第3話

超豪邸内。


マヒロ宅の使用人であり、白髭を鼻下に蓄えて

腰の曲がったじいさんのあとを俺はとぼとぼと付いて歩いていた。


何しろ、広過ぎる。


じいさんがいなかったら俺は迷子になりそうだった。


五分くらい歩いただろうか。西へ東へ、

北へ南へ曲がりながらドアノブに、

ちびっちゃいテディベアのぬいぐるみが

かかった部屋の前へと来た。


「マヒロさまは此方で待機しておられると

思います。


「マヒロのやつ、また、部屋を変えたんですか?」


「はい。何しろ、お嬢様はとても飽きっぽい性格でして」


「あー、マヒロは確かに飽きっぽい性格だ。

幼少の頃から、かくれんぼにすぐに飽きて、

鬼ごっこに移行し、それも飽きたら、

滑り台で遊び、続いてはブランコ...

ひとつの遊びに対して、五分と持ちません。

そんな飽き性が如実に出てるのが、

男女交際です。

大体、あいつ、

男を取っ替えひっかえして付き合ってるんです。

あれですよ、ビッチってやつですよ...」


「ビッチ...??なんですかな、それは?

ピッチ、ねじの山と山、歯車の歯と歯など、隣り合った二つのものの間隔のことではなくて、ビッチ?」


淫らなオンナって意味ですよ、俺はそう

解説しよーかとも思ったが口を噤んだ。


マヒロの家の使用人、を前にして

マヒロの悪口を言うのはまずい。

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