第2話

 俺たちは駅近くにある大手ファミレスチェーン『サイズ』の一角にいた。

 サイズは量の割に値段が安いことで有名でそれゆえにお小遣いの少ない高校生やサラリーマンには重宝されてる。

 俺の月の小遣いは3000円であり、何か外食したいときはコスパが良いのでよく来る。高校生ならば3000円以上もらっている者もいるだろうが、うちは両親共働きのため自分の飯は自分で作れと多くはないが食費は別にくれる。あとは上手くやりくりして自由に使えるお金を捻出出来るようになれとの親心だろう。


「なに食べるー?」

「そうね、ボロネーゼパスタにしようかしら」

「フルっちはー?」

「じゃあミックスグリルセットにするわ」

 なぜか浜辺が仕切りだす。

「すいませーん!!」


 近くにいた女性店員の一人を捕まえる。

「あっ、えっと……ご注文ですね」

「えーと、ボロネーゼとミックスグリルとシーフードドリア」

 注文を店員が繰り返す。その声を聞いて浜辺が店員の方を注視する。


「あの、もしかして中学一緒だったクラちゃんじゃ?」

「ん? あー、もしかしてツナちゃん?」

「そうそう! 繋希つなき! クラちゃん髪短くしたんだー。気づかなかったー」

「神下さんと同じ高校行ったんだ?」

 そう言われて神下が会釈する。

 クラちゃんとかいう人は浜辺の中学の同級生らしい。

 だとすれば浜辺は中学でツナちゃんと呼ばれていたのか。マグロかよ。


「うん、萬高。クラちゃんはどこ高? それバイト中?」

「南高。そうバイト中、そういうわけだからまた!」

「あっ、じゃあこのあとさ」

「ごめんねー、このあともちょっと……」

 そう言ってクラちゃんとやらは駆け足で厨房へ戻っていく。


「浜辺さん、今の誰だったかしら?」

「えー、ゆきなちゃんヒドい! サクラハルカちゃん、忘れたの?」

「ごめんなさい、中学生のときはね……」

 神下が口ごもる。まあ覚えてないこともあるわな。俺も中学のときのクラスメイトなんか数人くらいしかはっきり思い出せん。


「それにしても高校生でバイトか。もう時間も遅いのに頑張るな」

「うん、なんかねー。独り親らしくて家計がヤバいって中学のときに聞いた。高校に入ってバイト始めたんだと思う」

 神下が気まずそうだったので話題を逸らしてやろうと適当に発言したが予想外に重い返答が返ってきた。

 俺も少し気まずくなっていたところで別の店員によって食事が運ばれてくる。


「わぁ、美味しそう」

 浜辺が小声で感嘆の声を上げる。神下は小さくいただきますすると料理に手を付け始めた。

「ねえ、フチウチら何でも部でどにか出来なひかな?」

 浜辺がドリアをハフハフしながら喋り出す。飲み込んでから喋れって。

「彼女、サクラさんは萬高の生徒ではないんでしょ? だから助けられないわ」

「えっ?」

 意外にもいつも部活にはやる気満々の神下から助けない宣言が飛び出してきて浜辺が吃驚きっきょうの声をあげる。


「失礼、語弊ごへいが有ったわ。何でも部の活動範囲外だけど部活外で助けられるなら助けましょう。」

 神下がフォークでパスタをクルクルしながら即座に訂正する。

 なるほど、そういう意味か。部長様ルールでは萬高校の生徒までが活動の範囲となっているらしい。助けるというのだからいつものパターンだ。


「いいのか? 別に助けを求められてないのに助けて。無用な助けかもしれんぞ」

 事情が事情なだけにあまり人に触れて欲しくない場合もあるだろう。俺が疑問を口にする。神下は髪をかき上げながらパスタを一口。そして紙ナフキンで口を拭うとゆっくりと言葉を紡いだ。


「そうね。ただ助けを必要としている人が常に助けを求めるとは限らないの。もちろん古木くんの言うことも一理あるわ。だから私たちに出来るのはあくまでも提案といったとこかしら?」

「はいはーい! じゃあクラちゃんのために何かできそうなことを明日までにそれぞれ考えてくるってことで」


 気付けば2人とももう食べ終わりかけていた。

 俺は重めのセットを頼んだことをちょっと後悔しながら少しペースをあげて口に運んでいく

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