[第3話] 魔力量が多いから幸せとは限らない。

「ラツェッタ侯爵。申し訳ありませんが、私も魔女殿とお話をさせていただいてもよろしいでしょうか。」


 私たちの話をさえぎってしまうため、魔法使いさんが、旦那様に許可を求めます。


「キルケ殿。構わないだろうか。」

「はい。構いません。」


「ありがとうございます。私は、アーマイヤー王国魔術研究所に勤めております。レンフェル・ヴィドールと申します。ラツェッタ侯爵に無理を言いまして、魔女殿の面会に同行させていただきました。以後、よろしくお願いします。」


 と、魔法使いさんが自己紹介をしてくれます。


 どうやら、侯爵家お抱えの魔法使いでなかったようです。

 アーマイヤー王国としても私に注視してるのでしょうか?それとも個人として?どちらにしても、いやな感じがします。ましてや、魔術研究をしている人です。こういった人に関わるとろくでもないことに巻き込まれます。

 偏見ではありません。歴史もそう語ってるのです。

 よくよく見れば、『知識を求めてます』『良い研究対象、逃してたまるか』という貪欲な目をしています。怖いです。


「私は、基礎魔力を題材に研究をしています。種族ごとの質や付随する効果があるのではないかと。そこで是非時間がある時で良いので私の研究に協力していただけませんか。貴重なサンプルですし。しばらくはこちらでご厄介になりますので是非。」

「はい。無理です。」

「えっ!?」


 即答します。

 断れるとは思ってなかったようで『なんで?』という驚いた表情をしています。この方、無自覚でしょうか。『サンプル』と言ってますし、自分で『厄介』と言ってます。嫌に決まってます。

 ここでの『ご厄介になる』の意味は違いますけど。それはともかく。


「私はラツェッタ侯爵家と契約中ですので他の方との契約は、お受けすることはできません。依頼をなされたいのでしたら、契約終了後か、魔女協会で他の魔女の方に依頼してください。」


 当たり前のことです。

 まあ、今回の契約が終わって、指名依頼されても断りますよ。これは、すぐにでも他の魔女に依頼しそうですね。早めに協会に危ない人がいると伝えなくては。本当にやばそうですし。


「そ、それでは、基礎魔力についてわかることを教えていただけないでしょうか。」


 動揺しながらも質問の機会を失いたくないようです。

 しかたがありませんね。ここは人生の先輩として、この世の知識の番人として、ほんの少しだけ教えて差し上げましょう。


「そうですね。長命種と言われている私たち魔女族、エルフ族、竜族と他にも種族はいますが、魔力量が多いことはご存知でしょう?。」


「寿命と老化は魔力量が関わっております。寿命は、生まれた時の魔力量。つまり基礎魔力量に比例して、決まります。」


「老化は、生まれ持つ魔力量と成長して得る魔力量を合わせた量の多さによって、若い姿を保つ、老化が遅くなります。」


「人族でもあてはまります。魔力量の多い方は老化が遅いのではないでしょうか?」


 区切り、区切り、ゆっくり と丁寧に説明します。

 噛まずに言えました。先ほどの同じてつは踏みませんよ。私は成長できる子。いえ、できる大人です。


「そうですね。言われてみれば、若く見られますね。」

 

 思い当たる人でもいるのでしょう。旦那様は、そんなレンフェルさんを見ながら、おっしゃいます。


「そなたは、もう50を超えてるのに30代にしか見えなかったが、その理由がわかるとは。」


 自分のことですか。

 レンフェルさんは、魔力量がかなり多いようです。ただ、人族のように魔力が多いと言っても、魔女族などとは雲泥の差があったりするので彼のようにせいぜい50歳が30代に見える程度にしかない。

 それでも女性にとっては羨ましいのでしょう。奥様とエマさんが魔法使いさんをずるいって顔をして彼を見ています。


「私の場合は、少し特殊です。子供の時の魔力量が平均よりもかなり多く、そして、成長による魔力量の増加も多かったため、成長しないまま現在に至ります。」


「本当に成長が遅いのです。魔女族でも他の種族の方でも、基礎魔力量が多く、子供の時に同様な増え方をしておられる方は、子供の姿のままです。」


 私は、成人してるのに成長しない子供のまま。美少女。むしろ、美幼女です。

 自分で言うのは癪ですが、事実なので仕方ありません。

 あまりにも魔力が高い子供は、魔力の自然消費量が高く、成長を促す栄養が消費した魔力に変換されることがわかっています。そのため、成長不純を起こし、子供の姿が長いということになります。これは、大人になるにかけて、徐々に解消されます。

 人生まだまだこれから。今後に期待したいのですが、私と同等の魔力量の人たちは。。。あれ、何故でしょう。周りがぼやけてきました。


「ですが、、、、当てはまらない人も。


 豊満で凄まじいあいつめ。えーほんとに、もげ、、、、


 コホン。失礼いたしました。」


 魔力量豊富でも例外はいます。

 魔女の友人とか、種族としても黒エルフの方たちや竜族の多数。ドワーフはまあ、あれは例外でしょう。最初から老け顔ですから。

 先ほどのあいつとは、私の魔女の友人で私と世代は同じ。そして、同様な増え方であり、魔力量は上。それなのに背が高く、あの豊満な胸。羨ましい。いえ、不快です。


 『いつかあの胸をもいで我々に豊穣を!!』

 これが我がちんまり同盟の悲願です。


 先ほどから、沈黙が続きます。呆気に取られてたり、哀れみだったり。

 えーと、、、。どうしましょう。。

 この空気!居た堪れません。

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