第4話 カタパルト・フロッグ

「マサル。本当に行ってしまうのか?」


「俺、決めたんだ。この世界のクリーチャーを全て倒すってな。」

(それに、消えた俺のコレクションの行方を探したいしな。)

セキチクの襲撃の翌日、俺はトレカおじさん含め近所の人たちに別れを告げていた。


「引きこもりのお前が旅に出ることにワシは反対したい。じゃが、ワシはお前の目を見たとき確信した。お前なら成し遂げられるとな。」


「ありがとうトレカおじさん。それじゃ行ってくる。」


「行ってこい。ワシはいつまでも待ってるぞ。」


そうして俺は生家を旅立った。


街道に出るとトレカ達が出迎えてくれた。


「別れを済ませたのですね。待っていました。」


「ああ。少し寂しいけどな。」

「トレカ、何か手がかりは掴めたか?」


「は、はい。私の力で探してみた所、この近くの都市で多数目撃されたみたいです。」

トレカはどこからか地図を出し、空中に広げてみせた。

「ここから北東に20kmにベルチアという都市があります。ここに向かいましょう!」


「20kmか…長い道のりになりそうだな。」


「安心して下さい!女神ですので!」

トレカは足元に魔法陣を展開した。魔法で俺達をワープさせるようだ。

「これでひとっ飛びです!えいっ」シン……

しかし魔法陣はぴくりとも動かない。

「えいっ、えいっ…えいっ……」

何度やっても魔法陣に変化は無かった。

「だめみたいです…すみません。」


「落ち込むなよ。村に戻って馬車でも借りようか」


パァァァ

唐突にガントレットが輝く。カードが俺を呼んでいるのか?呼び掛けられたのなら答えるしかない。俺はカードを引いた。


「ドロー!」

光がカードの形を取り、手札に加わる。


カードを見た俺は理解した。

この効果ならベルチアまで移動できる。

きっとガントレットが僕らが困ってるのを理解して出してくれたのだろう。

俺はカードをガントレットに置き、叫んだ。


「これが力(パワー)だ。カタパルト・フロッグを召喚!」


射出機を背負った大きなカエルが現れた。

『カタパルト・フロッグ』

こいつの効果は自分の他のクリーチャーを墓地に送り、その攻撃力の半分の数値のダメージを相手に与えるというものだ。一見リターンが見合っていないように見えるが…


「ダメージを与える効果に回数制限が無く、弾さえあれば無限に効果を発動できる永久機関みたいなクリーチャーですね。当然、対戦環境で暴れ過ぎてサポートカード共々禁止になったようですが。」


俺が考えていた事をトレカが言ってしまった。物覚えが良すぎて恐怖すら感じる。


「少年、このカエルに乗って目的地に向かうのか?少々乗りづらそうだが」


オルカマンが不満そうに質問してきた。

彼は体が大きいので乗るには小さいと思ったのだろう。


「今に分かるさ。」

そこで、彼にはちょっとしたサプライズを実行しようと思う。


「カタパルト・フロッグの効果発動!オルカマンを装填(セット)」

「ゲコォ」ぱしゅ

「な、何をする!」

舌でオルカマンを捕まえ背中の射出機に押し込んだ。


「照準よし。場所はベルチア市内だ!」


カエルは指示に従い、ベルチアの方を向いた。


「まっ、待ってくれ。これはもしかしなくても…発射されるのだろう?」

オルカマンは恐怖で震えていた。


「そうだぜ!片道切符の空の旅。楽しんでいけよ!」

俺はカエルに合図を送った。

「オルカマン、射出!」


「ゲコォ!」ドーン


「ぬわぁぁぁ!」キラーン

オルカマンは白昼に輝く星になった。


「よし!行けそうだな」グッ!

俺は拳を握りしめた。


「勝さん…何してるんですか?」

トレカは激怒した。


「カタパルト・フロッグの効果を試しただけだ。俺たちもアレを使ってオルカマンの後を追うからな。」


「…冗談…ですよね?」


「本気だ。カタパルト・フロッグの効果発動。トレカ、射出!」


「ゲコォ」ドーン


「キャァァ!」

絶叫と共にトレカも星になる。


「俺、射出!」ドーン


カエルの鳴き声と共に俺は星になった。


〜落下地点〜


「きゃぁぁ!」

少女の悲鳴が上がる。


裏路地の水路に蟹型のクリーチャーが一体。彼は『この都市を真っ青に染める』という大きな野望を持っていた。


(カッ…この地は私、シザー・デスによって地獄へと変わる)


求めるは制圧。その一歩を今踏みしめようとしていた。


ギュイーン!


だが、現実は非情である。空から3つの流星が降ってきたのだ。不幸なことに彼はその存在に気付いていない。


ズドーン!ズドーン!ズドーン!

「カニャァァ!」


水路に断末魔が虚しく響く。地面を真っ青に染めた体液がその惨状を静かに物語った。

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