第2話

「……マジで?」


 奈白の告白に千夏が驚いたように目を見開く。

 今日になって散々クズ発言した優人に好きと言ったのことに驚いたのだろう。

 欲求を満たすために仲良くしたと言われたら普通はクズだと思うのだから。

 恋愛は惚れた方が負け、というのは本当のようで、後からクズ発言しても平気らしい。

 もちろん限度はあるだろうが。


「うん。確かにお兄さんのことを良く知らないであんな告白されたらクズだと私も思うけど」

「俺も自分で言いながらクズだと思った」


 でも、自分の欲求を満たすための身体目的だと言った方がいいと思ったし、実際にその通りだ。


「なら普通に告白すればいいのに……」


 的確なツッコミを千夏に言われてぐうの音も出ない。

 だけど自分の欲求を素直に言うのが告白であり、後から身体目的と思われるよりよっぽどいいだろう。


「全然手を出す素振りがなかったので、私はお兄さんに性欲がないかと思ってました」

「それは私も思ってた。奈白とデートに行っても何もしないって絶対おかしいし」

「失礼な。今まで性欲を押し殺していただけで、俺は奈白と色々したい」


 千夏の反応からして、奈白から色々聞いていたようだ。

 手を出さなかったのはあくまで仲良くなるためであって、これから色々としていきたいと思っている。

 好きって言われたのだし、もう自分の欲求を出しても問題ないだろう。


「お互いの気持ちが分かったとこで、まずは膝枕」

「うわー。あんだけ堂々と身体目的宣言したのに膝枕って……」


 何故か千夏にドン引きされた。

 散々身体目的クズ発言をしたのに、言ったことが膝枕でヘタレだと思ったのかもしれない。

 妹の前で初体験を済ます兄などいないだろう。


「何を言っている? 膝枕は男のロマン。まずは膝枕と相場が決まっている」


 膝枕はただの優人の願望であり、告白したら膝枕で癒されたいと思っていた。

 今まで性欲を抑え込んでいた影響でストレスが溜まっているため、始めに男のロマンである膝枕でストレスを発散したい。


「ところで何で今日告白したんですか?」

「俺の欲求が我慢出来なくなったから」


 本当はもう少し惚れられているという確信があってから告白したかったが、もう我慢の限界だった。

 男に産まれた以上か可愛い女の子とイチャイチャエロエロしたい、これが本能であり欲求だ。

 一部ホモという例外がいるにしても、大体の男が思っていることだろう。


「以前誰とも付き合う気がないと言っていたのは俺に対する照れ隠しかな?」


 ツンツン、と奈白の頬を指で軽くつついて尋ねる。


「はい。お兄さんを好きになってから、付き合いたいとは思っていました」


 答えた奈白は、カアァァ、と擬音が出そうなくらいの勢いで髪の隙間から見える耳まで一瞬にして赤く染まった。

 照れ隠しで付き合う気がないとバレて恥ずかしくなったのだろう。


「じゃあ膝枕よろしくね」

「はい」


 了承を得たので、優人は奈白の太ももに頭を乗せる。

 膝枕は初めてしてもらったが、想像以上に心地いい。

 細いながらに柔らかく、今後は普通の枕じゃなくて奈白の太ももを枕にして寝たいと思ったほどだ。

 ただ、極上の癒しではあるかもしれないが、ただ一つ……ただの一つだけ膝枕には欠点がある。


「この体勢では奈白の目が見えない」

「そりゃうつ伏せになってたら見えないでしょ」

「うつ伏せだと奈白の匂いが凄いよ」


 すうぅぅぅ、と息を吸うと、奈白の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

 だけど息で太ももがくすぐったくなったのか、「ひゃあ……」と奈白が可愛らしい声を出す。


「奈白、少し顔を前に出して俺を見て」

「はい」


 くるりと回って仰向けになり、優人は奈白に顔を出してもわう。

 大きな胸が邪魔して良く見えないので、膝枕堪能中に奈白の顔を見るには少し前屈みになってもらわないといけない。

 初めての膝枕だからか奈白の頬は赤く、どうやら恥ずかしいようだ。


「奈白の瞳って本当に綺麗……」


 アメジスト色の瞳は綺麗で、見ていて吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚える。

 茶色い瞳が多い日本人ではあり得ないだろう。

 クォーターで外国の血が混ざっている奈白だから見惚れてしまうのだ。

 外国の血が混ざっていても桃色の髪とアメジスト色の瞳は珍しいらしいのだが。


「お兄さんって身体目的宣言したのにちゃんと目を見ますね。本当に私の身体目当てですか?」

「当たり前だ。この後部屋に連れ込んでハッスルするつもりだ」


 きちんと初めてが欲しい、と宣言したのだし、しないわけがない。

 ハッキリと宣言されたからか奈白の顔は真っ赤になっているが、逃げようとしないからしても問題ないだろう。


「私の部屋は隣なんだからあまりしすぎないでね」


 相変わらず千夏はこちらに白い目を向けている。

 この家はそこそこの防音ではあるのだが、あまり大きい声だと聞こえてしまう。


「奈白って声大きいの?」

「け、経験がないから知りませんよ」

「そうか。奈白をヤンデレにさせるために、これから色々しないとな」


 膝枕を止めて上半身だけ起こし、優人は奈白に自分の顔を近づけていく。

 何をするかわかったようで、奈白は期待するかのように瞼を閉じる。


「んん……」


 お互いの唇を触れ合うキスをした。

 奈白の唇は柔らかくて熱く、甘い味がして、もっと味わうために優人は甘噛みしたりする。


「んん……あん」


 唇が敏感らしく、奈白は色っぽくて甘い声を出す。

 頭を優しく撫でながらゆっくりと濃厚なキスをしていく。


「……何で私は兄と親友のファーストキスを見せられないいけないの?」


 白い目でこちら見ている千夏を横目に、優人はこれから奈白に色々し、彼女をヤンデレへと変えていく決意をした。

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欲求を満たすために学校一の美少女をヤンデレにして何が悪い しゆの @shiyuno

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