第30話 輪廻

「僕たちの出会いって運命だったのかな?」

「えっ」

 突然、彼が呟くように言った。

「それともただの偶然だったのかな・・」

「・・・」

「そのことをずっと考えていたんだ」

「そうだったの・・」

「なんかそんなことが気になってね。考える時間だけは山ほどあるから」

「うん・・」

 窓外の遠くを見ると、山々の樹木も少しずつ紅葉が始まり、早いものは落葉が始まっていた。また寂しい季節が始まろうとしていた。私たちの辛い心に追い打ちをかけるように・・。

「ありがとう」

「えっ?」

「君に最後に会えてよかったよ・・、ありがとう」

 弱った体に力を込め、振り絞るようにして彼は言った。

「うん」

 私はそれしか言えなかった。それ以上言葉を発すると泣いてしまいそうだった。

「もう、僕が僕じゃなくなってしまう前に、最後に君に伝えておきたかったんだ」

「うん、うん」

 私は何度もうなずくことしかできなかった。

「病気は呪わしいけど、でも、君に出会えたことは奇跡だよね。そのことだけでも感謝しなきゃ」

「うん」

「君とももっと一緒にいたかったよ」

 彼は私を見つめた。

「うん」

「また会えるかな」

「えっ」

「また会いたいんだ」

「うん、きっと」

 私は彼の手を握った。

 輪廻とか生まれ変わりとか、そういうのは分からなかった。そもそも変わってしまった者同士が変わったまま出会って、そこに今の感情が無くて、そこに出会ったということが、今の延長なのかというツッコミはあった。でも、また会えるという何かに今の私はすがりたかった。

 

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