第45話 開戦

 翌日悠貴は、魔王やバルバ達と共に、魔王城内の作戦司令室として使っている部屋に居た。


「先程、斥侯部隊から王国と冒険者の連合軍を発見したとの情報が入った。場所は魔王領最南端の村、セタンから程近い平原。ロゼ王国に一番近い村、ケルビの2つだ。平原の方が約1000人、ケルビの方が約500人。勇者は平原の方で確認されている。攻め込む場所に関してはシュリからの情報通りだ。襲撃予定地の周辺にある村や町にいる兵士達に引き続き警戒を怠るな、敵を発見次第随時連絡しろと各々伝えてくれ」

「「「はっ!了解いたしました!」」」

「勇者迎撃部隊はもう揃ってるのか?」

「あぁ、我以外はもう南門前に集合している。直ぐに出発した方が良いか?」

「頼む。そういや忘れるところだった。コイツを持っていってくれバルバ」


 悠貴はバルバに水色の液体が入った小さな瓶を手渡した。


「ユキ殿、これは?」

「万が一の時為に用意したエリクサーとかいうポーションだ。潜入してた時に資料を見つけてな、念の為に作っておいた」

「流石ユキ殿、準備に抜け目が無いな…… それで、これはあと何個あるのだ?」

「時間が無かったからな、3個だけだ。残りは俺と魔王が持っている」

「ならば安心だ。では、我も行くとしよう。魔王様行って参ります」

「うむ。必ず生き残るのだぞ」


 バルバは転移トランスを唱え、その場を後にした。


「さて、どう攻めてくるか…」





「そうか、こっちも動く。何かあれば連絡してくれ」


 勇者達の居る場所へ出立したバルバから連絡を受けたは、アルゴ、ファニス、レガレスの3人を連れて行動を開始する。行先はバルバ達を同じ場所ではなく、『ケルビ』だ。


「ユキ、俺達も動くのか?」

「あぁ、行先はケルビだ。」

「了解した。だが、ここからだとケルビまで行くには、かなりの時間が掛かるのではないのか?転移トランスで行くにもかなりの魔力が必要であるぞ」

「そうですそうです。でもユキさんの事だからなにかしらの対策はしているんですよね?」

「あぁ。バルバとディアナの協力の元、魔王領内のあちこちに転移地点トランスポイントを設置してきた。コイツを利用すれば、スムーズに魔王領内を移動出来る」

「ほぇ~、そいつは便利だな。で、どのくらいの数仕込んできたんだ?」

「100地点程だな。魔王とリース以外のグリオスの隊長達にも伝えたが、全地点把握しているのは俺とバルバだけだ」

「ひゃ、100地点!?」

「ユキのやる事に一々驚いてたら身が持たないぜレガレス」

「そ、そうなのか…」


 アルゴとレガレスがひそひそと話しているのを尻目に、今いる場所から一番近い転移地点トランスポイントへと走っていく。


「ユキさん、いきなり走らないで下さいよー!!」



 転移地点トランスポイントを経由して、ケルビへと着いた俺達。アルゴとレガレスの2人に村の中に居る軍へ、ロゼ王国軍の現在の位置情報の聞き込みを頼み、俺とファニスは索敵魔法で村周辺に敵が居ないか調べる。


「何か反応はあるか?」

「…………北東約15キロ程のところに人間と思しき反応が10ありますね。どうします?」

「こっちも南東に約10キロ程の場所で人間の反応を20感知した。2人が戻り次第殲滅に動くぞ」

「了解です!ところで、ユキさんのクラスメイトとやらは捕虜にするんですか?」

「出来るなら捕虜にするぞ。レイリスのやつが欲しがるだろうし、中には知識が豊富な奴もいるから、地球あっちの技術を取り入れることも出来るしな」

「なるほど。冒険者や兵士達は皆殺しでも構いませんよね?」

「それは好きにしてくれ」

「ありがとうございます!燃えてきました!!」


 それから10分程経つとアルゴとレガレスの2人が戻ってきた。


「どうだった?」

「俺の方は目ぼしい情報は無かったぜ」

「拙者の方はここより北東にある村の1つであるトナトで、先程戦闘が始まったというのを聞いたのである」

「トナトまでここからどのくらいだ?」

「約20キロ程の場所ですよユキさん」


 つまり、さっきファニスが感知したやつらはトナトへの援軍といったところか……

 異空間収納ボックスを唱え、異空間から地図を取り出し、地面に置く。

 そして、『トナト』の場所を割り出し、転移地点トランスポイントの場所を書き示す。いけるな……


「ユキ、行くのか?」

「あぁ。だが、トナトへ加勢に行くわけではない。さっき、ファニスがここから北東約15キロの場所にて敵反応を10人分感知した。そいつらを殲滅しに行く」

「了解だ。トナトへはまた転移地点トランスポイントを経由して行くのであるか?」

「そうだ。転移トランスしたら案内を任せるぞファニス」

「はい!お任せ下さい!でも、南東の方は問題無いんですか?」

「既に情報を送ってあるから問題ない。いくぞお前ら」




 悠貴達が『トナト』へ向かっている頃、勇者達を殲滅しに向かったバルバ達は転移地点トランスポイントを経由することで目的の場所へと辿り着いていた。


「ここだな」

「じゃが、敵の姿が見えんのう……」


 バルバ達が着いたのは、あたり一面が背の低い草花で覆われた広大な草原地帯であった。


「で、敵であるロゼ王国軍の連中はどの辺にいるのだ?」

「斥候からの情報によると、ここより北西へ1キロ程の場所に潜んでいるとのことだ」

「北西に1キロということは……あそこであるか。……ん?なんだあれは?」

「どうしたんじゃフォール?」

「何か来るのである!全員警戒!」


 フォールの言葉を聞いて一同はすぐさま魔法で防御結界を張る。

 同時にバルバ達の居た場所で凄まじい爆発が起きた。



「くっ!皆、大丈夫か!?」

「ワシ等は問題無いぞ。じゃが、一緒に来た部下の大半がやられたようじゃ」

「部下達を回復させたいが…そうは言ってられそうにないようだな」

「そのようであるな」


 爆発の煙が晴れると、そこには勇者、冒険者、ロゼ王国軍が勢揃いしていた。


「魔人族!これ以上この世界を好きにはさせないぞ!」

「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」


 勇者である不知火嘉音が1歩前へ出て、そう言い放つと同時にロゼ王国軍、冒険者達より雄叫びの声が上がった。

 それはロゼ王国と魔人族との戦争の始まりの合図であった。





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大変お久しぶりです。作者のユキモンでございます。

約1年の更新の停止、誠に申し訳ございませんでした。

言い訳等を近況ノートに書いておきますので、そちらも読んでおいていただければ幸いです。

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異世界と金剛(アダマンタイト)の鉄仮面 ユキモン @sumadezi

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