足下から

足下で聞こえる声

何だ、お前？

泣いてんのか？

あーあーもう、めんどくせーなぁー。

よそでやってくれよ。

ったく、かまってちゃんかよ。

ちょ、ちょちょ、やめろって、

わかった、わかったから、わかったよ。

や、ヤメテー。

それヤメテ～。

お願いします。

だから悪かったよ。

ハイハイごめんなさいね。

全く最近は直ぐ何ハラとか言いやがって、

変な言葉覚えんじゃないよ。

住みにくいったらありゃしない。

ハイハイ、ちゃんと反省してますよ。

で、なんだよ。どうしたんだよ。

ほら、早く言えよ。

なっ、いいだろ別に。

言い方が気に入らないって？……わ、わかったから。

それヤメテ～。

俺の身体で爪研がないで～。

で、どうしたんですか？

はっ？

いつも頭を押さえつけられてる？

たまに足蹴にされることもあるって？

お前こそ、はぁ⁉　だろ。

お前、俺を誰だと思ってんだよ。

お前、俺の姿ちゃんと見えてるかぁ？

そりゃお前、ただ撫でられてるだけじゃねぇか。

あしげって、そりゃお前、

立って作業してる時にすり寄って、

どかされただけじゃねぇか。

何言ってんだお前。

なにぃ？

冷たい床の上を歩く気持ちがわかるかだと？

バッカお前。マジばっか。

誰に言ってんだよ。

俺、足ふきマットだぞ。

そんなん普通だから。

寧ろ、絵的には床をなめてるっ感じだからな。

床に這いつくばってんが俺の普通だから。

そんなん、俺の存在意義だから。

なっ⁉　やめろよ。そうやって殊勝に謝んなよ。

だからやめろって！

あのなぁ。

いいか？

お父さんの納豆くさい足も、

お母さんの水虫の足も、

意外とくさいおねぇちゃんの足も、

思春期の弟君のくさい足も、

どれも、みんな俺の家族なんだよ。

大事な家族の一部なんだよ。

セリフもくさいだぁ？

ま、まぁ兎に角な。

愛してんのによ。

その家族の一部だけ愛さないなんてことあるかよ。

人間じゃあるまいしさ。

ったくバカヤロウだぜ。

お前だって家族なんだからな。

だから、自分で涙を拭って、

俺で、足を拭いてけよ。

だから、俺で爪を研ぐんじゃねぇーよっ！