第10話

「篠塚さん」


 俺は隣の席の女の子、篠塚れもんさんに声を掛けた。


「どう……したの……?」


 篠塚さんは俺を見て、少し戸惑ったような顔をした。普段はこんな風に俺から話しかけることはあまり無いように感じた。それはその戸惑いなのか、それとも。


「これを見て」


 俺はスラックスのポケットからスマホを取り出し、篠塚さんに笹窯ボコの配信のアーカイブを見せた。


 最初から総当たりでこうすればよかったのではないかとも思った。だが確信が持てない段階では警戒されて誤魔化されるだけだろうし、通信量も馬鹿にならないだろうしで、こうして最後の最後に確認のつもりでやるのがベストだろうという結論に至った。


 俺は、言葉を続ける。


「このVTuber……笹窯ボコって、篠塚さん?」


 篠塚さんは俺の質問には答えなかった。でも、その代わりに。

 

「え、ちょ、ちょっと、篠塚さん!?」


 俺の手を強く引き、脇目もふらず俺を教室から連れ出した。

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