第18話 川は流れていく

「ソレでですネ。地図をモラッテ来たんですけど」

 エリザベスさんは地図を広げた。

 どこに入れていたんだろう・・・?


「どれどれ?」

 吉岡と田中がみようと近づくと。

「こっち来るんじゃない!5m離れてよ!」

 藤島さんが、即座に反応した。


 これが猫なら、シャ~~~~!!って感じ。


 うなだれて、離れていく二人。



 エリザベスさんと藤島さんが話しているのを遠くで聞くだけだ。



「多分、今はここね。いやだ、国境近くだわ。町や街道から離れてそうね」

「ここにカワがあるようです」

「なるほどね~。でも、なんかこの国って川が少なくない?」

「カワがたくさんあるのは日本ダケだと思います」

「それもそうね、ここは荒野が広がっているし。ちょっと行くと砂漠っぽいし」

「では、コノ川に向かいまショウか?」

「ええ、そうね」


 そして立ち上がって歩いていく。


 二人で。




「ちょっと待った~~~」

「待ってよ~~」

 田中と吉岡は後から慌ててついて行った。




「確かに川ね」

「りっぱなカワですね」


 眼下に広がるのは、黄色く濁った水が流れていく大きな川。

 なんとなく、臭そうな感じの色。


「この水はだめだろう・・・別のところに行こう」

 田中が川をのぞき込みながら言った。

 岸は崖のようになっていて、降りられるとこはなさそうだ。


「いや、体を洗うには十分でしょう?」

「インドのガンジスガワもこんなカンジ聞きます」


 田中は、あきれたように川面をのぞき込みながら言う。


「まさかここに飛びこめって言うんじゃないだろうね?こんな汚い水に入るのはごめんだね」


 そう言って振り返った田中。


 その顔面に激しく何かが激突し、あおむけの状態で倒れこむ。

 そこには・・・


 綺麗な上段蹴りのフォームで田中の顔面にけりを入れた藤島さん。

「いいから、とっとと入って臭いを落としてきなさいよ」


 田中は意識があるのかないのか。


 どっぱーーーん!


 大きな水しぶきを上げて、川に落ちて行った。


「田中!!!」


 慌てて水面を見る吉岡。

 田中が死んでいないか心配なのである。


 その時・・・

 田中のお尻を、衝撃が貫く。


「うっわ~~~~~!」

 大の字になって水面に落ちていく吉岡。


 そこには、田中のお尻に蹴りをしたままのフォームで足を上げているエリザベスがいた。



 どっぱ~~~~ん!

 やはり、大きなしぶきをあげて落ちて行った。


 思ったより川の流れが速かったようだ。

 田中と吉岡は下流の方へ、あっという間に流れて行った。



「た~~す~~け~~て~~~」


 叫ぶ吉岡の声は遠ざかっていき小さくなっていく。



 やがて聞こえなくなった。



 岸に残ったエリザベスと藤島。


 エリザベスは言った。

「意識ガアルのでダイジョブですね」

 にっこり笑った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る