考古学者は古代文明に夢を見る

千手 幸村

第1話 考古学者と冒険者

 木造の喫茶店の中はコーヒー豆を挽いた香ばしい香りが漂う。

 コーヒーの匂いも好きだがこの昔からある喫茶店のレトロで独特な雰囲気も好きだ。


 王都の隅っこにこっそりと昔からある喫茶店『黄昏』では考古学者である俺、レイト・カーターと冒険者でるアリシア・フォールドが対面に座り、会話していた。


 話の内容はこうだ。王都からうんと北へ行った所にある砂漠地帯で古代の遺品が見つかったそうだ。そしてその場所には古代遺跡もあるかもしれないと言うことで砂漠地帯では大捜索が行われており、アリシアも一度行ったらしい。でも、まだ誰も手掛かりを見つけられていないそうだ。それで古代の研究を行なっている考古学者の俺に意見を聞きたいというわけだ。


「まあ、考えられるとすれば跡形もなく消えたか、地中の中だろうな」


「跡形もなくなってるかもなのはわかるけど、地中の中って?」


「古代の地形が現代の地形と同じとは限らない。地盤沈下や火山の噴火なんかで古代遺跡が地中の中に潜っていたりする」


「へぇー、そうなんだ。やっぱり専門家に聞きに来て正解だったよ」


 意見に関心したように頷くアリシア。


「でも、もし地中にあるとすれば壊れたしまっているかもしれないわね」


「なんでだ?」


「北の砂漠地帯にはタイラントワームっていう全長五メートルくらいある怪物が砂の中に生息しているだけどそいつらが砂の中で動き回っているのよ」


 なるほどな。確かにそんな怪物がいたら壊れていてもおかしくはないな。


「他にも北の砂漠地帯にはいろんな魔物が生息しているから私たち冒険者みたいなある程度の戦闘力がないとそもそも捜索もできない所なのよね」


 そもそも何故あるかもわからない遺跡のためにそこまで危険を承知で探索に向かう者がいるかというと古代文明は今よりも発展した科学力があったからだ。

 古代文明の遺物である『オーパーツ』と呼ばれる物はまさしく魔法のような力を秘めている。今の科学力では解明できない技術力でできているため相当な価値がする。

 オーパーツの量産化に成功でもすればそれだけで何代も遊んで暮らせるだけの金が手に入るほどだ。

 その『オーパーツ』がたくさん眠っている古代遺跡を見つければ一攫千金。冒険者のような人たちは命懸けの仕事など慣れたものであるし、その上まだ発見されてない古代遺跡を発見した功績とオーパーツが手に入るとなれば命懸けの探索にも納得がいく。


「それでなんだけど専門家であるあなたにも一回現地について来て見てほしいのよ」


 急な提案を受けた俺はしばらく考える。


 確かに興味がないわけではない。考古学者として何故、現代よりも発展した科学力を持っていたのか。何故そこまで繁栄させた古代文明が滅びたのか。様々な歴史の謎を解き明かしたいから俺は考古学者となった。


「わかった、協力しよう。その代わり北の砂漠地帯での護衛は任せた」


「本当に?助かるわ。他にも声をかけたんだけど皆んな命が惜しくて行きたがらなかったからよかったわ」


 俺とアリシアは座りながらテーブル越しに握手を交わし北の砂漠を共に探索することになった。


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