美形親子は変なところがそっくりさん!


 高野たかののおかげで吹っ切れた俺は、久々にアヤカに行こうとウキウキと放課後を迎えた。


 とはいえ、最近あんまり食べてなかったし揚げ物は控えた方が良いかも。お野菜中心の商品を、おじいちゃんズにオススメしてもらおう。


 学校を出ると、俺は来名ぐるめ町にある『お惣菜アヤカ』に向かって意気揚々と駆けた。


 空腹のせいであんまり力は出なかったけど、体重が減った分、足は軽い。うーん、プラマイゼロって感じだな。



「こんにちはー、お久しぶりでーす!」



 元気に挨拶して入口から顔を出すと、おじいちゃんズが押し寄せてきた。



「おおー、みなみくんじゃー!」


「久々じゃないか! どうして来てくれなかったんじゃー!」


「もう来ないのかと思って寂しがっとったぞ! いや、ワシじゃなくてこいつらがな!?」


「あっ……ハイ、皆様お元気で何よりっす……」



 想像以上の熱烈な歓迎に、俺はたじたじになった。


 だっておじいちゃん達、涙目にまでなってたからさ……こんなに心配されてるなんて思わなかったよ。嬉しいやら申し訳ないやらだ。



「南くん!? 来てくれたのね!」



 さらにはアヤカさんまで飛び出してきて、抱きつかんばかりの勢いで俺に掴みかかった。



「あ、アヤカさん、ご無沙汰してます……」


「いいのよいいのよ! それよりしばらく見ない間に、痩せたんじゃない? ちゃんと食べてたの?」



 息がかかるほど近くに、アヤカさんの美人フェイスが迫る。


 だーかーらー、近い近い近いって! 北大路きたおおじといい、フルハイビジョン対応な美肌から距離感無視なとこまで本当に親子そっくりだよな!!



「あの……テスト勉強とか、忙しくて、ちょっと、体調を崩してた、と言いますか、その……」



 しどろもどろに言い訳すると、アヤカさんはいきなりダッシュで厨房に走っていった。そしてすぐダッシュで戻ってくる。



「ほらこれ、食べて!」



 胸元に押し付けられたのは、これでもかとばかりにお惣菜が詰められた二つの袋。



「えっ、いやでもこれって……」



 このお惣菜大盛り詰め合わせ袋は、何度か見たことがある。アヤカさんが息子の晩御飯用にと、予め作って持ち帰らせていたものだ。



「ここはイートインスペースがないから、私の家で食べてくれるかしら? 鍵の場所は知ってるわよね? 余ったらそのまま置いておいて。どうせトワが片付けるわ」



 あんたの息子は残飯処理機ですか……。


 いやいや、それよりもだよ。当たり前だけど、アヤカさんの家は北大路の家なんだぞ? 北大路とはあれから全く口をきいてないし、鉢合わせたら気まずさ炸裂だって!


 何とか断らねばと口を開いた瞬間、盛大に俺の腹が鳴った。


 あああ……俺の腹のバカバカ! 今は黙っててくれよ! お断りしようにも説得力なくなるだろー!


 顔を真っ赤にして俯いている俺の肩を、アヤカさんが優しく叩いた。



「気にしなくていいのよ。トワは最近、いろんな人と出かけてるみたいでここに取りに来ることも少ないから、持っていってくれると私も助かるの。詳しく知らないけれど、南くんがあの子に教えてくれたんでしょう? 『閉じこもってないで、いろんな人と接して自分に自信をつけろ』って」



 アヤカさんの笑顔を見つめたまま、俺は呆然とした。



 北大路が急に皆と仲良くし始めたのは、俺が言ったから……?

 自分に自信をつけろって、俺の言葉を遂行しようとして……?



 アヤカさんとおじいちゃんズにお礼とお詫びの言葉を告げると、俺は両腕にお惣菜の入った袋を下げて北大路の家に向かった。


 北大路に謝らなきゃ。


 俺、ひどいことをしたしひどいことを言った。北大路はちゃんと友達でいてくれた。友達として俺のこと思ってくれてた。なのに俺は北大路を独り占めしたいなんて自己中心的な気持ちで、あいつを傷付けた。


 また友達に戻りたいなんて虫のいいことは言わない。でも、謝りたい。謝って、お前は何も悪くないって伝えたい。


 できるなら、好きだって……友達としてって前置きがなきゃ言えないけど、それでもいいから、想いを伝えたい!

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