第4話 魔法と魔術と魔力量

ミーティングの内容は今月の部隊活動の確認と、明後日に迫った学園部隊戦の話し合いだった。

部隊活動というのは月ごとに各部隊に与えられる仕事であり、今月の第18部隊に任された仕事は学園の警備であった。警備には第18部隊以外に第13部隊、第11部隊も任されている。

ミーティング前に猫宮が確認してきたそうだ。できた後輩だなと思いながらも、マコトは自分もしっかりしないと思う。というかそもそもこういう仕事は部隊長がやる筈なのだが。

「私たちの部隊は夜間警備に回りますので、寝泊まりの準備等よろしくお願いします」

夜間警備は夜の10時、学園が閉まるまで住まい続く故、学園から遠い学生は交通の不便上、部室に寝泊まる者少なくない。マコトは近くの学園寮で暮らしているのでその必要はない……のだが、

「それじゃ後輩の手作りごはんが食べられるな」

「ほんとおー、マコトのごはんおいしいよねー」

「……楽しみにしてます」

珍しくこの三人が意見を合わせて高評価する、その標的はマコトの料理だ。

マコトは小さいころから料理に手を付けて、約十年。その腕は本人の器用さも影響し、一流シェフ並みのものであった。

「……わかったよ、作りゃーいいんでしょ」

どうやら以前部室で昼飯を皆に作った際に気に入られたみたいだ。三人の羨望の視線に負け、本来作る気が無かったマコトは渋々了解する。その表情のどこかで誰かに必要とされていることへのうれしさが湧いているのを本人は知らない。

「コホン、それでは話を戻します。次の議題は部隊戦の件です」

部隊戦。議題に出てきたその祭事の名前はマコトにとって嫌気が差すものだった。学園の月に一回ほど開かれる部隊戦とは、学園に在する全32部隊の各々が腕を磨くための模擬戦である。その評価により今後の部隊に任される仕事や待遇などが上下する。そして当の第18部隊はこれまで開かれてきたほとんどの部隊戦で戦果をあげることができなかった。そしてそれをマコトは自分の所為だと思っていた。

その理由はマコトの魔法と魔力不足にあった。

ここで魔法と魔術、魔力の話をしておこう。

この世界の人間には一定量の魔力という、生命力と似た不可視で万能な力が宿っている。魔力は人により特色や量が決まっており、それらに見合った魔術を習得することができる。ある人は魔力が多く、炎系と水系の魔力が宿っており、魔術の属性もそれに適したものがつかえる。しかし、マコトは生まれつき魔力量が乏しく、その系統も無印であった。結果、魔術を使えない身体である。

その事を本人もコンプレックスに思っており、周囲からも劣等生のように扱われていた。

そんな時、隊長の忍久保カエデに拾われたのはまた別の機会に話すとして、今度は魔法について述べよう。

魔法とは、万人に宿るものでは無く、奇跡のような確率で宿る才能のようなものだ。魔法は魔術と違い魔力や術式が必要のない先天性の能力である。

この魔道学院アストロンには、この魔術都市の各地から才能をもった者が集まるだけあって、魔法所有者が数多く存在する。

第18部隊長忍久保カエデもその一人で、彼女の持つ「忍者魔法」(本人曰く)も隠密や暗殺に特化した魔法である。

そして、マコトにも魔法は宿っていた。

その名も「反射魔法」は相手から食らった魔術を一度吸収し、反射させるという魔術戦で超有利的な魔法であった。だがしかし、反射魔法は他の魔法と違い特殊で、食らった魔力と同量の魔力を持ち合わせていないと使えないのだ。故に、魔力が枯渇しているマコトにとってその魔法は宝の持ち腐れと言わんばかりの代物だった。

「俺にもっと魔力があれば……」

ぼっそっと呟いたマコトの悔しさのこもった言葉に、事情を知っていたカエデと猫宮は何も言えないでいた。魔力量は生まれつき決まっており瞬間的に増加できることもあるがマコトのゼロに近い魔力量では、どれほどかさ増ししたところで一般人に及ばない。

そんな重い空気の中、メリッサはスッと挙手し、口を開いた。

「その件なんだけど、今回の模擬戦期待しといたほうがいいよー」そう言い、メリッサはマコトにウインクをする。



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ファントムメイデン 赤猪千兎(アカイノセント) @akainosento

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