第5話 その後

 木造の喫茶店の中はコーヒー豆を挽いた香ばしい香りが漂う。


 俺とアリシアが出会った喫茶店『黄昏』。このレトロで独特な雰囲気を持つ喫茶店の中で二人は談笑していた。


「あの時は本当に死ぬかと思ったわ」


「あのくらいで情けないわね、男でしょ」


「お前もびびってたろうが」


 あの古代遺跡の探索から時が経つのが早いことにもう一ヵ月が経っていた。あの後、古代兵器が俺たちのことを追って来ることはなかった。タイラントワームの群れにやられたのか今だに戦っているかのどっちかだ。

 古代遺跡を発見した功績でアリシアは高位の冒険者になれたそうだ。俺のも報酬を半分分け与えてくれた。それこそ一生遊んで暮らせるだけの金額を。

 今大量の冒険者を調査に向かわせるため、腕利きの冒険者を集めているらしい。なんでも軍隊も派遣するそうだ。古代文明の超技術が手に入るとなれば国も躍起になってくるだろう。

 まあ、俺は遺跡の謎が解ければそれでいい。というか俺が持ち帰った古代遺跡の中にあったものから恩恵で過去の記憶を見たところまだ見つかっていない古代遺跡が沢山あることが分かった。


 何故そこまで古代遺跡を作ったのかは定かではないがまだまだ解明されていない謎が沢山あるのは良いことだ。その沢山の謎を解明してくのが俺の仕事だからな。


「まあ、それだけの遺跡があるなら今後、冒険者になる人は増えてきそうね」


「そうだろうな、今回俺たちがみんなに夢を与えちまったからな。古代遺跡を見つけさえすれば一生遊んで暮らせるって国中で大騒ぎしてるよ」


 こうした他愛のない話をしていると頼んでいたコーヒーが届いた。二つも。


「あれ、お前も頼んだの?」


「そうよ、頼んじゃ悪い?」


「いや、コーヒー飲んでるイメージなかったからさ」


「レイトに合わせただけよ。ほら私たちあれだけの偉業を成し遂げたのにまだ祝杯もしてないじゃない」


「祝杯ってコーヒーで?」


 確かにあの後、アリシアは疲労で倒れ俺も古代遺跡を発見したことでいろんな偉い人と会ってたからアリシアと会う時間がなくこうして初めてあった場所で一ヵ月後の再開となってしまった。

 まだ祝杯をしてないからここでしようという事なのだろうが別の店にすればよかったんじゃないかと思う。


「いいから、ほら、カップ出しなさい」


 言われるがままにコーヒーカップを前に出し、喫茶店の中にキィンというカップの合わさる音が鳴る。

 

 マナー的にどうなのかはひとまずおいといて本人が嬉しそうだしいいか。これから数々の冒険を繰り広げるであろうパートナーとの交流は大事にしておかないとな。


 二人はコーヒーを一口飲み余韻に浸る。


「にがっ!」


「だから何でコーヒーで祝杯しようと思ったんだよ」


 どうやらアリシアはコーヒーは飲めないらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

考古学者は古代文明に夢を見る 千手 幸村 @kaizin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ