【二回目・僕】その二

 ひとしきり泣くと、涙は止まった。

 泣いたお陰なのであろうか。僕の頭は、かなりクリアーな状態になっていた。


「……もう、終わりにしよう」

 誰ともなしに静かに呟いた。

──僕は決意した。


 クローゼットからプレゼントボックスを取り出す。

 リボンが付いて見た目には可愛らしい代物──。そんな可愛らしさに隠して、この中には恐ろしいものが入れられてあった。

 綺麗に包みを剥がし、蓋を開ける。

 中から出てきたのは──爆弾だ。


「この爆弾を爆発させて……全てを終わりにしよう。僕も、お前も……もう終わりだ!」

──カチッ!

 爆弾の本体についているスイッチを押す。


──すると機械的な音声でアナウンスが流れた。

『起爆スイッチが押されました。十五分後に爆発致します』


「……ふふっ!」

 この爆弾は時限式で直ぐには爆発しない。時が来るのを待つばかりである。


 僕は爆弾をプレゼントボックスの中に、戻すと蓋を閉じた。丁寧に包装紙を戻し、再びリボンを巻く。


 十五分後に全ては灰と化すのだ──。

 全てがこれで終わる──。

 そう思うと、どっと疲れが込み上げてきた。

 次第に、瞼がどんどん重くなっていった。


 僕は──。

 家の中を塞いであることから分かる通り、僕はこの家と心中するつもりであった。

 端から、自分は此処から逃げようなんて気はさらさらなかった。

 何故だ──?

 頭に浮かんだ疑問符が、自然と払拭させられた。まるで、それを考えないようにと仕向けられているかのようだ。

 外に逃げれば良いんじゃないか──誰かに助けを求めれば良いんじゃないか──。

 そんな僕の考えは忘却され、気付けば他のことに思いを馳せていた。


──死ぬ時は苦しいんだろうか?

──爆発に巻き込まれると痛いんだろうか?

 ならば、せめて苦しみや痛みを感じないように、その時が来るまで安らかに眠ることにしよう。


 僕は眠気に逆らわず、仮眠を取ることにした。

 その場に横になり、目を閉じた。


──これで、全てが終わるんだ。


 そして──目を瞑っている間に僕は、深い眠りの中へと落ちていったのであった。

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