第18話 不躾な男

『その様子では、私の仕事のこともご存知ね?』


なんでもないことのように言うが、そんなことを聞かれても上手い答えは思いつかない。


『さあ。マダムのことはマダムにしか分かりませんよ。それに私たちは下っ端ですから。』

柄本がいち早く反応した。

やはり、女遊びに長けたやつは違うのだ。


しかし、そこで気づいた。

私は一言も彼女と言葉を交わしていない。


それが小っ恥ずかしく、悔しく感じた。


『私はあなたに教えていただきたいことがあって伺いました。』


一息に言ってしまってから気付いた。

なんと不躾であることか。

柄本とはえらい違い。

それにまた悔しさが増す。


彼女の顔を見ると、少しだけ面食らっていた。

本当は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたいだろうに、

彼女は我慢してくれていた。


『あら、ようやく喋ってくれたわ。』

また、鈴の音のような声が響く。


「おい。」

よほど驚いたのか柄本が日本語で諫めてきた。

しかし、彼女はそれを気にも留めなかった。


『いいわ。教えてあげましょう。私が話せることならね。』

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