馴染みのある設定から生み出される斬新さ

一言でいえばレビュータイトルのそれに尽きる。

異世界転生、美少女とナビゲーター、実はチートスキル持ち、初戦で敗北を喫してからの這い上がり、親との問題。
どれもweb小説ではお馴染みとなった設定である。

だが、本作は何かが目新しい。そのために10話まで一気読みしてしまった。
それはおそらく、「スマホ」という現代の文明の利器の最たるものが、未来という異世界でプレイヤーのステータスを決める「ゲーム機」という、単なる一道具としての役割を担わされている、このズレによるものだろう。

確かに、現代でもスマホが持ち主のステータス…というよりプロフィールめいた役割を担わされているところは否めない。機種、カバー、色、アクセサリ……それらによってスマホは「個人の一部」として有機的な性格を持つ。
しかしこの作品においてスマホは「ゲーム機」という誰にとっても同じ、平等で画一のデバイスである。しかし、個人のステータスを決めるという点において、完全に個人から疎外された「道具」にまでは至っていない。

ここにも、スマホの性格上のズレが存在している。共通点を残しつつも、違和感を覚えさせる設定。これが目新しさの遠因だろう。
まだまだ物語には展開の余地が残されている。「スマホ」という我々の共通認識を軸に、今後物語がどう発展していくのか非常に楽しみだ。