2-4. 改稿に向けての作業

 改稿に入る前に、以下を送ってほしいとの依頼がありました。


 ・原稿を一つのデータにまとめたもの

 ・プロット(もしあれば)

 ・キャラクター設定の資料(もしあれば)


 私は基本的にWord縦書き・改行なしで執筆しているので(カクヨムにアップするときには改行を入れます)、手元にあったものをほぼそのまま送ることができました。


 プロットについては、「作る・作らない」両方の意見をカクヨムで見かけますが、私は作ります。けれどもプロットに固執することはありません。書きながらどんどん変えていきます。


 ただし、プロットポイントはずれないように気を付けます。

 物語には読み手にとって心地よいリズム、タイミングがあると考えており、そこが大幅にずれることは快適な読書の妨げになるように思うからです。


 それ以外は物語にとって最適な展開を考え、不要な要素は削り、必要なものは増やします。たまにやりすぎることもあり、『ミュゲ書房』の改稿中にもありました。



 さて、メール添付で原稿等を送った後、編集さんからは、以下の返信がありました(実際の文面はもっと丁寧)。


 ・データを元に、改稿方針を考える。

 ・全体の方針について考える作業のため、少々お時間を頂く。

 ・7月X日までにご連絡できればと思っている。


 そして約三週間後、改稿案が送られてきました。大まかな方針はメール本文に、細かい部分はWordの原稿にたくさん書き込みが。


 以下も書かれていました。「納得の上で」というのは、改稿を通じて編集さんが重視していたことです。


 ――――――

 色々書いておりますが、全て「提案・ご相談」として進められればと思っております。

 全て、ご相談してご納得いただいた上で、進められればと思っています。

 ――――――


 当時の私の気持ちをメールから抜粋しておきます。


 ―――――――――

 コメント、こんなにたくさん書いて頂いたとは!

 しかも褒めてくださっている箇所も!! 嬉しいです。

 詳細にありがとうございます。

 途中まで読み、最後一体どんなことが書いてあるのだろう? と気になって最終ページへ。後ろから読んでしまいました。

 ――――――――――


 この感動は、改稿後の『ミュゲ書房』に登場人物の会話として反映されました。


 『ミュゲ書房』の大部分は、編集者である主人公・章と、彼が関わる作者たちの物語です。


 担当編集さんの意見やアドバイスはもちろん、その言動や私が受けた印象、編集者や編集の仕事について教えてくれたことなども改稿に反映し、主人公の人物像はもちろん、物語の厚みとリアリティが増していきました。



 ここからは余談ですが、編集さんの個人的な考えによると、一口に「編集者」と言っても、編集の仕事のどこに最も魅力を感じているかという点では、いくつものタイプに分かれるそうです。


 ・物語が好き

 ・企画を立てるのが好き

 ・物語や本を人に届けるのが好き

 ・物としての本が好き


 など。


 『ミュゲ書房』の担当編集さんは、「物語が好き」だそうです。

 主人公の章については、「物としての本が好きなタイプかな」というご意見でした。


 ここは私の内面が主人公に反映されたように思います。

「物語」単体で好きになる場合ももちろんありますが、「物」としての本に特に惹かれます。

 装丁、どんな著者が書いたのか、本に施された工夫など――『ミュゲ書房』に登場する本のうち何冊かもそうで、特に中盤に登場するある本は、特別な一冊です。

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