、文章力もある。

 ってことは、

 知性な大人の女性ってことじゃないですか」


まぁそうだな。

そう言えなくもないな。


「なのに、モテないってどういうことですかっ!」


それは知らん。

ついでに言うと、モテない俺に言われても、

上手く慰めることも、

いいアドバイスを送ることも出来ん。


「だって、休みの日だってのに。

 大体いつもせんぱいと一緒にいるし。

 どういうことですかっ!」


そりゃお前の事好きだし、

一緒にいて楽しいからだよ。


「えっ⁉ せんぱいって、

 私の事そういう目で見てるんですか?

 てゆーか見てたんですかっ!

 キモイっ!」


だって、お前。冒頭で自分のこと、

美しくて、

知的で魅力的な女だって言ってただろ?


「そ、そうっスけど」


だから、傍にいる相手を魅了してる。

可笑しいことないだろ?


「ま、まぁ。そ、そりゃ、そうですけど。

 せんぱいは良い人だし、

 好きですけど……

 でも、そういう感じじゃな いっていうか、

 でも一番信頼してるっていうか…………」


別にどうでもいいだろ、そんなもん。


「え、はっ⁉ 何言ってんッスかっ!

 そういうの大事じゃないっていうんスか!」


ちげーよ。

一緒にいる理由が恋愛感情じゃなくても、

別にいいって言ってんの。


「たぎる思いは大事でしょ!

 あの、いや…………。

 私は燃える様な恋がしたいというか」


したらいいじゃねぇか。


「え? でも、さっきせんぱいは…………」


(あ~なるほど。

 こいつは、経験したことしか小説に書けないとか、

 そんなん信じてんだな)

 んじゃいいか?

 大恋愛をしたとするだろ?

 で、お前は幸せだ。


「ほいほい」


理想の相手だ。

でも、何かのきっかけで別れちまったとする。

そうしたらお前はどうなる?


「落ち込んで何もしたくないっス」


で、その状態で小説書くか?


「何言ってんスか、書けるわけないでしょ。

 私の頭どれだけお花畑だと思ってんスか!」


そうだな、すまん。

んじゃその理想の相手と大恋愛の末、

ゴールインした。

で、子供も生まれた。もう幸せの絶頂だ。


その時、小説を書くか?


「馬鹿じゃないっスかっ!

 んなことしてる暇ねぇッスよ!」


だろ?


「で、今の話がどう関係してくるんスか?」


うん?


「だから、どう繋がるってんですか」


そうだな。あの有名な『葉隠れ』って、

平和な時代に書かれた物だって知ってるか?


「せんぱいは、

 時々クソ知識ツッコんでくるから、

 わけ分かんねぇっス」


だからな、お前の場合は、

充実し過ぎてても書けないし、

逆に追い詰められ過ぎても書けないの。


「はぁー。で?」


俺ぐらいで、

丁度いんじゃねぇかって話してんの。


「い、いきなり何言ってんですか。

 口説いてんですか?

 ごめんなさい無理です」


じゃあ、今日はカラオケ行こうぜ。

(ホンキでモテたいなら、

 人への気遣いと、言葉遣いを覚えような)


「しょうがないですねぇー♪

 何時も通り、

 美女の美声を聞かせて上げるッスよ」


おう、頼むぜ。

(滾る熱い思いや怒りで書く人もいるけど、

 俺はどっちなんだろうな)

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