第12話 手紙

真優、夏生、歩乃目へ


いままでありがとう。

最後まで迷惑をかけてしまうこと、許してください。

短い間だったけれど、とても楽しい大学生活でした。


3人に謝らなければならないことがあります。

私は成美ではありません。

私は、成美の妹の静花です。

姉の夏休みが終わってから、ずっと成美として生きてきたのは私です。

私の葬式が行われていましたが、私は生きています。


私は、姉が実家から大学に戻るとき、一緒に駅まで行きたいとメッセージを送りました。

そのメッセージ通り、姉は駅まで私を連れて行ってくれました。

姉が荷物を置いて駅のホームに立っていたとき、私は姉からスマホを借りました。

それと同時に私の持っていたバックを渡しました。

そして、電車が駅に入ると同時に、姉をホームから突き落としました。

私は姉の荷物とスマホを持って、その駅を後にしました。


私が姉に渡したカバンのなかには、私の学生証やスマホが入っていました。

そのため、警察には私が死んだものだと判断されました。

私の思い通りでした。

これで私は姉として第2の人生を送れる、そう思いました。


私は姉が憎かったのです。

なんでもかんでも上手く出来る姉が。

いつも親に褒められている姉が。

いつも友達に褒められていた姉が。


姉には私の苦しみは分からなかっただろうと思います。

なんでも姉と比べられ、

大人には失望の目を、

同じ学校の人には悪口を言い続けられた。

それでも、姉が私のことで悩まないように、

負担にならないようにずっと我慢してきました。


しかし、それに耐えきれなくなったとき、姉が私のスマホに写真を送ってきたのです。

あなたたち3人と海に行ったときの写真です。

その写真を見たとき、姉は私をどれだけ苦しめれば気が済むのか、と思いました。

そして、姉のことで苦しんでいる自分を見て、私は気づきました。


私は姉のために生きているのではなく、私のために存在しているのだと。


その瞬間、今まで私に悪口を言ったり失望の目で見てきた奴らのことが許せなくなりました。

そして何より、ずっと横にいたのに何も助けてくれなかった姉に、憎悪とも言える感情が芽生えたのが分かりました。


だから殺しました。そして、私が姉に奪われた分の人生を、姉の代わりに生きると決めました。


でも。


あなたたちに会って、なんだか自分が生きることも辛くなってしまいました。

あなたたちは私とは違う世界を生きてきた。一緒に過ごしてそれを実感しました。

私とは違うあなたたちのの人生が妬ましく感じて、殺してしまいたいと思ったこともありました。

でも、あなたたちとの日常を思い出すとできませんでした。

真優さんの包丁を持って行ってしまったのは私です。申し訳ありませんでした。


私はあなたたちと出会えて良かったです。

本当に最後まで迷惑をかけますが、今までありがとうございました。

私は、私の手で、私の人生を終わらせようと思います。


それと、家族には私が静花だと伝えていません。秘密にしてもらえると嬉しいです。


それでは。


仲松 静花より

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