第28話 悪魔

「それで、あんたらはどこに向かうか決まったのかい?」

 夕食の準備をしていたエジルさんが聞いてきた。


 鍋をもって家の中に入って来た。

 その鍋の中のスープのようなものを、石でできた器に入れて配ってくれた。


 そのスープは、魚と山菜のようなものが入っている。

 味が薄くて・・正直美味しくない。


「王都に行こうと考えてる!」

「いやよ。王都になんか行かないわ」

 田中が言った言葉を、すぐさま藤島さんが否定した。


「はぁ・・王都じゃないとしたらどこへ?」

「ワタシたちの国にカエルと思ってます。西のクニに行けば帰れるソウなのでス」

「へえ・・西の国ねえ。誰に聞いたんだい?」

「タビの吟遊シジンという方でス」

「ギンユウシジン?なんだいそれは?」

「ワタシにも、よくわからないのデスが・・・」


 エルザもよくわかって言っているわけではない。

 体調がよく”吟遊詩人に聞いたと言えば何とかなる”と言っていたのだ。


「そうか・・吟遊詩人が言ったのならしょうがない」

「吟遊詩人に聞いたんだ・・それならそうなのかも・・」

 田中と吉岡は、納得している。


 ”なんで吟遊詩人で納得しちゃうのよ・・・”

 藤島は、なんで二人が納得できるのかが全く分からなかったが。



「それで・・あんたらの国ってどこなんだい?」

 聞いてきたエジルに、田中が即答した。エリザベスが止めようとしたが間に合わなかった。

「ああ・・アノ!・・」

「俺たちは異世界から来たんだ。異世界の勇者様一向ってことだぜ!」



 偉そうに田中が胸を張った。




 しかし、その言葉に対する反応は予想したものではなかった。


「キャア~~~!助けて~~~!」


 田中の言葉を聞いた瞬間に悲鳴を上げるジル。

 

 慌てて、そのジルを抱きしめたエジルが刃物をひっつかみ田中に向けた。

 そして言った。


「あんたら・・・異世界の悪魔だったのか!?

 出ていけ!今すぐ出ていけ!!」



 唖然とする、田中たち。


 ただ一人、エリザベスだけが内心思っていた。

 ”あ~~あ、言っちゃったよ・・・隠していたのに”

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