第5話

 その後、バトミントン部との面子とは今日は別れ、俺たち3人は1度部室に戻った。各々が帰る仕度をする。



「なあ神下、今回の依頼だが解決は諦めてもいいんじゃないか?」

 部長であり、最も決定権を持っていそうな神下に提案する。


「それはダメよ!  依頼は必ず解決までやり遂げる!」


 強い語気で反対された。神下は戸締りしていた手を止めて、こちらを向く。目は見開き、俺をにらむような気迫がある。

 彼女の手にはこの部室の鍵だろうか、強く握りしめられていた。

 彼女、神下ゆきなの第一印象は如何にもな大人しい文学少女だった。

 しかし、この部活のことに関してはただならぬ拘りと執念を感じる。

 以前の会話から彼女がこの部を創部したのだろうと思い立つ。


「そうだよ! ウチらの初めての依頼なんだし、最後まで頑張ろー!!」

 浜辺はポチポチとスマホを弄りながらもこちらの会話に勢いよく入ってくる。

 こっちのポニテ、浜辺繋希は今のところ元気っ娘。騒がしいとも言える。

 そのイメージはこの部室に強引に押し込まれたときから変わっていない。

 あえて言えば、普段ただの大人しい神下とこいつがつるんでいるのか、同じ部活なのかは気になる。あ、よく見ると髪が茶色がかっているな。あと割と胸あるな。


「そうね。せめて最善は尽くしましょう。ね、古木くん?」

「いやでもな、お前らもあれ見ただろ。 あの部活に今更入ろうってやつを明日までに見つけるんだぞ」

「それは分かってる。でもね、依頼を受けたからには諦めるという選択肢は無いの。最後まで頑張る。それがこの何でも部のルール!」

「確実性は無いけど、明日はビラ配りをしましょう。私は朝一に来て、ポスターを貼るわ。さっき貰ったからクラスに貼るだけでも」


 いつの間にか先ほど体育館に行ったときにポスターや勧誘のビラを貰っていたらしい。

確かにうだうだと言ってやらないよりはやる方が立派だ。最後まで努力する姿勢は素晴らしいと思う。

 ただ、それはこの部のルールというよりお前のプライドみたいなものじゃないのか? と思ったがここは努めて冷静に反論する。

 明日までにもう一人以上、入部希望者を集めてくる。それがもう難しいことを。


「もう期限は明日までしかないんだ。あと1日くらいじゃ入部希望者なんてもう集まらな……」


 いや待てよ……、なぜ気づかなかったんだ。


「フルっち、どした?」

「あー、ちょっと思いついたことがあってな。もうちょっと確実性のある解決法だ。明日にでも、いや明日だからこそできるかもしれない」

「マジ?」

「本当?」

 ああ、そういう訳で俺はそのための仕込みをするから先に帰らせてもらう。

「バイバーイ! またあしたー!」

「明日かならず来てね。どちらにしろビラとポスターはやっておくから」


 やれやれ、妙なことに巻き込まれたな。

 ん? なんかさっき変な名前で呼ばれなかったか?

 明日? 俺にここに明日も来る理由なんてあったっか?

 俺は頭に疑問符を抱きながら校門へ向かった。

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