意外な本音を見つける事

 美月と黒瀬が、授業中に廊下を歩いてた……。


 夏海はその姿を見てから、授業に集中できなくなっていた。


 美月、顔が真っ青だった。

 何があったの?

 

 黒瀬と一緒なのが羨ましいと思いつつも、それ以上に美月の体調が気になって仕方がなかった時、授業は終わりを迎えた。



 あの顔色はやばいよね。

 きっと保健室にいるよね?

 そのまま帰っちゃったりしたかな?

 あー、もう、行ってみよう!


 夏海はもやもやした気持ちにケリをつけ、席を立とうとした。

 しかし、目の前に座る奈々が小さな声で話しかけてきた。


「ねぇ、夏海も見たよね。黒瀬と白石さん」

「見たけど、何?」

「白石さんさ、アレ、わざとなんじゃない?」

「はぁ?」


 奈々が可愛らしい顔を歪ませながら話しかけてきて、夏海は苛立った。


「あれ? 夏海、いいの? 白石さんってさ、黒瀬の事が好きなのに」

「なんで奈々がそれ、知ってるの?」

「えっ!? えーっとぉ、まぁ、聞いちゃったんだよねぇ」

「聞いたって、まさか……」


 夏海はこの前の美月とのやりとりを思い出し、血の気が引いた。


「大丈夫。誰にも言わないから。あとさ、白石さん、ちょっと目立ちすぎだよね」

「奈々、何言ってるの?」

「夏海はさ、口だけで動かないから、いいかなって思ってた。最近変わったのは、白石さんのせいでしょ? あの女、性格悪すぎない? 親友の好きな人と放課後2人っきりで勉強してるとか、ありえないし」


 勉強してたのは、美月が黒瀬に頼まれたからだし。

 私もその話を聞いた時は、変わってほしいと思うぐらい、羨ましかった。

 けどその時、私の事、たくさん話してくれてるのも知ってる。

 それなのに、他人にとやかく言われたくない。


 夏海は苛立ちが増し、目の前で話し続ける奈々に嫌悪感を募らせた。


「あんたに美月の事、悪く言われたくないんだけど」

「怒る相手、間違ってない? もしかしたら黒瀬、取られちゃうかもしれないんだよ?」

「別に、美月にならいいし」


 思わず口にした言葉に、夏海の方が驚いた。


「うっわ、そんな簡単に諦められるなら、最初から好きになんなきゃいいのに」


 奈々が信じられないものを見るような目つきで見てきたが、夏海は自分の言葉に動揺して返事をしなかった。


「使えないやつ」


 意味のわからない言葉を呟いて、奈々は前を向いた。

 けれどそんな言葉はどうでもよくて、夏海は自分の本音と向き合う事になった。


 美月ならいいって……。

 そりゃあ、知らない誰かと黒瀬が付き合うぐらいなら、美月がいい。

 美月はもしかして、私だから、黒瀬を諦めようとしてくれてたんじゃ……。


 本当なら保健室に行くはずだったのに、夏海は自分の新たな考えを知り、動けなくなってしまった。

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