第5話 閑話 店員たちのひそひそ話

 アウトレットモールの洋食レストラン。


 このアウトレットモール自体、開業した当時ならともかく、最近はお客さんもかなり減った。

 そして、アウトレットモールに来た客も、もっとコストパフォーマンとのよいフードコートに行ってしまう。

 それはそうだろう。アウトレットモールにみんなが求めるものはコストパフォーマンスなのだ。


 だから平日のこんなおしゃれな洋食レストランは、お客さんが少なくてガラガラである。


 今も、お客さんは一組だけ。



 その一組・・・男性2名と女性2名の4名。注文をしたあと、楽しげに談笑している。



 水を出した明美に、注文を聞いてきた麻美がヒソヒソと話し始めた。

「ねえねえ、あのお客さん達って変わった組み合わせね」

「家族連れ? 男性二人は親子として・・女性二人は・・・どういう関係かしらね」


 30代後半と思われる男性と、高校生くらいのの青年。

 それぞれの隣に座っている女性は20代のよう。おそらくは20代中盤くらい。


 不思議な組み合わせの年齢構成だ。


「実はお父さんが若作りで、娘二人と息子ってところかしら」

「え〜、そこまで年齢が上には見えないなぁ。お父さんと息子と娘・・それと再婚した若い奥さん・・とかね」

「なるほど・・あの、派手な方が奥さんね」

「意外と、あっちのおとなしそうな方かもよ。隣りに座っているし」


 暇なので、ヒソヒソとうわさ話をしていたら、店長に怒られた。


「こら、お客さんのことを詮索するんじゃない。聞かれたらどうするんだ」

 怒ったと言っても、小さな声でである。



 すると、全く懲りていない麻美が店長に聞いた。

「・・ちなみに店長は、あのお客さんの関係ってどう思います?」


 すると、店長はこともなげに言った。


「どう見ても2組のカップルじゃないか。くだらないことを言っていないで仕事をしろ」


”え〜、それはないわあ”

”店長、見る目ない。流石にそれは無理あるわあ”


 麻美と明美は心のなかで思った。



 ちなみに、店長が正解である。

 ちらっと見ただけで真実を見抜く。さすが経験値が違う。

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