第8話

君のいない朝



「ちょっと、夏儺、大丈夫か⁉︎」


「んー?何が?」


「何がっておま、

今日花影が居ないことくらい分かってるだろう!」



朝登校すると、同じクラスの柊が叫んだ。



「んー、むーがいなくて、

ちょっとだけさびしいかな」


「その夢眠だよ!朝テレビでやってた」



そう言って彼は携帯を見せてくれた。


見ると、家のテレビをみていたときに撮ったらしい。


いつも朝やってるバラエティっぽいニュース番組だな。



『午前5時ごろ、朔谷区ヒカリビルで

我々の記者が通りすがりに人が倒れているのを発見し、通報しました。


男性は頭から血を流して倒れており、

病院に搬送されましたが出血多量のショックで意識不明の重体です。


鞄の中身を警察が確認すると学生証があり、県内の市立高校の18歳の生徒だそうです。


発見されたこのビルの屋上から飛び降りたのではないかと思われます。


我々スタッフ一同、ご回復をお祈りします』



夢眠が?


飛び降り?


なんで?


しかもヒカリビルって

保育所の頃よく遊んでた場所で?



「夏儺、病院いけよ。

お前が行ったら花影、起きるかも知れない」



なんで、なんで自殺なんて。


1ヶ月前の修学旅行で思い出作ったばっかなのに。



「新垣。

一つ謝らなければならないことがある。

落ち着いて聞いてくれ」



こんなの落ち着けないよ、日向班長。



「実は花影に自殺願望があるのは知っていた。

というより、修学旅行中にそう言う雰囲気があったから聞いてみたんだ」



それは、僕も薄ら夢眠自身が言っていたから知ってた。



「花影はそれを否定せずにこう言った。

『夏儺のことは本当に好き』だってな。


だが、その後独り言だったかも知れないが、こう呟いていた。



『もっと深く繋がっていたかった。


もっと抱きしめていたかった。


もっと夏儺に触れたかった。


でも、もう苦しい。


体が、心が限界。』



ってな。


それを聞いた後、

少し分からなかったが、考えてみると

あいつ、花影はもしかしたらこうやって自殺をしなくてもそう長くはなかったかも知れない。


精神的のみだったなら、

心でのみ言うのではないか?

と考えてしまった。


すまん、話が長くて。


だが新垣、早く花影のもとへ行ってやれ。


そして、お前があいつに思っていること


思いっきり全ていってやれ」



「…ありがとう、話してくれて。

じゃあ、行ってくるよ。



大好きを伝えに」




廊下を走っていると、

職員室の方向から朝日奈先生が走ってくる。



「新垣!ついてこい!」



言われるがまま先生についていくと、

車に乗せてもらった。



「新垣、夢眠と付き合ってくれてるんだよな」


「! はい」


「夢眠、新垣のこと、すげぇ好きみたいだぞ。あいつの顔に書いてあった」



ははっ、と夢眠の顔を思い出したのか、

小さく笑った。



「実はな、俺も夢眠が自殺を考えてるの、

あいつを担任した時から知っていたんだ。


親が親だったみたいでさ、ずっと苦しんでた。

それを見てたから自殺を止められなくて。

ごめんな」



多分先生は僕に謝ってくれたんだも思うけど、夢眠に言っているようにも聞こえた。



夢眠。


僕もごめん。


そう言うこと、知ってたのに、

自殺のこと触れなかった。




今すぐに死んじゃいそうで。




「それともう一つ。

あいつ、ここのど真ん中に癌があるのとここが悪いんだ」



先生は左手の人差し指と中指で頭と、

次に心臓をトントンと叩いた。



今まで何も、そんなそぶり見せなかったのに。


でも確かに、修学旅行の時すごい体調悪くて病院に運ばれたな。



「心臓は、生まれた時から悪かったようだが、

頭の方は俺がこっち来てから知った。


って言うか高校入ったすぐに出来たらしい。


本当は医者に入院しろと言われてたみたいだが、

金が無いのと、すぐに居なくなるからそっちに金をかけるんじゃなくて最後に修学旅行行って思い出作るって言ってた。


多分、お前と一緒にいるのを最後にしようとしたんじゃないか?



その後に自殺しようと」



…夢眠のやつ、

後で起きたら一発(軽く)殴ってやる!



「先生、車ブーストして!」



「おし、ぶっ飛ばすぞ!」

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