1-2

 夜、俺はカノンに事情を聴くことになった。

 俺自身よくわからない事が多すぎるからだ・・・今回俺は最悪死んでいたしな。


「何から話せばいいかな・・・」

「全てだな。ほとんど状況がわからないから」

「全てか、ん~難しいな・・・」

 何が難しいのだろうか?そこまで難しい事は何も聞いていないはずなんだが、複雑すぎて難しいということなのだろうか。


 ピンポーン・・

「ん?こんな時間に誰だ」

 俺は誰が来たか確認するべく、扉を開けに行く。

 扉を開け、そこに立っていたのは・・・くわえたばこをしたおっさんだった。

「よ~久しぶりだな新。近くに来たから様子を見に来たぜ・・・って、お前俺の事忘れてやがるな。小さいころはよく面倒見てやったのに薄情なやつだ」


 ふと小さい頃の記憶が蘇る、今とあまり姿の変わらないこのおっさんと話をしている自分を。

「あ~仁さん?」

「お、よく思い出したな偉いぞ~」

 このおっさんは仁(じん)それ以外は知らん。

 俺に縁を大事にしろって教えたのもこのおっさんだ。


「それで?何しに来たんだ?」

「だからこの近くに用があったんだって、ちょっと人を探していてな」

 人探し・・・このおっさんもアレに関わってるのか?いや、それはないよな。


「新~まだか~?」

 カノンが焦れて部屋から出てきた。

「あぁちょっと待ってろ、久しぶりのおっさんが訪ねてきたんだよ」

「おい新、なんでカノンがここにいる?」

 俺はこんな焦ったおっさんを見たことがない。

「数日前に公園で拾ったんだよ」

「それだけか?・・・!?その指輪は!」

 俺の全身を観察し、指に嵌まっている指輪を見つけ腕を取ってきた。

 それをみたおっさんはカノンの方を向いた。


「おいこれはどういうことだカノン?」

「え?新にそれが適応した結果だと思うが」

「そうじゃない、なんでコイツがこれを嵌めてるかだ。一体何があった」

 やはりこのおっさんも色々と知ってる側の人間だったようだ。

 しかも、カノンと知り合いみたいだな。

「玄関でする話じゃないだろ。とりあえず中に入れ、お茶を入れてくる」

 おっさん、もとい仁を中に入れて先日の夜に起きた出来事を話すことになった。


「・・・そうか」

 全てを聞いたおっさんはため息を1つついた。

「俺もそれしか知らん。他の事、どうしてこうなったかとか、カノンの事とかを今から聴くところだったんだよ」

「そのタイミングで俺が来たわけか。説明は俺がしてやる、カノンはあまり説明の上手い子じゃないからな」

「失礼な!私にだってそれくらい出来るぞ!」

 おっさんの言葉に反抗しするカノンだが・・・


「いや、さっき説明できてなかったじゃん」

「う・・それはその・・・・うぅ」

 しゅんっとなってしまった。

「だろ?そうだな・・・簡単に言えばこれからお前は色々な奴らと戦うことになるだろう」

「それはこの指輪のせいか?」


 右手の人差し指に嵌まった指輪を見せる。

「あぁそれもあるが、お前にはある物を探し出し集めてもらうからだ」

「ある物?」

 仁は懐から瓶を取り出した。

 中には何かの欠片がはいってるようだが・・・


「これは全ての世界の核・・・の欠片だ。これを探してもらう」

「ほぉ、普通に嫌なんだが?めんどくさそうだし」

「悪いが拒否権は認めないぞ。その指輪は貴重品だからな、持ち主を遊ばせておくわけにはいかん」

「ちっ・・・学校はどうすんだよ」

「あん?んなもん辞めちまえ、お前別に友達とかいねぇだろ?」


 事実だった・・・

「流石に無理やり辞めさせるのはどうかと」

「いいんだよ。どうせコイツ授業とか絶対まともに受けてねぇしな」

 なんでわかるんだよ・・・・

「わかったよ。高校の授業とかやってもやらなくても同じだ、友達もいねぇしなぁ!」

「よし、手続きは俺がやっといてやるよ」

 それだけ言うと、仁はどこかに電話をかけだした。


「よかったのか?」

「あぁ俺は全てにおいて学校のトップだから問題ない」

「そうか・・なら改めて自己紹介だ。私はカノン、アメリカ出身でナイトだ。よろしくな」

「ナイト?」

「ナイトってのは個人の指輪の能力の通称みたいなものと思えばいい、ちなみにカノンは日本人とのハーフなんだぜ」


 電話の終えたジンが話に入ってくる。

「各指輪・・というかアクセサリーには適性があってな、アクセ1つ1つ違うんだよ。カノンのは指輪ではなくペンダントで防御型なんだ」

「これだな」

 カノンが胸元からペンダントを取り出す。

 盾に剣が収まってるチャームがそうだろうか。


「カノンのはまだ分かりやすいんだが・・・お前のはドクロに鎌のデザインの指輪て、今まで見た中で一番物騒だからな。まぁ色んなアクセがあるって事か」

 俺も自分の指輪を見て頷く。

 

「カノンの他にも仲間はいるが、それは必要に応じて紹介するわ」

「わかった。それで?俺は何をすればいい?」

「お前はカノンと共に、ある世界へと飛んでくれ」

「世界へ飛ぶ?」

 そういえばさっきの瓶の中身、“全ての世界の核”って言ってたっけ・・・全て、つまり今俺が立ってるこの世界とは別の世界があるという事か。

 どういうわけかその“核”とやらはいろんな世界へと散らばっていて、それを仁やカノン達は集めている。

 ということは、異なる世界へ行く方法があるという事になるな。


「大体理解した。どうやって飛ぶんだ?」

「流石、頭の回転速いな。異世界へはコイツで行く」

 仁は懐から手のひらサイズの機械を取り出した。

「スマホ?」

「その通り。使いやすくていいだろ?画面には行先と帰る場所、すなわちこの家だな、その二つを登録しておいた。後そのスマホには翻訳機能ついてるから、それ失くすと現地の人と会話できないわ、帰れないわでめんどくさくなるから絶対失くすなよ」

「了解です」

 

 それってさ、これが壊れても終わりってことだよな。

「ある程度の耐久はあるが、もし壊れたら壊れた場所の近くに潜んで待ってろ。回収しに行ってやるから」

 睨んでると、俺の言いたいことがわかったのか補足説明してくれた。

 そういう力を持ってる人もいるのか。


「今回のはそんなにヤバくねぇ世界のはずだから、一回で慣れてくれ。とは言ってもだ、命のやり取りをする可能性もあるから気は抜くなよ」

「あぁ、わかってる。昨日殺されかけたしな」

「おう。カノンも分かってるな?」

「大丈夫だ、ちゃんとわかってる」

 それを聞いて満足そうに頷くおっさん。

 だけど、ヤバくない世界の“はず”ってことはもしかしたらヤバい世界って事なんだよなぁ・・・


「目標はその世界にある“核の欠片“だ。近くにあることがわかったら、そのスマホに反応があるからそれを頼りに探してくれ。それと他にアクセを見つけたら持ち帰ってくれると助かる」

「手に負えない奴と出会ったら命大事にで行動するぞ」

「それでいい。絶対に死ぬな、最悪欠片やアクセを敵に渡してでも生き延びて帰ってこい!」


 俺は渡されたスマホを操作し、目的地を設定した。

「目的地が設定されました。転移する方は端末を持ってる人の一部を触ってください」

「なるほど、音声での確認があるのはわかりやすいな」

「腕を借りるぞ新」

 カノンが俺の腕を取る、転移した先で離れないためか結構しっかりと掴んでいた。


「転移開始5秒前・・・・・1・・転移開始します」

 シュンッ・・・

 仁の目の前から新とカノンが姿を消した。


「それじゃ、アイツらが帰ってくる前に俺もやることやるとするかね」

 そして仁も動き出す。

 このおっさんは一体なにをしようというのか・・・・それはまだ誰にもわからない。

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狂った世界を元に戻すための旅に出る 矢田 レイン @temowan

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