第7話 悪友

「それで、その写真の女を探せって?」

疑わしげに言うのは柄本亮介という男。

大学時代の友人というべきか。それとも同輩というべきか。

周りの喧騒などお構いなしに身を乗り出してくる。


「ああ。」

「記事を書くのか。羨ましいもんだなあ。俺なんかまだ雑用だぞ。」

そう口を尖らせて、酒のグラスをあおる。

「桐島英二郎記者ってわけか。大した出世だ。」

「まだ決まったわけじゃない。上手くいけば、の話だ。」

私はそう言いつつも確かに優越感を感じていた。


「お前は豊田さんに気に入られてるからなあ。」

また柄本は酒をあおった。すると、中国酒特有の甘い香りが鼻に抜ける。

「おいおい、そんなに顔を顰めるな。お前ももう三年もこっちにいるんだぞ。地元の酒くらい嗜め。」

柄本は新しいグラスと黄酒の瓶を寄越す。

「いや、いい。」

「飲めったら。」

「いらん。」

「ったく。なんでそんなに頑なかねえ。」

柄本が、呆れたように首をすくめる。

「甘すぎるんだ。香りからしてダメだ。」

「ああ、そうかい。お前はそう言っていっつもウィスキーだ。」


たまには他のモンでも味見してみろ。


「コンニチハ。エモトサン。」

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