タイムリープとトレジャーハント

粋田 椿 monger171

第1話 その小学生 小笠原 輝

「はい、席につきなさい。」

朝方の教室ではそこらかしこで束になって話す小学生がいる。

私は何気なく自分の席らしい場所に座った。

一番目立つ人物の隣はわかりやすい。

小笠原輝(オガサワラヒカル)。遠目から見ても明らかな美男子だ。

それもきらびやかというよりは、やや渋い感じのさわやかなイケメンである。

この大人っぽい顔にボロボロのTシャツ、ハーフパンツはやや不自然だなと感じた。

彼が気づいて私に声をかける。

「よぉ、ポチ。遅かったじゃねえか。寝坊か?」

彼はなぜか私をポチと呼んでいる。他の女子は「キャッ!ヒカル様♪」とファン的に彼をとらえているのであるが、私と彼の関係性はなぜか飼い主と犬、ボスと舎弟みたいな感じだ。

 別に嫌でもなかったが

「こら!小笠原さん!青砥さんと呼びなさい、黒崎さんと!」

 この担任教師田山(50代女性)はやたら男女平等、人類平等、マナー第一を謳っており、苗字にさん付けでないとクラスメイトを呼んではいけないという謎ルールを作っていた。

「へぇーい。」

 小笠原君は手をひらひらさせて答えていた。

 彼は出来杉君とジャイアン兼任というか、テストを全て満点にして学年の誰もが認めるガキ大将だった。喧嘩をちらっと見たことがあるが、相手だけ何故かすっころんでいるように見えた。本人に確認したら「合気道の本を読んだらできるようになった。」と話していた。勉強すりゃなんでもできるのかあんたは。

「青砥さんも本人に呼ばれたら注意するんですよ。」

「…わかりました。」

 私はこの会話をあまりしたくなかったのですぐに教科書の準備を始めた。

 その時、ふと視線を感じた。小笠原君がこちらを見ている。

「へ?どうかした?」

「…いやぁ?どうしたもないけど。」

 私の後頭部に冷や汗が流れた。イケメンにまじまじ見られるのは威力がある。やはり眼力のなせる技なのか?

 小笠原君は頭をぼりぼりかいたあと、ノートの最後のページを少し破いて何やら書いて渡してきた。

「放課後、焼却炉裏で待つ。」

 こういうふとした字が、パソコン明朝体のようにきれいなのはさすがだなと思いながら、私は彼に向ってうなづいた。



 焼却炉とはいえあるだけで、使われていないものだった。その付近は草場が少しあるだけで誰にも使われていない空間があった。よく、鬼ごっこの時ここに隠れていた。

 小笠原君はその草場に一個しかない丸い岩に胡坐で乗っかっていた。

「…で、なんでしょうか?小笠原君。」

「お前、誰だ?」

 こちらをまっすぐに見て聞いた。

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タイムリープとトレジャーハント 粋田 椿 monger171 @gonzales55

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