第9話 孤軍奮闘



カザコの元へ向かう俺達。その前に大量のシザーデスの軍団が現れた。



「来い!無双龍-キルザーク」ポンッ

手にしたカードをガントレットの上に置く。


「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️ー!」

シザー・デス10匹分の大きさを持つ巨大が目の前に現れる。その輝きはいつまでも見れるくらいだ。


「キルザーク。奴らの相手を頼む。」


「⬛️⬛️⬛️!」

咆哮に呼応するよう、シザー・デス達が一直線に向かっていく。そのおかげで道が開けた。


「オルカマン。ここは俺に任せてくれ。」


「それはできない。君が心配だ。」


「気にすんな。あんた、あいつとの因縁があるんだろ?早めにケリつけた方がいいと思うぜ。」


「…そうか。そちらは頼んだぞ」

オルカマンは、真っ直ぐにカザコの元へ旅立った。


バトマにおける相棒のATKは2400。シザー・デスは1500。各個撃破すれば難なく倒せるだろう。


「⬛️⬛️⬛️⬛️〜!」ゴオオ

キルザークの咆哮で吹き飛ぶ軍団。だが、数が多すぎる。ついに、間合いを詰められてしまった。


「カニカニ!」ザンッ

その爪がキルザークの身体に突き刺さる。

迂闊だった。3体同時相手でもキルザークの方が押されている。説明は基本負けフラグ…バトリストの基本をすっかり忘れていた俺が本当に情けない。

だが、二つ疑問が浮かんだ。

「キラー・デスの力だけでキルザークを倒せるか?」

答えはノーだ。バトマのルールではパワーの高い相手には自力で勝てないのだ。

そこから考えられるのは、「キラー・デスは何者かの強化を受けている」と言うことだ。つまり、そいつを倒せば弱体化し、簡単に倒せるだろう。

もう一つの疑問は狂王についてだ。

アニメ「バトルマスターズXX」での情報だが、奴は常に『三神』と呼ばれる部下を従えていた。

漆黒海の闘神-オウガ 漆黒海の武神-ゼイヴ 漆黒海の護神-ベルガ

オウガ=オルカマンなので外すとして、後の2人は隠れて彼に付いている可能性が高い。仮にいるとしたら苦戦を強いられるだろう。

待てよ。中に他のクリーチャーを強化する能力を持ったものがいる。謎は繋がった。

(頼む。応えてくれ!)

俺はガントレットに強く念じる。

ピカーン!

それに応えるように光が放たれる。


「ドロー!」


「俺は魔法カード『地割れ』を発動!攻撃力が一番高いクリーチャーを破壊するぜ」

ズドーン!

発動と共にシザー・デスから離れた場所の地面がめり込む。よし、読みは当たったみたいだ。


「⬛️⬛️⬛️!」ズバァ!

キルザークの一撃で軍団が蹴散らされていく。強化が無くなっているのが一目で分かった。


「ケガッ」ドサッ! 「タラバ…」ドサッ


「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️!」

戦場に散らばるボイルされた蟹の身。その中心で相棒は雄叫びを上げた。


「やったぜ!」

俺は相棒に合わせてガッツポーズをした。


ボコォ

喜んだのも束の間。唐突に地割れを起こした場所が盛り上がる。

「今の攻撃…効きましたね。一度やられてしまいました。」

現れたのは白い肌に光を放つほどのハゲ頭を持つ男。『地割れ』を食らったのに何事もないように振る舞っている。

「挨拶が遅れました。私はベルガといいます。公には『漆黒海の守神』と呼ばれているようですが、好きに呼んで構いませんよ。」


「俺の名は遊導 勝。単刀直入に聞くけど、あんたらの目的はなんだ?」


「目的は言えませんが、手段ならお教えしましょう。この都市を制圧し我々の活動拠点にしたいのです。」


「長え!『侵略』の二文字で済むだろ!」

回りくどい説明と内容にが合わさり、俺の神経が限界まで強張った。


「俺はな、『奪う』事がこの世で一番嫌いなんだ。アンティルール、鮫トレ、それに借りパク……ああ!思い返すだけで、

はらわたが煮え繰り返ってきたぜ…」


「落ち着いて下さい。我々はあなた方を一時的に拘束するだけです。他に危害は加えませんよ。」


「はぁ?十分に危害加えてるじゃねえか!周り見てわかんねえのかよ?」

「まあいい、どうせ分からねえって言うだろうしな。てめぇは此処でブッ飛ばす!」


「そうですか。あなたとは分かり合えないようですね。お覚悟を。」


ズモモモモ…

ベルガの背後に巨大な影が現れた。


「な、なんだと…」


「黒海を割り、黒河を砕き、黒山の頂きに君臨せよ。ゆきなさい、『タイラントキングサーモン』!」


それはキルザークを超える図体を持ち、鱗から黒い輝きを放っている。


俺は思いもしなかった。ただの『鮭』相手にこんなにも絶望を感じるとは。

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