√4話 理科室

河森が思い出したように口を開いた。

「そーいえば、なんで理科室なの?」

思いがけない質問にドキッとしながらも

「……?どういうことですか?」

と、あくまでも平静を装う。

「いや、理科室以外にもサボれるスポット、何ヶ所かあるでしょ?」

図星すぎる…

「別に……特に深い意味は無いです。ここ、居心地がいいので、それだけです。」

無論、あなたに会いに来ました〜なんて、口が裂けても言えない。

「ふーん」

明らかに納得してないな、コイツ。

だからなのか、何か考え始めた。

そして、先生は

「あ、分かった。」

といった。

「何がですか」

「んー?松下さんが何故、ここに来たのか」

そんなこと考えてたのかよ。あんな真剣な顔して。

「で、どういう結論に至ったのですか?」

彼は自信満々に、

「松下さん。あなたが俺に会いに来た。という結論。」

またもや図星、ぐうの音も出ない。しかし、それを悟られるのはなんか、敗北感があって嫌だな。

「まさか、そんなわけないでしょう」

棒読みになったかもしれない。焦っていてそれどころでは無いのだけれど。

しかし、彼は、少し悲しそうな寂しそうな顔をして、

「ふーん」

と一言。


そして、世界はまた、静寂に包まれる。

聞こえるのは、もう帰り始めた、生徒たちの嬉々とした話し声。


何か話したい。梨花はそう思った。



悟ったように。

河森の方から話しかけてきた。

「そういえば、桜、綺麗に咲いたね。」


何気ない春らしい話題に、少し照れながらも、

「そうですね。お花見とか、したいですね」


河森と花見をする光景を脳裏で描きながらも、あくまで、遠回しに。


「しちゃう?お花見。」


その一言を待ち望んでいたはずなのに、本当に返ってくるとは思ってもみなかった。

驚きが隠せない。


幾度か瞬きをしたあと

「します、お花見!お弁当!作ってきます!」


その後、約束して、解散をした。あと2日が待ち遠しい。

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あと7分間はキミを待つ @naniwazunouta

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