第1話・Dパート(終)

[L-11・地上・エンジン音]


 荷台の上に乗る分隊長の男が奇声に気付く。


プレイヤー4「今のは?」


 トラックは傾斜を下り、家屋から離れた地上を走る。

 兵士達は荷台の振動に揺られながら積まれた箱に身体を被せている。

 荷台からは導線が延び、トラックの後方に落ちていく。


[金具がきしむ音・飛び降りる音]


 分隊長の男はトラックの荷台から飛び降り、地表に転げ落ちる。


プレイヤー4「分隊長!」


プレイヤー1「スイッチを離すな!いいな!」


[土を踏む音・遠ざかるエンジン音]


 分隊長の男は立ち上がると、家屋の裏口に向かって傾斜を駆け上がる。


[金属と紐の擦れる音]


プレイヤー2「・・・・」


[金具がきしむ音・飛び降りる音]


 女兵士は荷台から飛び降り、地上に身体を打つ。


プレイヤー4「クソッ!」


 兵士は手に握ったスイッチを見て、運転席側を向く。


プレイヤー4「このまま行け!」


 荷台の箱に被さった兵士が狙撃銃を構え、煙が上がる遠方の山に向ける。

 空に向かう煙の中で何かが上に昇っている。

 煙はそれに押しのけられるように動く。

 

プレイヤー5「おい、アレ!」


 煙から影が飛び上がり、上空で変形する。

 スイッチを握った兵士は上空の影を見ると、防弾衣肩付けの無線を入れる。



[L-11・家屋1F・階段前]


無線1「分隊長!上から何か来ます!」


 分隊長の男は肩付けの無線から兵士の声を聞くと、階段を上がる。


[階段を上がる音]


 二階に上がると窓枠の近くに倒れた兵士の死体から機関銃を拾い上げる。

 機関銃のレバーを引くと、ベランダに歩く。

 上空に向けて構え、照準器越しに煙の方を目で探る。

 肩付けの無線を入れる。


プレイヤー1「Mラインに入ったら点火しろ!いいな!」


無線1「・・・・了解」


プレイヤー1「通信おわり」


 分隊長の男は陽に照らされ、頬の傷に汗が染みる。


[甲高い奇声]



[L-10・山腹・地上]


 木の影に座る一人の兵士。

 兵士は帽子を被り、重々しい狙撃銃のレバーを引いて薬室の中を見る。

 薬室の中には太い弾丸があり、先頭の部分に黒い線が入る。


CP「えげつない弾使ってるねぇ。おまけに」


[弾の落ちる音]


 揺れる枝と葉の下から家屋と煙が見える。

 煙の上空には影が飛び、家屋の方向に落下していく。


CP「あれじゃあバケモノじゃない」


 兵士は薬室に同じ太さと長さの弾丸を入れる。

 弾丸の先端には緑の線が入っている。

 弾丸を薬室に入れると、レバーを手前に引き、離す。


[レバーが戻る音・金属音]


CP「品が無いね」



[L-11・家屋2F]


 分隊長の男は居間左側の小部屋に入り、部屋の角から機関銃を天井に向けて構える。


[階段を上がる音]


 女兵士が階段を上がり、居間に出る。

 右手には拳銃を握っている。


プレイヤー1「何故来た!」


プレイヤー2「分かりません!」


[衝撃音・家屋のきしむ音]


 衝撃で女兵士はよろけ、階段の手すりを左手で掴む。


プレイヤー1「こっちへ!」


 女兵士が分隊長の男の部屋まで走り、角から拳銃を構える。


プレイヤー1「砲弾を見ておけ。奴に弾が効くかどうか分からん」


プレイヤー2「了解」


 家屋外の地上に引かれた導線は途切れ、切れ端の両端が宙に舞う。

 導線の近くの地表は衝撃で窪んでいる。


[スパーク音]


[屋根に小石が当たる音]


プレイヤー1「来るぞ!」


[木材が潰れる音・金属の折れる音・衝撃音]


 天井が崩れ、木材片が砂埃と一緒に室内に広がる。

 変形した塊の影が床に落ち、塊からは蒸気が漂う。


[銃声・肉と骨を砕く音]


 分隊長の男は引き金を引き、小部屋から居間に出る。

 機関銃の銃床を右脇に挟み、二脚部分を左手で下から掴んで構える。

 塊は埃の中でうごめき、居間の角に這うように逃げる。


[銃声・弾帯の動く音]


プレイヤー1「貴様!」


[銃声・壁を貫く音]


プレイヤー1「逃げるな!」


[銃声・引き金を引く音]

 分隊長の男は銃床を右手で握り、角の塊に近付く。

 機関銃を両手で振り上げ、蠢く塊に振り下ろす

 塊から腕が伸び、機関銃の機関部を握る。

 腕は下半分が千切れ、筋肉が腫れ上がっている。


[金属の曲がる音]


 機関部が握り潰され、分隊長の男が機関銃を手放す。

 装着帯からナイフを抜くと、塊の腕を掴んで腫れ上がった筋肉に突き刺す。


[起動音]


 塊から足が突き出し、分隊長の男を蹴り飛ばす。

 女兵士が小部屋の角から拳銃を向け、塊に向けて引き金を引く。


[銃声・肉に当たる音]


 塊は埃が床に落ちて赤焼けの人間が姿を現す。

 足と腕は前面と背面が離れ、それぞれの骨が縦に繋がっている。

 肋骨は体外に向かって皮膚を突き破り、一本が折れている。

 肋骨の内側には小型の機械が植え付けられ、機械と機械が導線で繋がっている。

 うなじには筒状の機械が取り付けられ、一部が発光している。

 頭部は変形し、口より上の部分は頭骨で覆われている。


[甲高い奇声]


 居間に出た女兵士は引き金を引き、赤焼けの人間の体内の機械が弾ける。

 変形した頭部から舌のようなものが伸び、口から血が吐き出される。

 舌は女兵士に向かい、拳銃に巻き付く。

 舌は拳銃を強く引っ張り、女兵士から拳銃を取り上げると、ナイフを抜いた女兵士のこめかみに拳銃の底部を叩きつける。


[倒れる音]


 女兵士が倒れると赤焼けの人間は女兵士に近づき、指を揃えて、女兵士の頭部を狙う。


[突き刺さる音]


 分隊長の男が自身の左肩を赤焼けの人間の手首にぶつけ、突き刺させる。

 そのまま腕を掴んで床を蹴り、肋骨を掴む。

 肋骨内側の導線を指で引っ掛け、手前に引っ張る。

 分隊長の男は苦悶の表情を浮かべながら導線を力強く引っ張る。


[引き剥がす音・うめき声]


 分隊長の男は引き剥がした導線と機械を後方のベランダに投げ飛ばす。

 赤焼けの人間が右腕で分隊長の男を掴み、首に指の爪が食い込む。

 人間の筋肉が腫れ上がり、首に食い込んだ爪が皮膚を突き刺す。


[筋肉が千切れる音・銃声]


 赤焼けの人間の右腕が吹き飛び、分隊長の男は床に倒れる。 

 赤焼けの人間は左腕で肋骨を一本折り、ベランダの外に投げ飛ばす。


[遠くで地表に衝突する音]


 分隊長の男は床を這い、砲弾の後部を手で押す。

 階下に半分せりでた砲弾は手で押されながら、床を前進する。

 赤焼けの人間は左腕で分隊長の男の頭を押さえつけ、舌を伸ばして砲弾に巻き付ける。


[舌が吹き飛ぶ音・銃声]


 舌が撃ち抜かれ、千切れる。

 砲弾は階下に落ち、砲弾の先端部分が一階の床に激突する。


[家屋が吹き飛ぶ音・複数の爆発音]


 爆発の衝撃で家屋周辺の木々がなぎ倒される。

 家屋からは火柱が高く立ち、家屋の破片が空高く舞い上がる。

 衝撃の波が地表を伝い、南下するトラックを揺らす。

 荷台の上でスイッチを握った兵士が火柱の方を見る。

 兵士の髪が風で揺れている。


プレイヤー4「・・・・ハァ」


 兵士は荷台の箱にもたれ、スイッチを手から離す。



[L-10・山腹・地上]


 重々しい狙撃銃を構え、火柱と爆炎を見る兵士は眼鏡から目を離す。

 兵士の帽子が風に当たり、上方の枝と葉が衝撃波で激しく揺れる。


[衝撃波が遠ざかる音]


 兵士は静けさを取り戻した地表で立ち上がり、重々しい狙撃銃を地面に置く。

 兵士は木の近くまで歩き、木によりかかる。

 木の表面に背を預け、足の力を抜く。

 そのまま身体を落とし、根元に座る。


[風の音]


 枝と葉が揺れ、煙の間から空が見える。


CP「いやぁ、キツイねぇ」


[無線の入る音]


「CP、こちら本部。両陣営で交戦開始。状況を」


CP「本部、こちらCP。全目標の無力化を確認。砲弾は処理された」


「本部了解。チームと合流し通常警戒に戻れ」


CP「CP了解。通信終了」


 兵士は無線を切ると、別の無線を入れる。


[呼び出し音]


無線の声1「CP、こちらマルヒト。1A1を確保した。現在本部に転送済み」


CP「CP了解。合流地点はK-10。通信おわり」


無線の声2「CP、こちらマルフタ。谷岡さん、次のIDを」


 兵士は煙の隙間から見える青空を眺め、無線横付けのボタンを押す。

 木々の間から通う風が、兵士に優しく当たる。


CP「CP了解。次のIDは・・・・」


谷岡「blackcatブラックキャット2234」

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