第12話 いつもの日常

 そんな飲み会が終わって帰宅して、普通に怠惰に過ごした日曜日を挟んで月曜日。また今週も、いつも通りの出勤です。

 満員電車の中はいつも通りで、汗や香水の混ざった匂いとかイヤホンから漏れるシャカシャカした音とか体重のある人間の圧力とか、色々なストレスを感じながら、やっとの思いで会社最寄りの駅に到着です。

 そこからは普通に歩いて5分ほどで職場なのですが、先程まで満員電車の中で受けていたストレスを振り払うように、大股・足早に歩道を歩いて行きます。髪をなびかせる風が、少し心地よい季節です。


 そして会社に到着。事務所の鍵はすでに開いてあり、中で作業をしている気配がします。ドアノブを回してドアを開けると、いつもの遠藤さんと男性の営業さんが、朝の掃除の真っ最中でした。モップで床を磨いている男性営業さんと、各個人の机を拭いている遠藤さん、ちょっと談笑しながらの掃除です。

「おはようございます」

 私が二人に声をかけると、二人とも「おはようございます」と返答をしてくれ、気持ちが切り替わる感覚を覚えます。

「掃除の方はだいたい終わってるから、松本さんは電気ポットに水を入れておいて」

「はい」

 この会社は小さいので、休憩の時のお茶くみは各自で行う事になっています。なので、その下準備だけはやっておく必要があるのです。寸胴型の電気ポットのフタを開けて外し、水道の所に持っていって蛇口をひねります。「ザザーッ」と水道水が注がれて満水のラインの所まで水面がきたら、ササッと蛇口をひねって水を止め、そのままお茶スペースのテーブルの上に置き、フタを閉めて電源コードを繋げます。後は沸騰のボタンを押して、沸くまで待つだけ。残りの時間は、紅茶のティーバッグやスティックのインスタントコーヒーの在庫を数えて、足りなくなってきたら買い足す、というもの。

「よし。終わりました」

「じゃあ、仕事を始めようか」

 そんなこんなで、始業です。





 今日の仕事は、ちょっと滞っていました。

 先方に見積書を作って提出するのですが、その肝心の見積書がまだ出来上がっていないようでした。

「まだ時間がかかりそうですか?」

「いや、あとちょっとで終わるよ。先方にはもうちょっと待ってもらってて」

 そういう連絡をするのは、私の仕事なんですよね。ちょっと憂鬱ではありますが、先方に電話をして、待って頂くようにお願いをしてみますか。


 そこから数分後。

「よし。見積書をメール添付して……。松本さん、見積書を送ったから、先方に確認してもらって」

「はーい」

 そこから電話で先方にメールを確認してもらって、ちょっとのやり取りをした後、とりあえずOKをもらう事ができました。

「もう少し早く出してくれれば、こんなにギリギリにならずに済んだんですよ」

「いやぁ、ごめんごめん。次は注意するよ」

 営業さんとのやり取りで午前の仕事が終わってしまい、そろそろお昼休憩の時間になってしまいました。遠藤さんも待ち遠しいと感じているでしょう。私に小声で話しかけてきました。

「今日も行くんでしょ? コーヒースタンド」

「もちろんですよ」

 私の返答にノーはありませんでした。という事で、心のオアシス『ピーベリー』に行く用意をし始めました。今日はどんなコーヒーが待っているのでしょう。楽しみです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る