第9話 [放課後デート②]
華織が小説を買い終わり、そのまま店を出た。
「それじゃ、読んだら感想聞かせて———……ってどうした……」
そのまま立ち去ろうとしたのだが、華織は私の服をつまみ、今にも泣きそうな顔をしていた。
「もう……帰っちゃうんですか……?」
「な、何……?」
「もう少し……いや、もっと一緒にいたい……です……」
華織……こんなにも悲しい顔をするなんて……。そんな顔されたら断れないじゃん……。
仕方ない、もう少し付き合ってやるか……。
「そういえば私、服屋にも寄りたかったんだ。付き合ってよ」
三つ編みをほどき、メガネを外して少し不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「つつつ、付き合………あ、ありがとうございますぅ………」
華織の顔は一瞬にして真っ赤になり、百合園の顔を直視できない状況であった。
「ほら、じゃあ行くよ」
「あ、あの! 服……掴んでていいですか……?」
「ダメ」
「え……——あっ」
私の服をつまんでいる華織の手を振りほどいた。だが代わりに華織の手を掴んで引っ張った。
「ほら、いこ?」
「あ、ぁぅ………」
百合園に引っ張られたことにより、互いの顔の距離がほぼゼロ距離だった。
そしてそれは華織には刺激が強すぎたようで、その場に座り込んでしまった。
「え? え!? だ、大丈夫!?」
「か………カッコ良すぎますぅ……」
私は座り込んだ華織をおんぶしてとりあえず近くのベンチまで移動することにした。
(な、何あれかっこよすぎない!?)
(私もあんな風にされたい……)
(女の私も惚れそう……ってか惚れた)
(抱いて欲しい)
「
(うぉ、なんだこの人……。てかさっきの人かっけぇ……)
その状況を目撃した人たちも心の中で悶えているのであった。
〜〜
「す、すみません……いきなり座り込んじゃって……」
私は華織を背中から下ろしてベンチに座らせた。
「大丈夫…? 気分悪いんだったらやっぱり帰った方が——」
「さぁさぁ行きましょう。元気百倍、増し増し大盛り、やる気の硬さはバリカタです!!」
華織は私に顔をずいっと近づけ、鼻息を荒くしながらそう言ってきた。
「そ、そう……ならよかったよ……。てかなんでラーメンの注文みたいなの…?」
元気が出たようなので私たちは服屋へ向かうことにした。
手を繋ぎながら……。
さっき安易に手をつないでしまった自分が悪いな……。慎むべし、慎むべし。
〜〜
服屋につき、私たちは多種多様な服を物色していた。
「姉貴! これ姉貴に似合いそうですよ!!」
「え……マジで言ってんの……?」
持ってきたのは黒と白を基調としており、ドレスがついてひらひらとしていたものだった。
俗に言う“ゴスロリ”である。
「一生のお願いです! 着てみてくださいっ!! なんなら土下座でもします!!」
「ちょ、やめろやめろ!! わかったから!」
こんなところで土下座されたらたまったもんじゃない。
仕方ないので着てやることにした。
「すみませーん、これ試着していいですか?」
華織が店員に声をかけていた。ゴスロリの服を見せながら。
「はぁい、いいですよ」
「さぁさぁ行きましょう、姉貴!!」
私は華織にグイグイと試着室まで押されていた。
「わったから押すな!!」
試着室に押し込まれてカーテンを閉められた。
なんで私がこれを着なければいけないのだ……。
〜〜
「着終わったよ……」
「ほ、本当ですか!? じゃあ開けますよ……」
カーテン越しからもゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
カーテンをシャッと開けて私の姿を見せた。
「うおおおお!! 姉貴最高です!! ヒャッハーー!!」
華織は鼻息を荒くしながらスマホでパシャパシャと写真を撮っていた。
「ば、馬鹿! 何勝手に撮ってんだ!!」
私は慌ててスマホを取り上げようとしたのだ、この服のせいであまり動けなくなっていた。
だが華織は何かに躓き、後ろに倒れかかっていた。
「へぁっ!?」
倒れそうになったところをお姫様抱っこをし、スマホを取り上げた。
「ちょっとおいたが過ぎてるよ」
私は華織の耳元でそう囁いた。
「はぅ……ご、ごめんなさぃぃ……」
顔を真っ赤にしたと思ったら両手で顔を隠してモジモジとし始めていた。
「あのぉ……」
「はっ!!」
店員さんがこちらをジッと見つめていた。
服を少し汚してしまった……。
「す、すいません!お金は払——」
「いいものを見させてもらいましたのでタダで差し上げます……!」
店員さんはいつのまにか恍惚とした表情でこちらを見ていた。
私は戸惑い、華織はモジモジし、店員さんは恍惚とした表情。
何このカオス空間。
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