間章

ヒーローと指名手配犯の意外な共通点


「次の任務は連続殺人犯の捕獲だな。……と言っても、学校も始まったばかりなんだ。無理は禁物だぞ」

「はい。ありがとうございます、隊長」


 柊羽さんの気遣いが身に染みる。

 10年前の俺はこんなにも優しい柊羽さんに酷い言葉を投げ掛けたのだと思うと、なんだかやりきれない気分だ。


「……そういえば、とある報告がある。もしかしたら龍真は思い出したくないかもしれない。……どうだ、聞くか?」


 “思い出したくない”、と言うと……10年前のあの事か?


「……聞かせてください」

「そうか。……実は、だな。特級指名手配犯である『アビス』なんだが、お前と同じの被害者かもしれない」─────











 ─────「えっ? 蒼炎サンってボク達となの?」

「どうやらそうみたいだな。調べたところによると、諜報予備科だったらしい」


 諜報予備科っていうと、あの?


「伝説の諜報予備科?」

「そうだ。その科であってる」


 かつてボクらの間で話題になっていた、伝説の科。


「あの、ボク達の教育と比べてぬるすぎるのがありえなくて伝説になった諜報予備科に、蒼炎サンがいた訳?」

「まあ、そうだな」


 諜報予備科……アゲハがいた諜報科とは違いあくまでも“予備”として育てられているところで、諜報科などの他の科に比べると厳しさには雲泥の差があった。

 《青霧》が突入してきた時、裏世界に出る決心をした他の科の子供が九割を超えるのに対し、諜報予備科の奴らは漏れなく全員が《青霧》に保護されて行った。

 つまり、結局は絶望の“ぜ”の字も、覚悟の“か”の字も知らないような奴らが集まるような場所が諜報予備科なのだ。


「なぁんだ。蒼炎サンって意外としょうもない存在なんだねぇ」


 ま、興味は失せてないんだけどさ。

 となると、あの深刻そうな顔ってもしかして諜報予備科だった時を思い出してたってこと?


「ねえ、アキちゃん」

「言いたいことはなんとなく分かるが……なんだ?」

「ふふっ。蒼炎サンは、随分と幸せ者なんだねぇ?」

「ああ、そうだな」

「えぇー? アキちゃん反応薄すぎー!!」

「いや、俺ここで“そうだな!”なんて元気よく言うタイプじゃないだろ……」

「ふふふ。確かにそうだね。それはボク……いや、ボク達が一番よく分かってるね」







 アキちゃんとアゲハ、そしてボク。


 三人は死が別つまで、決して切れない“繋がり”だ。









 何故なら、ボク達三人は10年前のあの日から褪せることの無い歪んだ友情で結ばれているのだから。


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