設定と後日談


・相川 里央(あいかわ りお)

いつも教室でも一人で過ごしている。人当たりが悪いわけでもなく、ただ一人で過ごすのが好きらしい。たまに愛莉にちょっかいをかけられてイヤそうな顔をしている。大人しいタイプではなく、普段はサッカーのクラブチームに入っている活発な少女。チームではポニーテールを揺らしてボールを追いかける。最後のおねしょは2年生の時のクラブチームの合宿。今でもイジられることがある。


☆おむつを履いた感想

「ゴワゴワして動きにくいなと思いました」



・上松 可那(うえまつ かな)

委員長でクラスのリーダー。先生や友達、兄弟からも優等生と思われているしっかり者。主張が強いので男子と口喧嘩することもある。男子リーダー格の優斗とは保育園からの腐れ縁で親同士も仲がいい。優斗のおねしょをバラしたが、実は可那自身も3年生の時に一回だけおねしょしたことがある。絶対に優斗にはバレたくない。


☆おむつを履いた感想

「ホントはちょっと恥ずかしかったけど、みんな履いてくれたので良かったです」



・大石 美宇(おおいし みう)

ちょっとヤンチャな女の子。中学生と付き合っているという噂もある。夏休みに髪の毛を茶髪にしていたのをクラスの男子に目撃された。生理だからと言って毎回水泳の授業はサボり、めんどくさい授業は保健室にいることも多い。3年生の弟がまだおむつで寝ているので、ムーニーマンを履くことへの抵抗は薄かった。最後のおねしょは3年生。


☆おむつを履いた感想

「別に」



・亀山 詩保(かめやま しほ)

内気で声も小さい。授業中に当てられても、答えがわからずその場で泣き出してしまったこともある。男子にからかわれて泣いたこともあったが、その時は可那を中心に女子みんなで反撃した。勉強もスポーツも普通だが、クラスメイトの坂本さんに異様に好かれている。最後のおねしょは実は5年生。年に数回、寒い時期は今でも心配になることがある。穂乃香に無理やりおむつを履かされそうになったが拒否して自分で履いた。


☆おむつを履いた感想

「わかりません」



・阪本 穂乃香(さかもと ほのか)

異様に詩穂のことが好き。帰るときも手を繋いで校門をくぐる。母子家庭であまり親にかまってもらえないようで、その寂しさを友達で埋めようとしているのかもしれない。顔はかわいいので男子からは人気があるが、依存体質のせいで女子からの評判はいまいち。陰では「詩穂ちゃんかわいそう」と言われている。最後のおねしょは1年生。


☆おむつを履いた感想

「詩穂ちゃんに履かせてあげたかったのに残念」



・清水 茉季(しみず まき)

身長は高くないが、運動神経のかたまり。5年生から陸上を始め、クラスで一番50メートル走のタイムが良い。陸上を始めてからショートカットにして、たまに男の子に間違えられることもある。あまり勉強は得意ではないようで、6年生になってからイヤイヤ塾に通っている。正直ムーニーマンは結構イヤイヤ履いた。委員長や愛莉のノリはあまり好きではないらしいが、本人なりに空気を読んでいる。最後のおねしょは覚えていない。


☆おむつを履いた感想

「ガサガサして気持ち悪かった。赤ちゃんみたいで恥ずかしかった」



・高木 祐梨子(たかぎ ゆりこ)

クラスの調整役。特別仲がいい子がいるわけではないが、誰とでも話せるタイプ。クラス間やグループ同士で険悪なムードになった時は間に入って仲裁している。相談を受けることが多い役回りだが、本当は腹黒い。相談された個人の秘密は全てメモして置いてある。何かあった時に脅す材料にするつもりらしいが、今のところメモが活躍したことはない。優斗のおねしょの話もしっかりメモした。最後のおねしょは幼稚園の時。


☆おむつを履いた感想

「恥ずかしくて絶対誰にもバレたくないです」



・戸川 麻美(とがわ あさみ)

麻美の家に行くと、おやつと称しておにぎりが出てくる。日曜日に家族で回転ずしに行くのが一番の楽しみらしい。ムーニーマンは、実際に足を通すまでもなく手で広げた段階で諦めた。バレンタインに麻美が作るチョコはお店のものより美味しいらしい。家庭科の教科書でバルサミコ酢が出てきてから、あだ名は「サミコ」になった。最後のおねしょは保育園の年長さん。


☆おむつを履いた感想

「広げた瞬間に、あー、これ無理だなって笑」



・中村 愛莉(なかむら あいり)

クラスのお調子者でショートカットの元気な女の子。授業中は優斗としょうもないこと言い合ってよく大谷先生に注意されている。クラス、学年を問わず友達が多く、休み時間はいつもどこかの教室に遠征している。最後のおねしょは4年生。3年生ごろまでは結構な頻度でおねしょをしていた。2年生まではオヤスミマンで寝ていたらしい。


☆おむつを履いた感想

「ちょっと懐かしい感じ~、え、うちだけ?」



・原口 梓(はらぐち あずさ)

今回はふとももで引っかかりムーニーマンは履けなかった。低学年の頃から水泳を習い、県の選抜にも選ばれたことがある。水泳はエネルギー消費が多いからと、最近は食べる量が一気に増えた。160㎝に届きそうな高身長なので、「モデルになったら?」とよく言われるが、本人は水泳選手になりたいらしい。最後のおねしょは1年生の冬。


☆おむつを履いた感想

「みんな楽しそうに履いてたから、ちょっとうらやましいなって思いました」



・森山 紗衣(もりやま さよ)

クラスの中では一番身長が低い。そのせいでいつも妹扱いされるが、本人はまんざらでもない様子。長女のため、家では弟と妹の面倒を見るしっかりもののお姉ちゃん。妹扱いのせいか、あの日は麻美におむつを履かせてもらった。勉強が得意なので、いつも茉季に算数の宿題を教えてあげている。最後のおねしょは2年生。下の兄弟にバレないようにお母さんに泣きついて片付けてもらった。たぶんバレていない。


☆おむつを履いた感想

「いつもは弟と妹に履かせてるから、履かせてもらうのはなんか不思議な感じがした」



・柳本 理沙(やなぎもと りさ)

静かで大人しい女の子。幼稚園から習っているピアノが得意で、4年生から毎年合唱の時の伴奏を任されている。同じく静かなタイプの詩穂と仲が良かったが、最近は穂乃香にとられて、休み時間は一人になりがち。前の席の可那が積極的に話しかけてくれるので、なんとかボッチにならずに済んでいる。おねしょは、今も月に2,3回の頻度で継続中。寝るときはベッドにおねしょシーツ使用。








「それで、久しぶりに履いたおむつはどうだったの?」


家に帰って旅行用のカバンを置くと、早速お母さんが聞いてくる。自然学校も修学旅行も乗り越えたので、さすがにもう大丈夫だったろうと思って軽い気持ちで聞いた。


「それが…」


理沙は顔を赤くしてうつむく。


「え、もしかしてやっちゃったの」


お母さんも予想外の反応に驚く。


「じゃあおむつどうしたの?みんなにバレたの?片づけは?」


お母さんは矢継ぎ早に質問する。理沙はゆっくりと一つずつと説明する。おむつを履いていたおかげで被害はなかったこと、真奈ちゃんのお母さんに助けてもらったこと、誰にも気づかれなかっただろうことを話した。


「坂井さんのお母さんに助けてもらったんだ。お礼言わないとね」


そう言うと、お母さんはスマホの連絡先から真奈ちゃんのお母さんの連絡先をタップする。しばらくして電話に出たようだ。


『もしもし、柳本理沙の母ですが…』


『あ~、こんにちは。いつも娘がお世話になってます』


『あの、昨日の件娘に聞きまして。お手数おかけして申し訳ありませんでした』


『いえいえ、そんなのいいです。いつもうちの真奈の方がたくさんご迷惑おかけしていますし…』


『替えのおむつまでお世話してもらったようで、ホントにありがとうございました』


自分のいない会話の中で、自分のおむつの話がされるのがたまらなく恥ずかしい。理沙はわざとトイレに行って2人の会話を聞かないようにした。トイレから戻ってくると、電話は終わっていた。


「リサ、ちょっと着替えて。今から坂井さんのところ行くから!」


「え、なんで…?」


「おむつのお世話までしてもらったんだから、きちんとお礼言わないと。今から一緒に行くよ」


反論する余地もなく、理沙は車に乗せられた。途中近所の和菓子屋さんで手土産を買ったが、理沙は車から出ずに待っていた。真奈ちゃんの家までは車で10分ほどだった。静かな住宅街の一軒家が真奈ちゃんの家だった。


「わざわざお越しいただいてすいません…」


インターホンを押すと申し訳なさそうに真奈ちゃんのお母さんが出てきた。


「いえ、大したものではないですが」


お母さんは和菓子を手渡して今回のお礼を丁寧に伝えた。「お茶でも…」と真奈ちゃんのお母さんが言うので、二人して客間に通された。しばらく世間話に話が咲いていたと思うと、急に話しが理沙のおねしょの話になる。


「うちは毎日ですけど、柳本さんのところも結構な頻度なんですか?」


「4年生まではほとんど毎日、だったよね?」


確認するようにお母さんは理沙の方を向いて問いかける。理沙は恥ずかしそうに、うんとうなづいた。


「最近は月に2,3回なんで大丈夫だと思ったんですけどね~、4年生まではおむつだったから自分用に持たせればよかったですね」


笑い話のように話すお母さんを、「ちょっと!」と肘でつつく。真奈ちゃんのお母さんはニコニコ話を聞いていた。そうすると客間のふすまが開き、真奈ちゃんが入ってきた。


「あら、真奈ちゃんこんにちは」とお母さんが言うと、いつものようにピンと右腕を伸ばして真奈ちゃんなりの挨拶をした。しばらくは真奈ちゃんも一緒に世間話に耳を傾けていたが、退屈したのか理沙の腕を引っ張って部屋を出ようとする。


「真奈ちゃん遊びたいの?」


理沙が聞くと、真奈ちゃんは右腕を伸ばした。話が盛り上がっている大人二人を置いて、理沙は部屋を出た。真奈ちゃんに腕を引かれて連れていかれたのは、真奈ちゃんの部屋だった。

ベッドと机以外は、真奈ちゃんの好きなキャラのグッズやおもちゃで溢れている。しばらく真奈ちゃんの相手をしていたが、私の視線はずっと部屋の隅にくぎ付けだった。そこには昨日の夜にも見た、「ムーニーマン」の文字がはっきりと見える。毎日履くからだろうか、おむつのパッケージがそのまま部屋の隅に置かれていた。


真奈ちゃんは、理沙とおむつのパッケージを交互に見た。何を思ったのかわからないが、さっきまで遊んでいたおもちゃを放り投げ、おむつの方へ歩いていく。


「真奈ちゃん、どうしたの?」


理沙が聞いても反応せず、必死にムーニーマンのパッケージを漁っている。一枚だけ引き抜くと、ニコニコしながら理沙に差し出した。真奈ちゃんが一番気に入っているブルーのHAPPY柄だった。


「これ、私に?くれるの?」


いらないとも言えず、そのまま真奈ちゃんからムーニーマンを受け取った。


「リサー、そろそろお邪魔になるから帰るわよ!」


さっきまでしゃべりまくっていたのに、大人は勝手なものだと理沙は思う。お母さんにおむつをもらったというのもはばかられたので、真奈ちゃんから渡されたムーニーマンは、半分に折りたたんでスカートのポケットに突っ込んだ。一体真奈ちゃんはどういう気持ちで私におむつを渡したのだろうと、帰りの車の中で考えた。おねしょする可哀そうに私におむつを分けてくれたのだろうか。いや、あの時真奈ちゃんは確かに寝ていたし、と考えが巡る。


家に着いて部屋に戻ると、理沙は勉強机の一番下の引き出しにムーニーマンを仕舞った。


「今夜はおねしょしませんように…」


引き出しのおむつは、このままおねしょが治らなかったときのために取っておくことにした。真奈ちゃんの優しさはできるだけ使わないよう、頑張っておねしょを治すぞ!と理沙は心に決めたのだった。





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6年2組のムーニーマン はおらーん @Go2_asuza

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