美容室物語

卯野ましろ

第1話 なりたかった自分

「本当に良いんですね?」

「はい、お願いします」


 ずっとなりたかった自分になりたくて、美容室へ行った。あれだけ変わりたいと願っていたのに、いざ自分を変えるとなると緊張する。でも、もう揺るぐものか。

 あとは待つだけ。

 じっと座って、変わりゆく自分を見守る。




 決意を固めてから、しばらくすると……。


「わあ……!」


 目の前にある鏡には、なりたかった自分の姿が映っていた。




 変わったあたしは、ご機嫌で帰宅した。


「ただいま!」

「おかえっ……」


 お母さんの言葉が途切れ、あたしの方にダダダと勢いよく向かってくる。


「っ……!」


 ぱしんっ!

 そのとき、あたしの左頬に痛みが走った。


「っ……!」


 あたしが真っ直ぐに向く前に、


「何その頭は!」


 見りゃ分かるでしょ、お母さん。


「あたし、変わったの」


 金色の髪を整えながら、あたしは言った。


「似合わないから、やめなさい!」

「やだ」


 もう、あたしは言いなりにならない。

 あたしは似合うと思うよ。

 みんなダメと言っても、あたしは良いよ。


「あたしが良いんだから、それで良いでしょ」

「良くない!」


 あたしの次には、目の前の人のヒステリックが暴走した。

 それでもあたしは。


「いーじゃん別に」

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