第12話 使用人の少女

扉の影から姿を現したのは、やはり年端もいかない少女だった。

浅黒い肌と、緩やかな波を描いた黒髪。黒い瞳は溢れ出さんばかりに大きい。

明らかに、この国の出自ではない。どこか、もっと南寄りの出身だろう。

『どうぞ中へ。』

促されて進む廊下も華やかに飾られていた。

小花柄の壁紙。鮮やかな色彩で描かれた数々の絵画。青い花が絵付けられた花瓶には淡い青紫色のユリが生けられている。天井のシャンデリアに照らされ、廊下は暖かい灯りに満ちていた。


『こちらでおまちください。』

通された応接間も優美な空気が漂っていた。

家具の一つ一つが上等のものであるとわかる。

無骨な男二人は、可憐な部屋の中で肩身が狭かった。


『どうぞ。』

少女が運んできたのは、女主人ではなくポットとカップだった。

一つを柄本の前に、一つを私の前に置く。

『ありがとう。』

柄本が軟派な笑みを浮かべると、

少女はその肌の色の上からでもはっきりとわかるほど真っ赤になった。

『もうしばらくお待ちください。』

そう言い捨てて、出て行ってしまう。

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