15話 手がかり


ふわぁ〜…今日も講義が終わったなぁ!


《だね〜長かったなぁ…疲れたぁ〜》


…リーナはずっと寝てたじゃん。ずっと講義を聞いてたみたいな感じ出すなよ。


《だって…僕には必要ないし、タケシと一緒にいれたらそれでいいもん!》


…ははは…ありがとう…まぁ、リーナは元神様だし、この辺の知識は知ってるよな…

おっと、そろそろ本日最後のお仕事だな。今日はマリンが日直だったから、なんか全体的に優しかったよなぁ。


《あぁぁぁぁぁぁ!!タケシ!鼻の下のばしてない?!》


そんなことないって!本当のことだし…黒板の拭き方も…叩き方も…あ〜今日の夜は楽しく講義の復習ができそうだぜ!!


《むぅぅぅぅ…もう!タケシってば、僕という存在がいながら、他の子に鼻の下伸ばして!!!》


いいじゃないか!黒板消しにだって、たまにはそういう心癒される時が必要だろ!さぁ!マリンさん!よろしくお願いし…ま…す…って!なんでエミリアがこっちに向かって来てるんだ!!?


《そういえば、さっきマリンがエミリアとなんか話してたね。頼み事をしていたようだけど…》


え!?マッ…マリン!!もしかしてエミリアに日直の仕事を任せて帰っちまったのか?!うそだろぉぉぉ!!なんでだよ!!


《ふっふっふっふっ。浮気者には罰が下るのさ!!!》


くそぉ!!!やめろ!エッ…エミリア!!俺を掴むな!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!お前がぁぁぁぁぁ黒板をぉぉぉぉぉ拭くなぁぁぁぁぁぁぁ!!!


ガシッ


痛い!痛だだだだだっ!!

ブハッ!ゲホゲホッ!グガガガッ!そっ…そうだ!!魔法だ!!クリーナーぁぁぁぁ!!…あれ!?魔法っ…魔法が!ガボッ!クリーナーがっ…使えないぞ!?なっ…ゲヘゲヘッ!なんでだよぉっ!


《へへへ〜》


あっ!リーナ!!おまっ!ゴホッゴホッ!!魔法を…封じたなっ!ガハッブホッ!!


《他の女の子に鼻の下伸ばすからだ!!》


そんなぁ。殺生な!!ちくしょ〜…コホコホ…終わったか…

ハッ!!やばい…今度はぶつかり稽古がくる…エミリアのは…やばいんだ…


やばいやばいやばいやばい…!!

やぁぁぁめぇぇぇぇぇてぇぇぇぇ!!!





ブツブツブツブツ…


「さぁて、夜の講義のお時間じゃぞい…って、どうしたんじゃ?何か嫌なことでもあったかの?」


《あ…学園長センセもわかる?》


「これでも魔術に触れて60余年。魔力の流れには敏感じゃぞ!黒板消しくんの魔力がだいぶ澱んどるからのぉ…して、何があった?」


《じつは…カクカクシカジカで…》



「フォッフォッフォッ!そんな事がのぉ…黒板消しの宿命じゃな。しかし、スクリーン家は勝気がそろっておるからなぁ…まぁ、落ち込まず、鍛錬と思えばよいよい。」


ブツブツブツブツブツブツ…


《…それが実はさ、明日の日直もエミリアなんだよね…で、さっきからずっとこの調子なんだ。》


「…ムゥ…そうか…それは悩ましいのぅ。そうじゃ!ならば特別に、衝撃を抑える魔法を教えちゃろうか??」


なに?!しょっ…衝撃を抑える魔法!!?だと…


《うわぁ!そんな便利な魔法があるんだね!!》


「さよう。ショックレスと言って、衝撃や反動を抑える魔法での。工事や研究、スポーツと用途はさまざま、汎用性が高い魔法として広く使われとる。お主なら簡単に習得できると思うが…どうじゃ?」


…それはありがたいな。よし!教えてくれ!


「フォッフォッフォッ!元気が出たのぅ!ならば、魔力をこうしてじゃな…」





「よいか?わしがお主を吹き飛ばすから、壁に当たる直前に発動するのじゃぞ!」


ガッテン承知でい!!いつでも来いや!!


《タケシ〜!頑張れ〜!》


「それじゃあ行くぞい?ショックウェーブ!!」


ボゥッッッ!!


ぐわぁぁぁぁ!!けっこう衝撃が激しいな!!さすが学園長先生の魔法っ!!しかし、俺にはこれがある!!ショックレス!!とおりゃぁぁぁぁぁぁ!!!


「なんと!!」

《タケシ!?》


バンッッッッ!!!!!


あっ…あれ?なっ…なんれ…しっぱい…??目っ…目が回る…クルクルクルクル…


《タケシ!?大丈夫!?》


(…こやつ…なんとまぁ、大した奴じゃ…けっこう強めに打ったのに、初めて使った魔法でわしのショックウェーブを、あそこまで緩和するとはのぉ…)


だいじょーぶ…大丈夫られ〜目が回るよ〜クルクルクルクル…


《タケシ〜!無茶なことするからだよぉ!もぉぉ〜》


「…大丈夫か?破損しとるところはなさそうじゃが…」


《学園長センセ!強く撃ちすぎなんじゃないの?!タケシはまだ、魔法を練習中なんだから、あまり無茶なことさせないでよ!!》


「すまんすまん…悪かったのぉ。しかし、わしの見る限りでは、ショックレスは使いこなせそうじゃな。タイミングもバッチリじゃったぞぃ!!」


…そっ…そうかな…まだ目は回ってるけど、明日の対エミリアには、間に合いそうかな。


「安心せい!十二分に間に合うわ!フォッフォッフォッ!」


よっしゃ!!学園長先生のお墨付きなら、光明が見えたぜ!!なら、もう一回練習しときますか!!!


《タケシがそう言うなら安心だね!頑張ってマスターしよぉ!!!》


「…お主ら、ちょっと待て…」


ん?学園長先生、どうしたんだ?


「わしがここへ来た理由…なんか忘れとらんかの。」


…忘れ…もの?してたかな?えぇっとぉ…


「はぁ〜ど天然の黒板消しとは…事実は奇なりとは、よく言ったものじゃな。ほれ、今日の本題は調査の結果じゃろ?ロック=ミステイクに話を聞いてきたぞい。」


ロック…??

あぁっ!!そうだったそうだった!!夕方のショックで忘れてたよ!!

で、どうでした?


「結論から言うと、黒幕はまだわからんな。」


…そうですか。ロックはなんで言ってたんです?


「彼の話を要約するとこうじゃ。3日ほど前、ロックはある雑貨屋に入った時に、このカメラを見つけたそうじゃ。その雑貨屋は、見たことのない多くの魔具を陳列しておったとな。カメラについて店主に話を聞くと、最近入荷した代物で少ない魔力で念じた通りの映像を記録できると説明された。ロックは買おうか迷っていたそうじゃが、店主にこう言われたらしい…『今はお試し期間だから、無料で差し上げます。使った感想を後日聞かせてください』とな。」


…なんとも胡散臭い話だな。じゃあ、ロックはそこでこのカメラを手に入れて、昨日マリンの机に設置しようとした訳か。ちなみに、その雑貨屋ってどこにあるんだ?


「…残念ながら、今朝行ったらすでになぁ〜んもなかったのぉ…」


《何もなかったって?お店はもぬけの殻だったの?》


「いやいや、言葉の通り…そこにはなぁ〜んもなかったのじゃ。建物があった形跡もな。」


ますます怪しいな!…しっかし、そんな事がこの世界の人間にできるのかな?魔法を使えばできそうな気もしないけど…


「結論から言えば、無理じゃな。爆撃魔法などで、跡形もなく消し去ることはできるだろうが、魔力の痕跡は必ず残る…全てを残さずになかったことにする魔法など、わしは今まで見たことも聞いたこともないぞい。」


…なら、結論は早いな。


《そうだね!》

「うむ…。」


とりあえず、女神様にはその雑貨屋のことは伝えておこう。あとは神界の方で何かわかったことがあるか、聞いてみてからだな!


《そうだね!メガミン…何か掴んでるといいね!》


…多分だけど、女神様のあの怒りようなら大丈夫な気がするな…そういえば学園長…先生?あら、どうしたの?そんな顔して…


「おっ…お主…忘れてはおらんだろうな?そっ…その…わしと女神様の…事じゃ…」


あ〜そうだったね…わかった。その事もついでに伝えておくよ…(爺さんのモジモジする姿を間近で目にすると…キモいな…)


「絶対じゃぞ!!約束したんじゃからな!!!」



ライブラリの必死の叫びが、講義室でこだまするのであった。

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