第12話

 昼の時間、今日は客の入りが今ひとつ。おすすめをワニ肉のステーキにしたのが良くなかったのでしょうか。それとも店内BGMを「わに○ゆめ」にしたのが良くなかったでしょうか。

 夜はお酒が入りますのでワニの手などにも注文が出ることでしょう。



チリン・・・

「いらっしゃいませ。」

「大将、どうじゃね?」

「これは和尚。今日はいまいちですねぇ。」

「そりゃいかんの。菊水の吟醸を貰おうかの」


 氷を淹れたガラスの徳利に菊水を入れる。つまみのたこワサビを合わせて出す。和尚が盃に口を付けたそのとき、激しくドアが開けられ雀さんが闖入する。おや熱湯さんも同伴のようですね。


「おう!だんな!今日はキリンクラシックで!」

「こっちは黒ラベルを貰おう!」


 和尚と雀さんと熱湯さんで乾杯し、賑やかになる。ふと雀さんがメニューを見遣る。

「お、今日はワニなんか出してたのか!」

「ええ、昼は余り注文が出ませんで・・・。」

「まあ昼からゲテモノを頼む物好きはそうおらんわな。」

「雀どん、頼んでみるか?」

「熱湯さん、そりゃえらばんでどうするよ。和尚もええか?」

「よいぞ。」


 ワニの手を網に置きグリルしていく。その間にワニ肉の唐揚げを提供する。

「案外、鶏肉みたいやね。」

「は虫類じゃからのう。」


 なかなか話題性には富む様だ。やいのやいのやりながら酒量も伸びていく。ほどよくワニの手も焼けたので提供する。

「皮付きというのがなんとも・・・」


 熱湯さんが興味深く観察する。

「ふむ・・・そうじゃの・・・」

「和尚どうかしたか?」

「いやなに、ワニではいい駄洒落が思いつかなんでな。」

「和尚といえど駄洒落が思いつかないこともあるのですな。」


 これからものんびりと居酒屋家業ができればと思い、ワニを肴に皆と愉しむ。このような時間はきっと永く続くことでしょう。


 さて、文章を書くと言うことに慣れるために始めた本作はここでおしまいとなります。駄文拙文にお付き合いいただきありがとうございました。

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喫茶居酒屋「雑談」 海胆の人 @wichita

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