2-2 北の都市へ2

オーロラは駆け出して行った。

重くないのだろうか。白銀の鎧をガチャガチャと鳴らし、軽くステップしながら先を歩いているエレノアに詰め寄ろうとする。

一瞬、ほんの一瞬だけドキッとしたが虚しさの方が余程強く、溜息を吐きながらその背中を見送る。


「教皇様ぁー。昨日のぉー…」


…が、その背中はエレノアに至る前に止まった。

と同時に一行の歩みが止まり、不穏な静けさが襲う。

エレノア、エダン、そして私はオーロラに注目した。何かを聞いている様な、感じ取っている様な、私はその背中から異質な、ざわめきを見た。

その数秒のざわめきの後、オーロラは私の方を振り向いた。その顔は先程の不敵な笑みはなく、異常を知らせる笑みだった。

何が起こっているかは分からないが、良くない事が起こっている。嫌な感じがする。言葉を発さずともその微笑みが語るのだった。もっと真面目な表情をすればいいと思うのだが、彼女は微笑みかけるのだった。

しかし、この笑みの微妙な差に気付くには苦労させられた。


「トーヤ君。着いてきて。私が先行するわ…」


オーロラは上り坂の先へ走り出す。

腰を屈め、熟練された戦士の如く、いつ何が起こっても対応できる様に。

私は何も言わずに彼女の後を追って走り出した。

先行する彼女の後方、死角をカバーする様に警戒しながら。

途中でエレノアとエダンを追い越す。

"教皇様をお願いね"とすれ違い様に指示を出すと、エダンは剣と盾を構えた。彼の白銀の鎧を纏う大柄な体格は、こう言う時に安心して後ろを任せられる。中央都市でも名の知れた聖騎士だ。現に何度も助けてもらっている。

私も"頼んだ"と視線を送り、上り坂の先、小高い丘の頂上へと走った。

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世界の果ての魔王 棚の影 @fugasisan

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