わがままなお姫様

ちとせ そら

わがままなお姫様

わがままなお姫様



これは、ある王国の少々わがままな一人の姫の物語。


ここは、一つの大きな国。そこの国には、一人のお姫様がいました。


昔から少々わがままな姫は、度々一人の庶民に救われてきました。


その都度姫は、その一般人に恋心を抱いていったのです。


そんなある日、姫のお父さんであるこの国の王様は、王室に姫を呼びこう言ったのです。


「あなたはもうすぐで立派な大人となり、れっきとした姫となる。それでだ、これを機に三日後のあなたの誕生日に、隣の国の王子様とあなたの、結婚式を開くことにする。」


これを聞いた姫は、怒りを体全体で感じ、こう怒鳴りました。


「私はその結婚式に反対です! 私は絶対にその王子とは結婚しません!」


その後姫は、高いヒールをコツコツと鳴らせては、勢いよく扉を開けて王室を去っていきました。


その日の夜、姫は決心しました。愛しいあの人に会いに行こうと。


しかし、時期は姫の誕生日間際に迫っていることもあり、街の警備は普段よりも頑丈になっているため、街を出歩くことすら困難になっていました。


しかし、そんなもの姫には関係ありませんでした。


姫は無我夢中になり、今すぐ会いに行こう、そう試みました。


その道中、姫は一人の城の兵士に見つかってしまいました。


「姫よ、こんなところで何をしておられるのです。早くお部屋にお戻り下さい。」


しかし、その兵士は姫が幼い頃からの顔見知りで、それを逆手に姫はこう言いました。


「あなたなら理解してくれるはずだわ。私はあの人に会いたいの。」


姫はその兵士に言葉で、そして目で語りました。


姫の気持ちが伝わったのでしょうか。兵士は相槌を打ち、姫を城外へと誘導しました。


「姫、ここからは一人になってしまいますが、どうかお気をつけて下さい。」


姫は履きなれないヒールのない靴で、逃げるように街の中へと消えて行きました。


街の中、あの人の家まであともう少しのところで、後ろから声をかけられました。


姫は意を決して後ろを振り返りました。


しかし、そこにいたのは幼い頃よく行っていた魚屋のおばさんでした。


姫はそれを逆手にこう言いました。


「おばさんなら理解してくれるはずだわ。私は今、あの人に会いたいの。」


姫はおばさんに言葉で、そして目で語りました。


姫の気持ちが伝わったのでしょうか。


おばさんは姫の手を握り、街中にいる兵士の隙をついて、姫をあの人の家の前まで誘導しました。


「姫ちゃん、ここからはあなた一人だけよ。……時間がないから、その気持ち、伝えなさい。」


おばさんは姫の背中をトンっと叩き、姫に力を与えました。


その後おばさんは街の中へと姿を消し、姫は一人になりました。


支える人がいなくなると、こんなにも孤独を感じるのかと姫は思いました。


しかし、姫は「目の前にはあの愛しき人がいる。」と、ようやく会えるという気持ちを高ぶらせ、緊張しながらも、家のドアを二回ノックしました。


するとドアの向こうから出てきたのは、少々痩せ細った、あの人でした。


月の光が照らす暗く静かな部屋で、姫は熱心にこう言いました。


「あなたと会うために、私は様々な人に迷惑をかけてきました。兵士さん、魚屋のおばさん、そして父。私は王子とは結婚したくないのです。あなたと結婚したいのです。」


姫の熱心な心に、反対する気持ちなど、湧いてくるはずがないでしょう。愛しき人はこう言いました。


「あなたはわがままだ。それまでして、庶民の私に会いに来るなんて。私の完敗です。あなたの気持ちに応えます。ですが。」


愛しき人は、顔を暗くしてこう言うのです。


「私は生まれながらにして、不治の病を持っています。」


しかし姫は、こんなことには動揺せず。


「私の気持ちに応えてくれるだけで、私は幸せです。」


後日、姫はたくさんの人に謝りました。そして姫は、王子様との結婚に猛反対し、父は酷く呆れ、姫と愛しき人を誰もいない森に追放しました。


愛しき人はある日こう言いました。


「生まれ変わっても、あなたを愛し続けます」


愛しき人は、愛された人の腕の中で永遠の愛を誓いました。


そして、時は静かに流れ過ぎ、森は一人の道を解いたとさ。



これは、ある王国のわがままな一人の姫と、愛を誓った物語。


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