第5話「罠かもしれないが……調べてみる価値はありそうだな。」

「……うぅっ……。こ、此処は……?」

 どれ程の時間が経ったかは分からないが、一命を取り留めた足達が目を覚まして体を起こした。

「痛た……っ!」

 足達は痛みから顔を顰め、蹲る。

 あの制服警官たちにボコスかと殴られた痕が、痛々しく全身に痣となっていた。


「目が覚めたんですね。良かった……」

 マコは安堵してホッと息を吐く。

「君が……手当てをしてくれたのか?」

「ええ。酷い怪我でしたから……」

 足達は自身の体の状態を把握しようとあちこち見回した。包帯も何もないのでマコの衣服から急ごしらえで端切れを巻きつけたので、かなり不格好にはなっていた。

「すまない。ありがとう……」

「いいえ。当然のことをしたまでですから」

 俯く足達に、マコは微笑み返した。


「……あの警官たちは誰なんでしょう……」

 脳裏に、嫌でも先程の警官たちの姿が思い浮かんでしまう。

 足達に手を上げた、獰猛な彼らは一体何だったのだろうか。

「分からん。そもそも、警察関係者であるかも怪しいところだな……。躊躇なく人を殴れる奴らなら、もしかしたら既に二、三人は警官たちを殺しているかもしれないな……」

 想像でしかないのだが、足達の言葉に妙に頷けた。

 人の命など簡単に奪ってしまいそうだ。彼らが他人から警察官の制服を奪って袖を通していたとしても、何ら不思議ではない。


「……そういえば……」

 足達が部屋の中を見回した。

 部屋にはマコと足達以外に他の同期生たちの姿はない。

「他の連中はどうした? 部屋に、いないようだが……」

 マコはドアノブのない扉を指差した。見た目にも分かるように、何故かそこが開いていた。

「足達教官に乱暴を働いた警官たちが去った後……しばらくして、あの扉の鍵が開いたのです。それで、みんな様子を見に、出て行ってしまって……」

「なるほどな」

 足達巡査長は頷いた。

「罠かもしれないが……調べてみる価値はありそうだな。我々も様子を見に行くとしよう」

 足達はゆっくりと立ち上がるが、傷口が痛むのかよろけてしまう。

「だ、大丈夫ですか……?」

「ああ、平気だ。行こう」

 マコは足達の体を支えてやった。

 こうして二人は、初めの部屋から外へと足を踏み出したのであった。

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